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永田町が都議選を無視できない理由

「小池都知事、過労で入院」6月22日夜、この一報には驚きました。驚いたというより、一瞬でいろんなことが頭を巡りました。

さすがに体調崩すよね、コロナにオリンピックはキツいわ。
え?都議選告示直前に入院?今度はどんな作戦?!

体調を崩された方には失敬な発想です。申し訳ないと思いながらも、次のメッセージで混乱は更に複雑になりました。

小池百合子都知事は過労のため27日まで静養すると発表

え?倒れた直後に、回復する日程を発表?どういうこと?

私の頭の混乱は、この発表直後のSNSで飛び交った意見そのものでした。

「どんな作戦なんだ?」「この入院は絶対に計画的で裏があるに決まってる」「仕事とはいえ、連日の過労が原因だろう」

入院の発表と同時に復帰予定日を明示するということはこれまで聞いたことがありません。これは準備された入院だったのだろうかと憶測が飛んでも仕方がないところでしょう。私は体調不良を喜ぶつもりは毛頭ありません。しかし、このタイミングの「静養」について、発表から5日経った今でも日本中で憶測が飛び交っていることは事実です。その憶測の背景には、二つの根拠があります。ひとつは、都議会議員選挙が、その直後の国政選挙の結果に直結する重要な試金石となるといわれている重要な選挙だから。そしてもうひとつは、これまで政治家小池百合子があらゆる難局を乗り越えてきた抜群の政治手腕を持つからなのです。

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国政選挙と都議会議員選挙の関係

ではひとつ目の都議選と国政選挙の関係について、事実を振り返ってみましょう。

■2009年7月12日 第17回都議会議員選挙

 民主党が圧勝し、初めて都議会第1党となりました。自民党はなんと44年ぶりの転落。第1党の座失いました。

当時の都知事は、4期14年の都政長期政権を担った石原慎太郎氏。この選挙では、民主党は20議席増の大勝。初めて都議会第1党の栄誉を得た選挙となりました。自民党は10議席減で、過去最低の38議席。頼みの公明党と合わせても過半数は得られず大敗でした。ここで自民党が第1党ではなくなったのは都政では44年ぶりのことでした。

この年の第45回衆議院議員選挙は、都議選直後の8月30日。

民主党が野党から反転し、政権交代を生んだ選挙となりました。民主党は、ひとつの政党が獲得した議席数としては戦後最大の308議席を得ました。選挙後の党大会に結集した当選議員を前にした鳩山由紀夫氏は308人の当選した民主党議員を前に「壮観であります」と言わしめました。自民党119議席、公明党21議席。議場の座席が大きく塗り替わり、民主党、社民党、国民新党の連立政権が生まれました。自民党は55年の結党以降初めて第1党の座を失いました。

■2013年6月23日 第18回 東京都議会議員選挙

自民党が第1党に返り咲き 民主党大敗 共産党躍進した選挙となりました。
この時は猪瀬直樹都知事。

自民党は候補者全員となる59人が当選。念願の都議会第1党に返り咲きました。民主党は大敗。議席は三分の一に激減となりました。この都議選の直前に2012年12月に野田佳彦首相が安倍晋三自民党総裁に詰め寄られた「近いうち解散」となり、自民党が政権を奪還しました。その半年後に行われた都議会議員選挙でした。この都議選直後に、参院議員選挙がありました。

2013年7月21日 第23回参議院議員選挙

衆議院での政権奪還、都議選での第一党返り咲き選挙の後の選挙でした。自民党は最多となる65議席を獲得して圧勝しました。自公76議席を得て衆参共に第一党となりました。いわゆる「ねじれ」が解消されたとも言われました。民主党は17議席の大敗。結党以来最少の獲得議席でした。

■2017年7月2日 第19回 東京都議会議員選挙

小池百合子東京都知事率いる都民ファーストの会は、55議席を獲得して圧勝。一気に都議会第1党となる躍進でした。対する自民党は「歴史的大敗」。獲得議席は半分以上減らした23議席。都議会のドンといわれた超大物内田茂氏を引退に追い込んだ歴史的屈辱といわれる選挙結果となりました。
直後の10月に衆議院議員選挙がありました。

