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臨終図巻

年の替わり目になると山田風太郎の『人間臨終図巻』に手が伸びる。57歳は難なくやり過ごし、昨年後半に満58歳を迎えた。無事に過ごせば今年59になるが、まだ10ヶ月以上あるので、どうなることやら。

ベートーヴェンを難なく超えてシーザーに挑む58の凡夫なり

今死ねば光琳、健二、山頭火、杜甫、天神に並ぶ年齢

ベートーヴェンが本当に57歳で亡くなったのかは知らない。シーザーが「ブルータスよ、お前もか」と言ってバタリと倒れたのが58歳の時であろうがなかろうが知ったこっちゃない。『人間臨終図巻』に書いてあるので、そういうことにして詠んだだけのことだ。57歳で亡くなった著名人には軍人も多いが、自分の感情として、そういう人たちと一緒にされるのはどうもなぁ、というのがあってベートーヴェンになった。軍人とか軍隊というものに対してはちょっと思うところがある。長くなるので今日は書かない。

ついでに書くと、シーザーが自分を暗殺する人々の中にブルータスを認めて「ブルータスよ」と驚いたのは、ブルータスが自分の息子ではないかと思っていたからだそうだ。正式な親子ではなく、つまり、そういうことで、そのことをブルータスが知っていたのかどうか、というのはちょっと気になる。

二首目に詠みこんだ人たちは芸術系を選んだつもり。菅原道真の本業が政治家であり高級官僚でもあったのだろうが、当時のそういう立場の人は歌を詠むことが必須であったので歌人と言えなくもない。尤も、名前が挙げられたほうにしたら、「なんでこいつと一緒にされちゃうわけ?」なんてどこかで今頃御立腹かもしれない。まぁ、さすがに気がつかないでしょ。こっちは凡夫だから。

『人間臨終図巻』によると今回詠ませていただいた方々の生没年は以下の通りだ。
ベートーヴェン(1770-1827)
シーザー(前102-前44)
尾形光琳(1658-1716)
溝口健二(1898-1956)
種田山頭火(1882-1940)
杜甫(712-770)
菅原道真(845-903)

山田の小説の方は読んだことがないのだが、この『図巻』は淡々とした書きっぷりがいい。後で知ったのだが、山田はもともと医者だったのだそうだ。合点がいった。


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