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「これからの学校教育に期待すること」というテーマで座談会に参加した話

先日、母親という立場から、学校教育にどんなことを期待するか、について話す座談会への出演させていただく機会があった。

登壇者は私を入れて3名。

ひとりは小学生から高校生まで4人のお子さんを持ち、不登校など、いろいろな経験をしながら、子供たちはそれぞれ、小学生の単身山村留学や、世界を旅する高校、など、一風変わった教育環境で子供たちを育てている方。
もうひとかたは、中学生の娘を育てながら、ファッションを入り口とした中高生のためのキャリア教育の会社を経営している方、ととてもユニークな方々だった。

そのため、こんなところに私が入っていいのかな?という躊躇もあったが、アメリカのビジネススクールに留学したことで、自分が受けてきた日本教育の問題点も見えたし、今の長男の通う公立小から見えてくる公教育の古い体質に不満もあるので、参加して自分の思いを話してみようと思った。

参加した感想

参加してみて、面白かったのは、かなりバックグラウンドも立場も違う方なのに、圧倒的に、「そうそう!」と共感することが多かったことだ。
また、正直、子供たちは日本脱出して、海外で教育受けさせたほうがいいんじゃないかと思い始めてた私に対して、日本の教育も(一部の私立だけど)変わり始めているな、という希望の光のようなものが見られたのも良かった。

自分が育ってきた頃のような、知識偏重で、偏差値を追い求める受験戦争にとことん向いてない長男は、普通の学校教育の中では「落ちこぼれ」になってしまう。でも、幸せな人生を生きることをゴールとして考えれば、偏差値のトップに君臨する官僚や医者や弁護士を目指さすのとは違う、別の道筋があるはずだ。
特に私が勤めている、世界をリードするグローバルIT企業の中で出会う優秀な方々を見ていると、日本の公立小学校で優等生であるということは、むしろリスクでしかないように思えてならない。
まさに日本の学校教育では常に偏差値トップ数%台にいた私が、社会でたくさんの壁にぶつかっている。

社会で自分の力で幸せに生きていくために大事な学校教育ってなんだ

それを考えた時に、3人の母親の意見がいくつかの点で一致したし、視聴されている方からも共感いただけたようで自信になった。
とはいえ、座談会ではうまく伝えられなかった部分もあったので、改めてここで書いておきたい。

これからの学校教育に期待すること

①  自分の頭で考え、自分なりの結論を出し、アウトプットすること
私がずっと学校で成績が良かったのは、記憶力の良さに加えて「正解にいち早く辿りつく力」が強かったからだと思う。だからペーパーテストに強い。
でも、リアルな世の中、ビジネスでは、「正解がない・わからない課題」がほとんど。そんな時に、自分なりの正解を模索し、また、それを他人に説得させる力、というのがとても重要だと思う。特に、これだけ変化の激しい世の中、先輩社員や上司が必ずしも正しいわけではない。
こうかもしれない、いや、こうかもしれない、と様々に思考を巡らせ、徹底的に考え抜く力、これはぜひとも学校で経験させて欲しい。
先生に対して「正解を教えてください」という態度ではいけない。
そして、大事なことは、自分なりに出した結論を、人前で発表し、それに対する忌憚ないフィードバックを得ることだ
それによって、自分の出した結論の欠陥を見つけられたり、思考の癖や、ベースとなる自分の価値観に気づけたり、他人が自分とは違う、という当たり前のことにも気づける。
社会に出ると(少なくとも私が働いてきた外資系企業では)、君はどう考えるんだ?と問われる機会が多い。その時に自分なりの思考の道筋を説明して意見を述べる、ということが私はどうも苦手だ。他の国の人に対して日本人全般に苦手な人が多いように見えるのは、学校でそういう機会を持ってこなかったからだと思う。
しかも、社会に出ると、意外と率直なフィードバックを得られる機会は限られてくる。だから、学校現場で、早いうちからたくさんのプレゼンを経験し、フィードバックを受けることで、自己認識を高め、多様性の中での自分なりの視点を持っておくことは今後の財産になると思う

