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デザインの授業のために工夫したこと

最近自身の母校でもある東京造形大学で授業を始めました。

工業デザイン(プロダクトデザイン)の学科で教える内容は「インタラクションデザイン」。

インタラクションデザインとは、人ともの、人と環境や情報機器の間のやりとりをデザインする領域です。わたしは「作法のデザイン」と名付けて呼んでたりします(インタラクションデザインについて詳しくはここに書いた)。

せっかくの機会なので、ちょいちょい授業のことを書いてみようかと思っています(不定期)。授業内容とかもあげていこうかと。

今回は授業を始める前に考えたことや運営上の工夫について書いてみます。学校で先生やってる人とか、会社でレクチャー仕事ある人とかに役立つ何かがあったりなかったりするかもです。書き始めたらずいぶん長くなっちゃった。

なぜ始めたか

お話を頂いた時、私自身がこれからのデザインについて考え悩んでいたこともあり、人に教えるために自らの考えを整理し、成長できるいい機会かもと考えたからです。
とはいえ、正直本業があるので暇なわけじゃないし、毎日時間をどう捻出するかに気を使っている状況。片道一時間かかる大学に費やす時間と自身のリソースを天秤にかけて、ちょっと悩んだ末決めた感じです。半期なら頑張れるかな。若い人の視点も知っておきたいし。

トップ写真は去年の10月に講演をしたときの写真(このときは講演ゲスト)。この日なんとなくの大学の空気感を掴んで、その肌感をもとにいろいろ準備を考えていった感じです。

最初に考えて決めたこと

学生にちゃんと連続で教えるのは5年ぶりとかなので、前回教えてた時期の反省や新しいアイデアも踏まえて、まずは自身がどういう風に取り組むべきかをいろいろ決めようと考えました。

まずは現状の聞き取りと課題点把握から

いろいろ決めていく前に、そもそも現状の造形大のプロダクトデザイン学科ってどんな感じなのか知る必要があったので、
中林鉄太郎教授造形の先生としても卒業生としても先輩の田子さん(造形ではデザインマネジメントを教えられてる)、そして学生に話を聞かせてもらい、インタラクションデザインの授業をやる環境としての前提を整理しました。まず見えた事実は以下3つ。

1. 学生はコードが書けない
2. 学生全員がデザイナーになりたいわけじゃない
3. ビジネス経験がない

ID(工業デザイン)科の学生なので、まぁ当たり前っちゃあ当たり前なんですが、コードが書けないという現実があります。現代のインタラクションデザインやプロダクトデザインはコードやインターネットと切り離して考えることは出来ません。この前提の上でインタラクションデザインを理解してもらうという「ゲームとしての制約」を確認しました。
その上で予想される状況として、

1. 午後は眠い
2. 昼食べずにお腹が減っている人も結構いる
3. 難しいと飽きるし覚えられない

というのも予想し、これらが妨げにならずに成り立つものを考えようと決めました。

授業がしんどくならないよう運営上決めたこと

授業は後期のみですが全14回もあります。これは私自身が結構しんどいのでいかに自身の稼動を効率化するかも考えました。決めたのは以下。

1. スライド頑張らない
2. IT活用・ルーティン化する
3. 基本、宿題を出さない

自身に負担がかかると教える内容そのものの質も下がるでしょうし、学生も授業内の時間に集中して学ぶやり方のほうが走り切れるだろうなと考えました。宿題が大変で授業嫌になっちゃったら本末転倒だし。

実際やったこといろいろ

以上の状況を考え、いろいろなやり方を盛り込みつつ授業を開始しました。

まず授業が始まる前に授業スライドのテンプレを作っておきました。フォーマットはkeynote。最小労力でそれなりのものになって、移動中でもiPhoneやiPadで編集ができるためです。iPhoneやiPadあればプレゼンもできるし(Macは持ち運ぶの重いと思ってる人です)。写真と注釈、大きな一言表示、矢印と写真の図、2x2のマトリクス図など、授業で必要とされるスライドの雛形は最初にガッと作り(本業で使うテンプレ流用したりして)、全14回はこのテンプレをコピペで使い回せるようにしました。テンプレがあるので、60枚のスライドとかもiPadでサクサク作れたりします。内容さえきまっていれば30分もあれば講義用の基本はできてしまいます。スキマ時間のスマホ編集の積み重ねで講義資料を作れるような仕組みづくりを心がけました。

