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【読後メモ】創始者たち──イーロン・マスク、ピーター・ティールと世界一のリスクテイカーたちの薄氷の伝説|ジミー・ソニ著 櫻井祐子訳

Twitter買収から度重なる仕様変更、突然のXへの名称変更で物議を醸したイーロン・マスクですが、彼のXにかける思いや器の大きさに一瞬でファンになりました。

  • イーロン・マスク「何かを成功させる前にしくじった方法を四つ挙げられない人は、おそらくそれに取り組んだ本人じゃない」

    • 経営陣は試行錯誤には失敗はつきものとして受け入れた。

ネットワーク効果が発揮される様やそれを起こすための戦略的な動き、その裏にあるユーザーの声を聞いて高速にプロダクトに反映させていく動き。

今で言うアジャイルが生まれた瞬間が克明に語られています。

  • ペイパル躍進のターニングポイントはイーベイユーザーに支持されたこと。 ユーザーの要望を聞いて素早くプロダクトを改善していくペイパルはイーベイおかかえの決済サービスビルポイントを圧倒した。

  • 「二つの道があって、一方が明らかに優れていると言えない場合、どっちの道がわずかに優れているかを考えて時間を無駄にするより、とりあえずどっちかを選んでやってみた。

  • ユーザーにとってネットワークの価値はその大きさで決まる。ネットワークを持たない初期の段階ではどうやってユーザーを取り込みネットワークを生み出していけばよいのか?

    • 既存のユーザーに知人を誘ってもらうことに当初はとにかく重点を置いた。

組織が大きくなっても大事にしたスタートアップの精神。ペイパルに入社した人々は激動のなかでいろいろなものを手にした。

  • 当事者意識を持たせるため、新入社員にも重要で難しい仕事を任せた。

    • 大手金融から入社したマーケティングアナリストはイーベイでのペイパルのシェアを求める課題を与えられた。

    • 上級幹部はアナリストの上司に相談せずその課題を与えた アウトプットはパワポでなくスプレッドシートのままでよしとした。

  • スタートアップらしい文化にこだわった。

    • それが薄れたと感じれば意図的に戦術をくり出した。

    • 組織階層にこだわらないコミュニケーション、大人数での会議の廃止。

    • 会社組織が大きくなるに従い実のある成果が生まれにくくなることに対処した。

合併とサービス急拡大による組織的&技術的な課題が次から次に降りかかるなかハネムーン中にCEOの座から追放されたイーロン・マスク。

抗わなかった理由を聖書のソロモンの裁きに例え会社愛を語った。

上場後に彼が巨万の富を得たのは必然。それがなければテスラもスペースXもなかった。

  • クーデターが会社をいい方向に向かわせたことを認めるマスク。

  • 一方での後悔は一兆ドル規模の金融界のアマゾンになり損ねたこと。

  • マスク追放後もマスク派は会社の未来を信じて会社に残り、大活躍した。

成長と潔白のバランスをどうとるか。サービス規模拡大についてれ組織化、プロ化していく不正ユーザー。

かれらと向き合ってさらにペイパルはイノベーションを起こしていく。

  • ペイパルは当初、成長を優先した。

    • つまり不正対策をもうけて決済プロセスに余分なステップを設けたくなかった。

    • 悪意のユーザーは暇な大学生からプロ犯罪者となっていた。

    • 不正対策をしていなかったら今のペイパルは存在しなかったと取締役のティム・ハードは断言した

  • 不正対策としてスーパーエンジニアのレヴチンが目をつけたのが画像認識。

    • 画像を表示して、ユーザーがそれを見て入力する仕組み。

    • これが今のreCAPTCHA。

    • この仕組みを大規模サービスに導入したのはペイパルが初だった。

不正対策を実装する上でペイパルのチームがおこなったのが「安全性と使いやすさのダイヤル調整」 。

  • 不正を完全に阻止しようとすれば使いやすさを犠牲にすればいい。

  • ただしそれではスケールしない。

  • 不正が手に負えなくならない範囲で使いやすさを保つこと。

  • この落とし所をさぐるのがダイヤルを回すこと。

ペイパルはデザイン・エンジニア・プロダクト・カスタマーサービス総出の陣形でアップセルを実行した。

ユーザーからの憎悪で社内の雰囲気は陰鬱としたが、結果は最も楽観的な予測をも上回る好結果だった。

そして、ペイパルは強制アップグレードへと突き進んでいった。

  • ペイパルはビジネス・プレミアアカウントを提供し無料サービスの方針を撤廃した。

  • 方針転換は当然、ユーザーからの反感を買ったが、それを戦略的に乗り切った。

    • ログイン導線の変更と利用規約を活用し、ユーザーに事業を営んでいることの自覚を促した。

    • それとこのアップセルは強制ではなかったこと。

ペイパルを切実に必要としている市場に絞って攻めていった。 まさにセグメンテーションとターゲティング。

  • 戦略的に征服する対象を選ぶ。

    • ペイパルはアマゾンやピザハットのようなすでに成功しているサービスとの連携の社内提案を却下した。

ペイパルとイーベイ両者の殴り合いは字面はエキサイティングだが、当事者は気が気じゃなかっただろう。

  • ペイパル決済の大半はイーベイでおこなわれていた。ペイパル陣営はいつイーベイから締め出されるか怯えていた。

  • イーベイユーザーはペイパルを強く支持した。カートのないEC状態のイーベイ陣営は苦虫を噛み潰した。

買収後、イーベイのデフォルト決済業者になってからペイパルはさらに飛躍した。

お互いにやりあうことよりユーザー価値を高めることに目を向けられる安堵した人もいただろう。

まったく文化の異なる二つの会社がひとつになることの摩擦やそれを乗り越えて成長を実感する人々の話も興味深かった。

さらに興味深いのが、ペイパル創業者たちのその後で、みな謙虚。

  • ピーターティール「どの経験を次に生かすべきかなんかわからない。同じ会社の同じ状況で同じことを繰り返すわけではないからだ」

  • この精神がペイパルの未経験者の極的採用や、新入社員に重要なことを任せる文化に繋がった。

ペイパル分社化、再上場、いまやイーベイの数倍の時価総額ってすごいけど、ペイパル創業メンバーがその後立ち上げたサービスもエグい。

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どうなってるんだ笑

めちゃめちゃ面白い本でした。


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