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10年以上ぶりの31日

社会人になり10年以上、12月31日をゆっくり過ごすなどというのは無縁の人生であった。

というのも、これまではスーパーで働いていため、31日はとにかくてんわやんわの大戦争だったからである。

私が担当していたベーカリー部門は、年で1番売れる…というわけではないが、それでも曜日関係なく普段の週末くらいに毛が生えたくらいは売れる。

パンなんて誰が食べるんだ…とおもいきや家族団らん用にピザを買う人もいれば、大掃除などをしてる間に、子供達に食べさせる用のパンをお昼に買いにくる人もいる。
こういう手間のかからない即食性の高いものが年末はよく売れるのだ。

私のいたスーパーは、ベーカリー部門のわりには他のスーパーよりも圧倒的に売場が広く、定番棚に加えて大きな平台があった。
最後にいた店なんて、定番と平台が6個もあったのだから笑ってしまう。

ベーカリー部門も大変であったが、水産やデリカは更に大忙しで、寿司のために各部門から朝の5時やら6時から応援を要請されていた。

このように店として1年で1番売上が作れるため、皆振り落とされないように気合を入れて臨んでいたのである。

加えて翌日からは休みなので、商品をしっかりと売り切っていくことが重要で、夕方からは値引きハンターとの戦いとなる。

ハンターはギラリと目を光らせ、あらかじめ好きな商品をカゴに入れキープしておいて、値引きの担当者にこれもお願いなどというズルをするのだ。

このようなマナーのない値引きハンター達を徹底的に排除するために、要求をピシャリと抑えるガタイのいい男性社員を2名で鉄壁の壁を作り、絶対に対応するなと言われていたものだ。

値引きハンターたちも閉店間際になると更に目の色が変わり、電話をしてやりとりをするようになる。
これは色んなスーパーに家族で散らばって、スパイさながらに現場の情報を伝えあっているのだ。
実にたくましいと思う。

私はパンも残りわずかになると、自らが売場に出て値引きをしにいった。
まるでアイドルのコンサートかなにかのように人を集めて、「こちらの158円のパンが…な、な、な、なんと98円〜。」などとジャパネット高田もびっくりのパフォーマンスで、どんどんお客さんのカゴに残りのパンを入れてもらった。

そんな戦争をしながら発注作業をして、棚卸しをして、家に帰る頃にはだいたい今年の紅白の振り返りが行われていた。
そんなことを社会人になってからもう10年以上続けていた。
この業界にいると、家族でゆっくり年末を過ごすというのはなかなか難しいものである。

子供の頃は年末となると、とてもウキウキしたのを覚えている。空気が徐々に変わるのを感じるのだ。
もうすぐ新しいなにかがくる!綺麗にしなくてはと、いつもは汚くて散らかり放題だった部屋を新たな気持ちで掃除をして、竹ぼうきで外を掃き、玄関にお飾りをする。

紅白が始まる前には風呂を済ませて、我が家は決まって12/31はすき焼きを食べて過ごすのである。
1年に1回の贅沢であった。

その後は夜なのにお菓子を食べても怒られない上に、どんなに遅くまで起きてても怒られない。

私は嬉しくなって当時はチョコチップクッキーを握って走り回っていた記憶がある。
紅白が終わるとゆく年くる年を見始め、この辺りでみんなで蕎麦を食べる。

こんななんでもないようなことを大人になってからもふわふわと思い出して、あの頃は良かったなぁ〜などと思っていた。

だから今年ははじめから参加できることが妙に嬉しくてドキドキしている。
私にとって10年以上ぶりの31日。特別な31日なのである。

しかし、10年も私が忙しくしていたため、妹は結婚してしまい、年末に一緒に過ごすことはもうなくなってしまった。
あの家族皆でそろったキラキラした年末は、あの頃だけの特別な時間だったのだと感じさせられる。

胸が焼けるようになったと、すき焼きは焼肉へ変更し、昔は蕎麦は1人1つだったのがもうそんなに食べれないからとシェアをしたりしている。
朝は早く起きれないから日の出は見に行かない…など、歳をとって変わってしまったことも多い。
どんな31日になるか?今は全くわからないが、家族との時間を大事に過ごしたいと思う。

今年の休みは1週間くらいあるので、規則正しい生活を送るために、小学生の頃を思い出して冬休みの計画を作った。

とりあえず今年はオフィスワークにより5キロほど太ってしまったので、冬休みのランニングはかかさず行いたいと思う…。

今年一年ありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。

執筆のおやつにヤングドーナツをたべます🍩🍩🍩