変化

今日は5℃もあるって、あったかいね〜と言いながら、真っ白な雪景色を踏みしめています。クリスマスと年末年始は潔く店が閉まりまくるので、大好きな部屋に引きこもるしかありません。

そこで2017年の大反省会を行い、2018年の目標を100個決めました。深海魚と宇宙飛行士が見る景色ほど、世界が変わったことを発見しました。

一生忘れられないと思った、(良くない方の意味の)言葉を、すっかり忘れていました。
そしてあなたの言動と、空気感で、いっぱいでした。時々本気で心配になります。あなたは人間でしょうか。天使なんじゃないか。雲の上に連れて行かれてしまうのではないか。そうしたら、鳥になって追いかけます。

2017年の前半、あなたに会うまでについては、病む状態の最上級まで反芻したので、これでもう振り返るのは終わりにしたいと思います。無駄にフランス語ができるようになったこと、最後だと知って巻き煙草を受け取ったこと、理性を無くしてしまったこと、怒りとは一時の感情ではなく、理性と結びつく人間独自のものだと知ったこと。自分はちゃんと怒ることもできず、訳もわからず泣いていました。根っから動物だった。

春、ずっと待っていて、空っぽだった。長らく冬眠していました。ヘルマン・ヘッセ全集を読みました。『アウグスツス』という短編が心にこびりつきました。

ある母親が、なんでも願いをかなえてくれる人物に、お願いをするのです。「息子が誰からも愛されますように」

その通り、息子アウグスツスは誰からも愛されて育ちました。悪いことをしたって、誰も叱りもせず、褒め讃えて彼を愛します。しまいにアウグスツスは、一方的に愛されることに耐えられなくなり、人格が歪んでしまいます。やがて、彼が生まれたとき母親の願いを叶えた人物が、もう一度願いを叶えてくれることになりました。アウグスツスは、このとき願います。「誰のことも愛せますように」

その願いが叶い、アウグスツスは以前彼を無条件に愛してくれる人たちに対して悪く振る舞ったつけが回って、今度は大勢から恨まれます。けれども、誰のことも愛せるようになったアウグスツスは、ひとり微笑むのです。

愛について、ヘッセの『春の嵐』にあったことも、大事に育てていったつもりです。

「あなたは自分自身の幸せに対して無関心にならなきゃいけません。自分なんてなんだ!と考えることを学ぶのです。そのために役立つ方法が、たった一つだけあります。自分の幸せより相手の幸せの方が大事だと思えるほど、誰かを愛さなければなりません。しかし私がいうのは、恋愛しろということじゃありません。それは逆ですよ」

ここはヘッセが働いていた本屋がある街で、留学理由を書く時も苦しまぎれに「ヘッセを凌ぐ作家になりたい」と書きました。それなのに、そのはずだったのに、小説が書けなくなった。あんまり美しいものを目の当たりにしたからです。言葉じゃ全然足りない。

それで、気づいたら絵を描いていたのですが、それだって冷静になれば「こんなものじゃ全然伝えられない」と文章も絵もビリビリに破り捨てたくなります。それくらい案外世界は美しくて、自分は無能だと思ったのです。そぐわない世界で息をすることは苦行のようですが、永遠は誓えなくても落ち着ける場所はあるようです。ドイツの自室とか、あなたの隣とか。

何度夢で会ったかわかりません。そういえば私の中ではあなたとの初対面も、夢の中だった。どこだったんだろう、自動車整備工場みたいな場所のドラム缶かな、にあなたが座っていて、話しかけたんだ。

夏合宿の間、あなたが消えてしまう夢を見ました。しかも一度だけでなく二、三度目見た。とても怖くなって意識を取り戻すと、隣であなたが眠っているから、嬉しかった。

実はドイツに来てから、こちらで気になる人がいました。でもきっかけは、語学コースで遠足に行く時のバスで、その人が眠っていたことだと思う。寝顔があなたに似ていたから。

本当に幸福そうに眠るよね。そのままでいて欲しい。そういられるように、私はあなたの側にいたいです。2018年の目標の一つです。

会いたいです。

空衣

#手紙

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?