②  自分が得意なことをとことん伸ばすこと
私の周囲でもストレングスファインダーをやってる方も多いし、強みを活かすことの大事さは、意識高めの社会人の間ではそれなりに浸透しているように思う。
でも、日本の学校教育では、長年ずっと弱みにフォーカスしてきた。
全教科まんべんなくできることが大事であり、得意なものを伸ばす時間より、できていないものをフォローする時間の方が多い。親も成績表をみて、1や2のついている教科が気にならない親はいないだろう。
とにかくそれが染みついている。もはや国民性と言ってもいいかもしれないくらい、弱点の補強に目がいきがち。小学校の宿題を見ていても、得意な人には退屈すぎるほど簡単、苦手な人には苦痛でしかないようなものが見受けられる。
でも、強みにフォーカスする方が、コスパも圧倒的に高いし、そもそも仕事は一人でするものじゃないのだから、自分の弱みは、それが得意な人に任せた方がチームの生産性も高くなる
だから学校現場では、自分の強みを認識し、そこにさらに磨きをかけていって欲しいと思う。私は社会に出た時、自分の強みがなんなのか全く分かっていなかった。もっと早いうちに気づいて、もっと磨きをかけておければ良かった。

③  データから本質を読み取るセンスメイキングの力を身に着けること
マーケティングの世界で「Online Merges with Offline (OMO)」という言葉が盛んに言われたが、まさに今の世の中はデジタルワールド。多くのものはデータ化でき、それを優秀なコンピューターが収集し、分析してくれる世界だ。
だから、当然学校現場でも、コンピュータを駆使してデータを分析して結論を出す訓練は大事。
しかし、だからといって、各種分析方法に関する知識や、BI(ビジネスインテリジェンスツール)の使い方だけマスターすればいいということではない。私がとても感銘を受けた本「センスメイキング」という本で指摘されているとおり、データを正しく読み取るためには、人間理解が不可欠だ。だから、いわゆる人文科学や歴史などを軽視した教育はいけないし、また、不合理で予測が難しい人間社会を相手にするなら、フィールドスタディを通して、実際の仮説を検証する、リアル社会で試す、ということが大事だと思う。学校現場だからといって、机上の空論ばかり上手になってはダメ。社会で相手にするのは人間なのだから。

④  メンタルタフネス&レジリエンスを身に着けること
これに関しては座談会で言おうと思ってて完全に忘れてたのだが、子供にぜひ身につけさせたいと思っているのがまさにこれ。そのためにわざわざマインドフルネス瞑想協会認定の講師資格まで取ったようなものだ。
どんなに優秀でも、メンタルが折れたら終わり。社会に出ていじめや嫌がらせにあうこともあるし、SNSを見ていても、いつ自分が誹謗中傷のターゲットにならないとも限らないのがこの世の現実。
私自身も自分のメンタルの不調を経験したことから、マインドフルネス瞑想を取り入れるに至ったが、実際、かなりこれに救われていると思う。
マインドフルネスの効果は、自分の精神的な安定だけでなく、集中力を高めたり、メタ認知や、EQが高まる、など、素晴らしい効果が多い。
実際、都内のインドをベースとした小学校では、ヨガと瞑想を取り入れているという。
特に、思春期など、心が成長する段階で、自分の心を守り、周りがどんな酷い環境でも自分の心を守り抜くスキルを持って行くことは大きな意味があると思う
これからの学校現場では、こういったマインドフルネスも積極的に取り入れて欲しいと切に願う。

まとめ

私が学校教育に期待することとして
①  自分の頭で考え、自分なりの結論を出し、アウトプットすること
②  自分が得意なことをとことん伸ばすこと
③  データから本質を読み取るセンスメイキングの力を身に着けること
④  メンタルタフネス&レジリエンスを身に着けること
として語ってきたが、3人の母親登壇者に共通していたのは、とにかく学校現場でたくさんチャレンジして失敗するという経験をさせて欲しい、ということだった。まさに、私たちが求めているのは「知識」より「体験」
知識なら家庭学習でも十分身に着くが、友達や同級生との関わりの中で多くの経験を積みながら人間として成長していくために「学校」はあって欲しい。
まだまだ古い体質から抜け出し切れていないようにも見える日本の教育だが、子供の教育に投資しない国に未来はないと思っているので、少しでもこうして教育に関心を持つ人が増えるといいなと思う。

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