一生友達。

二日間も禁酒続かなかったと照れまじれに嘆く友人は、ミルク多めのアマレットミルクを口に含む。
偶にはオシャレなバーに行きたい大学生後半戦。とはいえ醒めない酔いに屈して、未知のウイスキー等に挑戦するガッツはなかった。

キャンドルの素敵な窓側の席だからいつもの学生街が少しだけ大人びて見える、なんて魔法はかからない。

セックスとか生理とか、雰囲気に削ぐわない言葉が並んでいる気がするけど大丈夫か、と友人にツッコむのは避け、暫く話を聞いていた。
話の内容自体は、安くて水っぽいビールで乾杯する居酒屋でするものと何ら変わりはない。ただ下卑た言葉でさえセクシーに化ける気がするのだから雰囲気というやつは恐ろしい。

それに事務バイト終わりの友人のワイシャツ姿は本人いわく疲れたOLだけれど、私には眩しい。
くたびれたワイシャツが肌けたままグラスを手に持つ姿は似合ってる、まあビシッと気を張っている姿もカッコいいものだと思うけど、と言いたくても言えやしない程度に、つまりは友人のことがだいぶ好きだ。

イケメンバンドマンとワンナイトはありか、と聞かれても私の頭はゲシュタルト崩壊するばかりで何の答えも提示できない。
いきなり家行くのは危ないんじゃないの、とか当たり障りのないことを言う。


というか、君は思ってる以上に魅力的なんだから気をつけてよ。



私にとって本気の答えはそんな一言で足りるに違いなかった。
いや自分は狙われないとどうしても思っちゃうんだよね、と友人は言う。

目の前に私がいるのを忘れているらしい。

バーの窓ガラスが少しばかり曇っていて良かった。あまり綺麗に磨かれていると、背けた表情がバレバレになる。

それでも徐々に、私は強くなった。哀しさや切なさと呼ばれるものたちを忘れるくらいには、慣れてきた。親しくなればなるほど相手の聞きたくない事情を知ってしまう経験は、一度や二度ではなかった。
好きな人が好きな人の話をするときの麗しさを目の前にできているのは私だけだ。

そう信じることでより強く、友人でいる。

#小説 #エッセイ #デミセクシャル

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