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「軍人入門」:貴方はどこまで偉くなれるか?

ロシアとウクライナの戦争の先行きが見えない時期に不謹慎だと思ったのですが、軍隊に関するよくある疑問として、「たとえば少佐って具体的にどのくらい偉いのか」「小隊ってどの程度の規模で何をするのか」を知るための「サワリのサワリ」として簡単にまとめました。よってこれが全てではありませんが、今までで一番ボリュームのある記事となりました。

【兵】二等兵・一等兵・上等兵、自衛隊では、ニ士・一士・士長、サラリーマンでは、一般社員
一般的には数年の兵役を終えると除隊して市民生活に戻ります。これを「予備役編入」と言い、戦争が始まると招集されます。「プライベート・ライアン」という映画がありましたが、「プライベート(Private)」は二等兵・一等兵を一括した名詞で、「ライアン君の私生活」ではありません。外国語は特定の階級で呼び方が変わるので覚えるのが面倒です。
「伍長勤務上等兵」は、特に優秀な兵士に「下士官に準ずる」任務を与えるもの。戦場における臨時職なので腕章等で区別し、後に研修を受けて正規に昇進します。「肩で風切る伍勤さん」という俗謡があり、立ち止まる暇も無いほど忙しいそうで、こういう人はどこの職場にもいますね。

【下士官】伍長・軍曹・曹長、自衛隊では、三曹・二曹・一曹・曹長 サラリーマンでは、班長・主任
優秀な兵士は本人の希望と上官の推薦があれば、昇進試験を受けて軍に留まることができます。いわゆる「職業軍人」の第一歩。兵士が 5~6人の大部屋だったのに対し、下士官は二人部屋、ないし個室が与えられます。大砲を撃つ、エンジンを回す、といった作業そのものを監督し、陸軍で最小単位の「分隊」を指揮して、5~10人の部下を持ちます。アメリカのTVドラマ「コンバット!」では「分隊長」の「サンダース軍曹」が主人公でした。航空機のパイロットのように高度な専門性を要求される職種では、養成学校を出てから下士官としてキャリアをスタートさせることもあります。下士官の仕事は多岐に渡り、時代や国、陸海軍で名称も変わる為、本記事では端折りに端折った解説とさせて頂きました。それだけ下士官の存在は重要で、彼らの能力に軍の命運がかかっていると言っても過言ではないポジションなのです。   「准尉」とは、ベテラン曹長に「少尉に準ずる」待遇を与えるもので、恩給(年金)や遺族年金の額にも大きく影響します。どんなに優秀でも士官学校を出ていなければ出世できないのでは、現場の士気が下がってしまいますから、それを防ぐ為の救済措置です。「現場叩き上げの兵士」にとっては、望みうる最高の地位と言えるでしょう。

【尉官】少尉・中尉・大尉、自衛隊では、三尉・二尉・一尉、サラリーマンでは、係長・課長                          幹部を養成するための士官学校を卒業した指揮官を「士官」もしくは「将校」と呼びますが、国によっては「尉官」と「佐官」を厳密に分ける場合もあります。国家公務員のキャリア職に相当するエリートで、「分隊」を集めた「小隊」、小隊を集めた「中隊」を指揮して、前線と司令部のパイプ役となり、任務がスムーズに遂行できるよう調整役を務めます。基地の外に自宅(官舎)を与えられ、通勤も可能です。しかし、新卒の少尉がいきなり指揮を取れる筈も無いので、まずは上官の秘書のような業務を行い、上官が昇進して異動すると後任を任ぜられるか、一緒について行くか、という経験を積んで実力を身に着けていくのです。父親ぐらいの年齢の下士官を部下に持つ場合もあるので、彼らの信頼と尊敬を勝ち得なければ部隊は無茶苦茶になってしまいますからね。                            オリバー・ストーン監督の「プラトゥーン」は「小隊(Platoon)」を差し、分隊長同士の衝突が描かれました。「ジョジョの奇妙な冒険(第四部)」に登場する「バッド・カンパニー( Bad Company)」は「極悪中隊」の事。中隊長である「大尉」は「キャプテン(Captain)」と呼ばれますが、これは「頭(カシラ=Caput)」が語源で、一人で掌握できる部下の人数の上限が中隊であるからだそうです。

【佐官】少佐・中佐・大佐、自衛隊では、三佐・二佐・一佐、サラリーマンでは、次長・部長                         「中隊」を集めた「大隊」、「大隊」を集めた「連隊」を指揮する他、部下の人事考課も行い、軍艦のように機関・操船・砲術等、複数の部署が乗りあわせる艦の艦長を務めます。「オバタリアン」という流行語(古いな…)の語源となったゾンビ映画「バタリアン」は、「大隊」を指す「バタリオン(Battalion)」をもじった造語で、原題は全く違います。「連隊」の規模は自衛隊でいうところの「駐屯地」に相当します。「少佐・中佐」は英語で「コマンダー(Commander)」と呼ばれますが、特撮・アニメ等のSF作品で、「コマンダー」と呼ばれる人の仕事内容を見ると、適当につけてない?と思う時がなくもないです(苦笑)。「大佐」は「カーネル(Colonel)」。ケンタッキーのカーネル・サンダースのように民間人に名誉称号として与えられる場合もありました。                       「准将」は「大佐」と「少将」の間で、会議に参加して意見を述べることはできますが、議決権(投票権)を持ちません。訓練学校の校長や軍事博物館の館長等、名誉職に与えられる事が多いですが、上層部に嫌われた大佐を「飼い殺し」にする措置でもあります。「Zガンダム」で反地球連邦組織「エゥーゴ」を結成したのも、ブレックス・フォーラ「准将」でしたね。

【将官】少将・中将・大将、自衛隊では、将補・将・幕僚長、サラリーマンでは、取締役                            連隊を集めた「旅団」「師団」、さらに大きな「軍団」「方面軍」を指揮します。ここまでたどり着くには軍の大学校に編入して最新技術や戦略を学ぶ必要がありますが、学歴さえ身に着ければ後は卒業年次(第〇期であるか)と成績順でエスカレーター式に昇進できる超タテ社会です(←偏見。戦争が無い平時の話です)。                       「機動戦士ガンダム」だとジオン軍はキシリア少将・ドズル中将・ギレン総帥(大将を兼任)の三人で回してるように見えますが、ドズルの副官は階級が一個下の少将で、ソロモン要塞には他にも複数の将官がおり、彼らのような人たちを「参謀」と言います。地球連邦軍のようにお偉いさんがゾロゾロ出てくる方が普通なのです。大将ともなれば参謀総長・司令長官・陸海軍大臣に任命されることもありますが、彼らはあくまでも野戦における責任者であり、シビリアン・コントロールが進んだ第二次大戦後の情勢では国防省や防衛省の下に入り、「統帥権」を持つ大統領や政府(日本は大統領制ではないため)の命令によって動くのです。

余談ですが、同じ階級が二人いた場合、先にその階級になった方(だいたい年上)が指揮権を持ち、これを「先任」と言います。「機動戦士ガンダムSEED」ではパイロットのムウ・ラ・フラガ「大尉」が宇宙戦艦の副長であるマリュー・ラミアス「大尉」に「先任は俺だが、艦のことは何も判らんぞ」と言うシーンがあり、指揮権の委譲と彼が専門職であることがサラリと描写されていました。(正規の艦長は一個上の少佐と思われ、後に二人とも昇進するが関係性は変わらなかった)

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