見出し画像

紙媒体の淘汰

昨年の9月ころの話である。
私は会社の研修で加賀のホテルで過ごしていた。周辺には訪ねる店もなく、ホテルで暇を持て余していたため、wowowオンデマンドで特集されていた湯浅政明のアニメである「ピンポン」を鑑賞した。いわゆる「スポーツ根性漫画」とはまた違った雰囲気のアニメであった。特に感動したのは最終話のペコ vs スマイル戦で、スマイルが自分はちゃんとした血の通った人間だと自覚し、その上でピンポンを楽しむという描写だ。

こんなに良いアニメなら、原作も読んでみたい!と思い、丸善へ原作漫画を探しに行った。しかし本棚にあったのは文庫本バージョン。JOJOの文庫本バージョンを買ったときに絵が小さくて少しガッカリしたことがあったため、買うのをやめた。しかし、単行本はすでに廃版になっており、ネットには全巻揃っておらず、ブックオフにも出回っていなかった。仕方がないから本屋で文庫本バージョンを買うか…と決め、近所の本屋へ行くも置いておらず、丸善へ行く用事のあった妹におつかいを頼むと、2・3日前にあったその文庫本バージョンも売れていた。この短期間のうちに自分と同じ考えの人がいたなんて…と少し不思議だが。

丸善にないなら、もうネットで買うしかねえなと思い、初めて楽天を利用した。現物がすぐに手に入らないからと、ネットで本を買うということはあまりしたことがなかったが、今回利用してみると、注文から発送までのはやさに脱帽した。これなら本屋を複数探し回るのと変わらないなと。笑

ネットで調べていると絞り込み検索に「電子書籍」と「紙」を発見した。私は「電子書籍」が嫌いである。学術論文をiPadで可憐に読む学生もいるらしいが、内容が頭に入ってこず、私は紙の余白にあれこれとメモを書き込みながら論文を読むタイプであるから、学生時代もいちいちPDFをコピーして読んでいた。「電子書籍」であると文字を滑らすことしかできず、あまり本を読んでいるという感覚にならない。まず長時間画面を見続けることも、大変酷である。読んでいて目や頭は疲れるのに内容が入ってこない、なんと致命的なことか。

それに比べて「紙媒体」はどうであろうか。現物主義の私は手元に実物があることでとても満足感が得られる。本棚が埋まっていくというのが嬉しいのである。また「紙媒体」で読むことでしか味わえないこともある。達成感である。ページを右から左へと繰るという行為が素晴らしい。自分はこんなに読んだのか、またあとこれだけのページが残っているのかと、一目で確かめることができ、本を読んでいるという行為を実感することができる。こうした実感のない、目に見えない「電子書籍」はどうしても味気なく感じてしまう。

しかし、近年の電子書籍化は著しく進んでいることに、ネットでの買い物で改めて実感した。「ピンポン」以外にもほしい漫画があったため探していると、「在庫なし」の文字が目立つ。何故こんなにも無いのだというほど品薄なのである。おそらく「電子書籍」へと移行したことで、「紙媒体」の出版数が減っており、もう刷るのをやめているからだろう…。この年齢になりようやく「漫画大人買い」が実現できるようになった私にとってはとても残念なことである。1巻はあるけど3巻はない大人買いなんて、大人買いではない。毎朝の通勤電車でもスマホで漫画を読んでいる人は多いなあとは思っていたが、ここまで「紙媒体」の淘汰減少が進んでいるとは…。学生時代にコツコツと買い揃えていた「団地ともお」が全巻揃う日は来るのだろうか…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?