スライドにはとにかく動画を多用する事で、眠い午後の授業でも飽きずに楽しめるように。参考製品や作品の高品質な動画は山ほどyoutubeに存在します。引用フル活用です。動画はもともとがちゃんと情報が編集されてるので、資料作りも解説も楽だし、見てる方も飽きにくい。

コミュニケーションはslack、課題提出はtwitterにしました。slackなら本業の連絡を取りながらも、学生の質問にも答えやすい。twitterでハッシュタグ作って課題提出にすれば、提出確認もれもないし、学外の人からのリアクションも感じられて一石二鳥。学生のうちから自分のアイデアや視点が世の中からどういうリアクションがあるのかを知るのはすごく大事だと思っています。ちなみにここで誰でも見れます(ハッシュタグは東京造形大IxD_B)。

noteで書くと今更感あるくらいslackはITスタートアップ界隈で知らない人はいないですが、造形大では知っている学生が予想以上に少なく、今回初めて使う学生も多いので、まだこなれてない感じではあります。

毎回授業に使ったスライドはslackにあげて、学生がダウンロード可能にしています。課題に使うテンプレなんかも全部slackで共有しています。

成績評価はgoogleスプレッドシートでシート作って、評価関数組んで、出席チェックと課題の評価を3段階(イケてる、まぁまぁ、イケてないor提出遅れ)をスマホでポチポチ入れるだけで勝手に評価が出るようにしました。これもスマホで隙間時間でポチポチやるだけでできるようにしています。学生に感情移入して成績評価に悩む心配もなし!出席とるのもそのうち自動化したい。

出席が40%と課題提出が30%、課題のクオリティが30%で成績評価するねというのも最初の回に学生に公開してるので、このシートもみんなに公開していいと思ってるんだけどどう?って聞いたところみんな返答に困った感じになってたので、まだシートは学生に公開はしてません。単位落としそうとか、まだイケるとか観測出来るから学生にとってもいいと思うんだけど。

先述したとおり宿題も授業が時間的に押しちゃってしょうがなくなった時以外は出してません。一回出したらみんな大変そうだったので。バイトとかあるし。講師が近くにいる時間にサクッと本質的なエッセンスを学習することをコアにするほうが学生の状況だと効率的にも良さそうだと判断し、出さないことにしました。授業で得た知見を授業外の時間でどう研鑽に使うかは各学生の動機や自主性、モチベーションに委ねています。みんなそれなりの年齢だしそれぞれの人生の都合があります。

おやつを用意する

学生は常にお腹を空かせているのとお菓子があると楽しく議論も盛り上がるので、お菓子を毎回買っていくようにしました。飴なめてるくらいでうだうだ言われるような場所じゃないようにしたい。(そういえばコイニー社初期も自腹で毎週ミーティングにプロダクトチーム全員分のお菓子買っていってました。コーヒーも用意したり。お菓子あるとみんな楽しくなり、意外とこれだけで前向きな議論ができる空気になったりします)

おもちゃを用意する

体験に勝る学びはないので、インタラクションデザインの参考になるようなガジェットをなるべく持っていって体験してもらうようにしました。やっぱりみんな新しいもの好きなので。littlebitsとかROLI BLOCKSとかイケてるガジェットはデザインが学べる良質なおもちゃです。HTC vive持っていった時は結構盛り上がりました。まぁこれはネタが持たないので毎回は厳しそうだけど。

課題作業中はBGMかける

学生が課題作業中はシーンとしてると眠くなるし、ちょっとノリがあるくらいの方がアイデア出そうですし。気分上がる方がいいかなと思いノリよさげなBGMをかけることにしています。djay使って基本オートDJ。ここでかける音楽きっかけで「先生もDE DE MOUSE好きなんですか?!」みたいな感じで初めて話しかけてくれる学生もいました。

ほかにもこんなことを考えたりしました。

学生に楽しんでもらうためにやらないと決めたこと

1. 古いことやらない
2. 自分の自慢話しない
3. 一方的に話しない

自分が学生時代2,30年前の先生の作品自慢とかマジでつまんなかったので。

学生にインストールするサクセス

1. 20以上のインタラクションデザインの良い事例を知る
2. 3以上のデザイン手法を身につける
3. デザインについて明確な受け答えや判断ができるようになる

明確にゴールを決めておけば授業設計もしやすい。

ひとまず順調かも

現在四回を終了し、学生側もやっと慣れてきてくれた感じではあります。
やはり若いみんなの創造力は素晴らしく、着眼点もユニークで楽しませてもらっています。


次は授業の内容でも書こうかな。

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