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ビーフストロガノフをつくる

なおりかけのかさぶたをはがすような、傷に塩を塗るような。

例えば恋が破れたあとに
「一緒に行こうね、ディズニーランド」と言っていたことを、駅のポスターのミッキーマウスを見て思い出したりする。
初めてご飯を食べた渋谷を電車で通っただけで、思わず涙ぐんだりする。

ミッキーも渋谷も悪くない、それはわかっている。
でも、止められない、もはや、ミッキーすら憎んだりする。にやにやいつも笑いやがって、とか言って。やつあたり。

思い出さないために、いつもと全然違うものを作ってみる。
手順がわかっていないものがいい。
そして、何が入っているかも、よく知らない方がいい。
あまり食べたこともなくて、味の想像もつかない方がいい。
失敗すると凹むから、そんなに難しくない方がいい。

そこで、ビーフストロガノフだ。だいたいのひとが、作るの、はじめてでしょ?
大丈夫、名前が長くていいにくいけど、作り方はむずかしくない。だいたい、カレーだ。ほら、できそうな気がするでしょう?

玉ねぎを細切りにして炒める、できればバターで。そのあと塩コショウした牛肉を加えて炒める。
パプリカを一口大にして加える。色がついているピーマンだよ、わかるでしょ?
そこに小麦粉をおおさじ1杯くらい加えて炒めたら、トマト缶を入れる。
ぐつぐつしたら火を弱めて、シイタケかマッシュルームを加え、生クリームを入れてなじませたら出来上がり。

初めて作るから何度もレシピを確認するし、ちゃんとできるかどうか不安だからずっとフライパンをみているし、料理にぐうっと集中できる。

ほら、必死で作っている間、悲しいことを忘れていたでしょう?
しかも、目の前にはごはんまでできているよ。
だいじょうぶ、あなたもおいしくて温かいものをたべて、おなかから満たして。
あ、ビーフストロガノフ作りなれている料理の達人には、効果半分くらいかも?ごめん。


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