2017年10月22日 第48回衆議院議員選挙

自民党が単独で284議席を確保となりました。小池都知事率いる希望の党は、衆院選では自民党を追い込むことはできませんでした。希望の党は50議席にとどまり結果的には大敗となりました。立憲民主党は小池氏の「排除します」発言の受け皿となって55議席を獲得。大躍進となりました。

このように都議選の結果が、その後の総選挙や参院選の結果の先取りになっていることが分かります。都民ファーストの躍進の直後の総選挙は、例外に見えますが、小池都知事自身が代表になった希望の党と野党第一党の民進党を合流する荒業をしたまではよかったものの、その後の「排除」発言で一枚岩になれなかったことが自民党を利した結果となりました。

国政返り咲きを狙ってる?

小池百合子氏の政治家デビューは参議院議員。小池氏はその後衆議院に転身して、兵庫2区、兵庫6区、比例単独、東京10区と選挙区を渡り歩き、比例復活の憂き目にあうこともありながらバッヂを付け続けてきたツワモノです。

舛添元都知事をして「『ジジイ殺し』の特技を持つ」と言わしめるのは、この選挙区変遷のさなかにあった政党とその時々の重鎮を切り捨て渡り歩いてきた肝の太さでしょう。細川護熙氏を皮切りに、小沢一郎氏と新党を作り、小泉純一郎総理に望まれるがままに「刺客」となって勝ち残り、菅首相と不仲となるならば幹事長の二階俊博氏と連携をとりつつ先を読む。
何があっても選挙を勝ち抜き、人を出し抜いてきたのもその目的がズバリ「総理の椅子」だからなのでしょうか。もしそうだとしたら、都議選で自公と争うよりも「生みの親」と自認する都民ファーストの会を切り捨てた方が、その椅子は近くなる。そう考えることもまさに小池流で違和感はありません。小池人気にあやかって当選した都民ファの都議がたとえ今回の都議選で大量に落選したとしても、選挙区替えで厳しい選挙を勝ち抜いてきた小池にしてみれば、そのどれもが自力で勝てないぬるい候補者にしか映らないのかもしれません。

東京オリンピックの日本のメダル獲得結果が好調で、新型コロナの感染を抑え込んだと言える数字を示すことができたなら、衆議院解散は余韻冷めやらぬ9月に実行されるでしょう。この時は、現政権が勢力を維持するのは想像に難くありません。でも、新型コロナをコントロールできず感染拡大が広がってしまったと批判が大きくなったとしたら選挙は11月です。小池氏が出てくるとしたらそのタイミングなのではないでしょうか。最大の懸念材料であったオリンピックパラリンピックは、既に日程として消化してしまっているのですから。

この次の国政選挙では、新旧交代で引退となる長老が何人もでてくるでしょう。となると、動きやすさも加わってきます。あとは印籠を渡してもらう手はずを整えるだけ。となると、今回の都議選では積極的に動かないことで自公との関係性を保ち、総理への道に先鞭をつけるのが得策。女性初の総理大臣を狙うには、年齢からもこれが最後のチャンスでしょう。

小池氏の愛犬「そうちゃん」は「総理大臣」からとられた名前ということはよく知られていることです。20年近く飼われていた愛犬「そうちゃん」が最近になって亡くなっていたことが後追いで報道されていました。入院はそのショックからかもしれないとも思います。もしそうだったとしたらここまで考えてしまう自分に嫌気がさしても来るのですが。
いずれにせよ、小池都知事は単に都政だけでなく日本の政界全体にその影響を及ぼす大きな存在になっていることは間違いありません。衆議院総選挙に向けて今後もその一挙手一投足がすべて意味をもって評価されていくことでしょう。都知事のご快癒を祈るとともに、次の一手が何なのか注目したいと思います。

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