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【日記】ヤードセール

先日、村上春樹が訳したレイモンド・カーヴァーの短編を含むいくつかの外国文学作品群と、村上春樹によるカーヴァーの紹介文をたまたま読んで、それがまあかなり良かった。

そのため、外国文学にまるで無知な私は、もっといろいろ読みたいな、手始めにカーヴァーから手を出してみよう、と思い、図書館で『愛について語るときに我々の語ること』など、いくつかのカーヴァーの本を借りたのだった。

『愛について語るときに我々の語ること』所収「ダンスしないか?」をまず読んだ。
おそらく夫婦生活が破綻したのであろう中年男性が家財道具のいっさいを庭に投げ出す。
そののち、車で彼の家沿いを通りがかった若いカップルが「ヤードセール」だとはしゃぎながら無遠慮な様子で男性宅のベッドで飛び跳ねたりなんだったりする、という途中までの筋書きに異国的趣を感じた。

子供の頃、「自宅フリーマーケット」みたいなことをやってる洒落た家が近所にあって、なんだか年中クリスマスみたいで妙に憧れたのだが、あれはヤードセールという名前だったのだなあ。

そんなことを考えながら小説を読み進めた。初対面のはずのその作品には、しかし、どこかで聞いたことのあるような言葉が点在していた。

それもそのはずだ。

「中年の男よ。家財道具一式を庭に並べてたの。マジで。それで私たちぐでんぐでんに酔っ払ってね、ダンスしたの。車寄せでよ。本当の話。笑わないでよ。その人がここにあるレコードをかけてくれたの。このレコード・プレイヤー見てよ。そのおじさんが私たちにくれたの。このしょうもないレコードもぜんぶ。まったく、もう」

カップルの片割れの女が言うこの台詞は、かつて観た舞台で印象に残っていた台詞だった。どこかから引用していたのは覚えていて、調べようと思いつつすっかり忘れていたのだ。それにたまたま巡り会えた。

さらにその日、ご飯を食べながら私の好きなYouTubeグループ「東海オンエア」の動画でまだ見たことのないものを選んで見ていたとき、一人のメンバーが「ヤードセール」と言ったのでびっくりした。

しりとりに関する企画の動画だった。
「ヤードセール?」
「トイストーリー2でウッディが売られちゃいそうになるやつ」
「ヤードセールそこでしか聞いたことないわ」
ハハ、と笑い声が起きた。なるほど、カーヴァー作品もトイストーリーもアメリカ文化を反映してるよな、そりゃ、となった。

要するにただそれだけです。日記に意味など求めちゃいけない。しかし、自分の知っているものが数珠繋ぎ的になることってあるよね。あれの名前はなんなんだろう。


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