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二月が嫌いだ。日本製のチョコレートみたいに、甘いというより苦い。一掃しきるまで奥に残る。私はそれだけの孤独に耐え慣れていないから、大火傷しそうになる。毎年のことなのに。

終わりを直観できないまま呆気なく糸が切られる様は、かわいく言えばチーズフォンデュだし、現実的に言えば大気圏ギリギリでいつまで息がもつかという話で、捥がれた後の苦しみが大きいのだ。そんな風に好きだった人は去っていった。一番嫌いな季節に。

そうして三月がやって来る。乱暴だな、と悪態つく方が悪いみたいに、さらさらと澄ました顔でそこにいる。休暇、私は旅に出る。知らない景色に包まれて、過去に縛られたまま、知り得なかった景色を今さら詮索する。あたたかくなる。体の重りが落ちていく。それが自然ってことでいいそうだ。


#エッセイ #詩 #3月

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