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芋学生

平常運行。
今回最初に学習した新ドイツ語単語は、ananas=パイナップル、であった。なぜなら空港から降り立って最初に購入したのがお気に入りのココナッツミルクであり、ココナッツと一緒にパイナップルも入っている飲み物だったからだ。cocos=ココナッツなのはなんとなくわかるので、そうでない方がパイナップルだ。

初日、真っ先に本屋で目当ての本を探し求める。ベストセラーではない哲学書をわざわざ書店員に尋ねるときは、相手が賢い学生扱いしてくれるので、久々の渡独で心が折れがちな自分にとって有難いもてなしだ。自分出来るんだゼと勘違いできる。

昼食で贅沢して入ったレストランでは、ご飯の代わりに、ジャガイモをペーストした物体。ドイツだなあ。痛めてくたくたに疲労したオニオンの上には、しゃきっと勇ましいフライドオニオンがのっている。白米と納豆のノリで、イモとオニオン。くどいほどイモとオニオン。馬鹿のひとつ覚えとはこういうことです。

二年前初めてドイツへやって来たときには、メニューを読むことも叶わないほど初学者だった。ナンダカワカラナイがオススメメニューが書いてあったので、それを指差した。数分後、ジャガイモがやって来た。自分の注文したものではないと思って振り向きもしなかったが、それが近づいてくる。机にドカンと置かれたのは、馬鹿でかいジャガイモをまるごと茹でたものだった。大の男が拳二つを並べた以上はあろうか。ハロウィンのカボチャみたいに、意地悪い顔が私には写って見えた。周囲に申し訳程度の炒め野菜が添えてある。ジャガイモに蹂躙されたようにみすぼらしい有様だ。オススメメニュー?日本だったらとっくに閉店してしまっただろう。

メンザ(学食)に行けば、イモを見かけない日はない。生活の中心に、イモ。

#留学体験記 #ドイツ

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