見出し画像

映画館との遭遇

 元々はそんなに頻繁に足を運ぶことはなかった。研究室生活がキッカケだった。
 毎日毎日、自分の研究室のフロアにひと気がなく、しん…とするような時間にしか帰れず、帰れば疲れていて寝る以外のことは何もできない、というような生活だった。でも(土曜日)日曜日は自分の時間が持てた。
 せっかくの休み、寝て無駄に過ごす訳にはいかない。そう私は思っていた。ギターの練習したり、本屋へ行ったり、おいしいご飯食べたり、古着屋でウィンドウショッピングしたり…いろんな過ごし方をしたし、あると思う。
 でもどれをしていても、頭によぎるのは「あゝこの休日が終われば明日からまた先生に嫌味を言われながら実験するのか…」ということだった。
 正直、3回生の終わりからの半年間はキツかった。相談相手がいない、同じ悩みを共有できない、親に言ってもわかってもらえない、というのが悩みだった。
 そんなとき、なぜかは覚えていないけど、映画館に行ってみようと思った。1人で暗い空間の中、自分の境遇とは全く別の世界をみる。映画は他のどの休日の過ごし方よりも、集中することができた、1人の世界に。ぼーっと何も考えていないときと同じような感覚。「これだ」と私の直感がはたらいた。日頃の精神的な傷を癒すには”映画館”がピッタリだと。
 普段の生活を忘れられることが当時の私にとっては素晴らしいことだった。そのことに気づくことができたことに、私が前の研究室に所属していた意味を見出している。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?