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新歓期

咲きかけの桜並木の中、木々を見上げる余裕もないほど、キャンパスには人も思いも溢れていた。
アロハシャツに学ランという突飛な格好で通用する、新歓期特有の狂ったお祭り気分が、一年前私の中にあった。心の中全面に、とは決して言えないけれど、確かにあったのだ。

今、サークルを去り所属を無くした私には、新入生に配り散らすビラもなければ押し付ける勇気もない。
夜分遅く酔っ払った新入生に乱暴される友人を助けにいくハプニングも、もう起こり得ない。
そんなに親しいわけではなかった友人の友人宅に急遽泊めてもらうお願いも、もうしない。

新入生に奢るために空っぽになった財布は、今年は心配することがなさそうだ。

傍観する者には予想以上に春風は涼しいものだと知った。

#エッセイ #大学

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