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【実践報告】就職・転職準備の手伝い方<前編>

italkiのプロフィールとコースをビジネス寄りに変更してから、就職・転職希望者からの相談が増えてきました。彼らの目標は、『外国人として、日本で希望の職に「就職・転職」する』ことであって、日本語を使うことはあくまで手段です。目標達成に向けて、日本語教師・キャリアコンサルタントの立場からどのように支援しようとしているか、現在考えていることをまとめてみます。

これが正解というわけでも、おすすめというわけでもありません。とりあえず書き出し、将来見返してみたりして、よりよい案があれば改善していくつもりです。


前提

1:就職・転職支援の主な対象者

italkiで私に連絡を取ってくれる就職・転職希望者の多くは、日本語は超上級、技人国・高度人材・永住等の就労ビザを持つか、日本語学校または大学で学ぶ、在日外国人です。

※なお、転職予備軍もいます。前述のようなビザを取得できる可能性が高い専門職に、海外ですでに就いていて、日本企業への転職に備えて JLPT N2を目指そうとしている方々です。職務経歴書の翻訳をしたり、専門分野の読解・聴解練習もしたりしています。

2:支援のスタンス

私がしたいことは、「その人が、日本語をうまく活かして、いい人生を生きる」お手伝いをすることです。そのために、日本語教師&キャリアコンサルタント、という立ち位置を取ります。『自分は日本語の先生だから、日本語を教える責任だけ全うして、仕事が決まるかどうかは個人の責任』といった線引きはしていません。

現状把握(1)本人が感じている悩み・不安はどこか

就職・転職支援における留意点は、まず彼らが何に対して悩んでいたり、不安に思っていたりするかを理解することです。先入観なしに、まず話を聞きます。吐き出すだけで楽になることもありますし。(日本語でも英語でもOK)

真っ先に上がる心配事は、日本語での面接でしょう。緊張を強いられる環境の中、予想もしていなかった質問がきたらどうしよう。とっさに日本語でなんと言えばいいかわからなくなったら、頭が真っ白になる。といったことです。

また、そもそも日本での転職に対して、必要以上のハードルを感じていることもあります。理由は色々ですが、日本の転職に関する情報不足(簡単に解雇できないので採用は慎重、など)や、友人が転職に苦労した話を聞いて恐れを感じている、などがあります。

実際のケースにまだ当たったことはありませんが、ビザの種類や期限に絡む転職相談なども、今後出てくるかもしれません。(技能実習・特定技能・EPAはもっと複雑ですし、今後の制度変更にも着目して研究する必要あり)

すでに就職活動をしているが、なかなか決まらずに悩んでいるという人もいます。何度も面接に落ちて、悔しかったり自信をなくしたりするのは、日本人と同じです。

本人がどのような点に悩み・不安を感じているかを共感・理解すると同時に、私の目から見て何か課題なのかというのも、聞きながら整理していきます。

現状把握(2)就職・転職の方法、進捗はどうか?

まだ何も始めていない人、エージェントに登録したばかりの人、複数のエージェントから紹介を受けて面接真っ最中の人、自力で会社に応募している人(少数派)、色々と疲れて小休止している人、など様々です。

外国人採用に強いエージェントに登録しているか、外国人採用を積極的に行っている企業に紹介してもらっているか、面談の前後に担当者からアドバイスがもらえるか、などによっても進捗が変わってくると思います。

履歴書・職務経歴書の日本語への翻訳については、最近ではChatGPT+日本人の友人の校閲、という形で仕上げている人が多いようですので、ここを手伝うことは少なくなりました。
ただし、それが魅力的に採用担当者伝わるか、自分で話せるかどうか、は別問題です。

現状把握(3)コミュニケーション上の問題はどこか

言語・コミュニケーション面の課題は、本人の自己申告に加えて、こちらが客観的に気付けることがあります。例えば、日本人の視点で・・・

  • 発音が聞き取りづらい
    (母語の発音の影響が強い、声がこもっていて小さい、話すスピードが速すぎる、など)

  • 日本語の単語・文として、理解しづらい
    (語彙・文法の誤り・不足、母音・長音(伸ばす音)・撥音(ん)・促音(っ)の誤りのせいで別の単語に聞こえてしまう、など)

  • こちらの日本語が通じない
    (返事ができず沈黙が続く、質問の意図と違う回答がくる、など)

  • コミュニケーションに違和感
    (質問に対する回答が短かすぎる、「でも、でも」という反論?言い訳?が続く、など)

こういった課題に対しては、主に日本語教師の視点から改善方法をいくつか提案することができます。

通常、初回の30分のカウンセリングの中で、上記の(1)〜(3)を行なっていきます。質問項目・確認事項がだんたん定型化されてきたので、最近はGoogle Documentにまとめた雛形を使って話を伺っています。

現状把握(4)職務経歴の理解

相手の強み・今後のキャリアパスをよく理解するため、私自身へのインプットが毎回必要です。全ての業種・職種に精通しているわけでは、もちろんありませんので、その方の職務経歴を聞いてから、その分野の専門用語や仕事内容、一般的なキャリアパスなどを調べます。最近はChatGPTに「●●って職種は、一般的にどんな仕事内容?」などと聞くと、即座に教えてくれるし、さらに質問を重ねて深めることができるので、非常に便利になりました。

そして、実は大事な専門用語の把握。私自身がその人の職務経歴や実績を理解するために必要になります。IT業界はカタカナが、WEBマーケティング業界は3文字略語が、別の業界では漢字の専門用語が多い傾向があったりします。3文字略語は、人事や現場担当じゃない人には使わないほうが安全、現場部署との面接だったら使った方がいい、など、アドバイスも変わってきます。

このパートは、カウンセリングが終わったあとに調べることが多いです。色々な業界の新しい情報に触れることは面白いです。
今後は、人材紹介の営業やコーディネーターと人脈を作って、もっと生の情報を得られるようにできたらいいなと思っています。


こうした現状把握を経て、どのように目標設定して、レッスンプランを練って進めるかは、後編でまとめたいと思います。

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