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『夢日記』という新しいジャンルをつくった【島尾さん・横尾さん・河合さん】


横尾忠則さんの記事を今朝の新聞で目にしたら、肌寒くてもうすぐ雨になる予報にスンとしていた気持ちが晴れた。

新刊の案内<創作の秘宝日記>だったのだけど、

「僕にとって夢も現実の一部として、無視できない要素です。自己は顕在意識と無意識の統合で成立していると思いますので、両者を併置することで自らの思考や行動を確認しています。夢を記述することで、日常にシンクロニシティ(共時性)が起こる。つまり事物の発生は偶然ではなく、全て必然によって起こることが自覚できます」

そのシンクロニシティこそが「創造の核」だと日記で明かしている。1498日分の日記をまとめたものだそうです。


夢日記を書いた本というので、思い出すのは

島尾敏雄 「夢日記」河出書房新社 1978

他人の夢なんて聞いても面白くないですよね。(私は面白いんですけど)
一般的には、面白くもなんともない興味がない聞いてどうするという反応らしいです。実際、周りのものに思わず言ってしまった時のリアクションは、はあ、そう。で、終わります。

たとえばこれが、好きな人が

「昨日こんな夢みたんだよ」なんて優しく言われたら楽しいかもしれません。

私は出てこなかったの?とか欲がでるかもしれないです。

島尾さんは好きな作家で、顔も好きでファンだったから「夢日記」も楽しく読んだのかと思いきやそういうことではないです。小説とは全く違う1つのジャンルかというくらい、その世界は妖しく不可思議で、確証はないけれどもこれはフィクションではなくて本当に眠っている時に見た夢だとわかる、私が眠っている時に見る夢の中でいるところのノンフィクションだと気持ちが良かったんです。

時に、小説の中には睡眠時の夢が使われていることがあるけれど、どうなんでしょう?ほとんどフィクションのような気がします。必要だからそれをそこに使うのだろうけれど、その部分だけウソっぽく感じてしまうことが残念です。


そして

横尾忠則 「私の夢日記」角川書店 1979

も昔に読みました。

すでに手元にはないので、中に書いてあったのかどこか他のインタビューで言われていたのか記憶にないですが、

「島尾さんの”夢日記”が出たときは、ああ先にやられた!と思いました」

という本当に残念そうな一文をとても印象深く覚えています。ニュアンスは違うかもしれないけれど時代の先端をいっていたアーティスト、新しいことまだ誰も発表していないものを世界に提出する使命を持った人の発言だと感じたのだと思います。

読んだ印象は、島尾さんは作家のものがたりとして。横尾さんは画家のものがたりとして熱量は同じにあるけれども空気に触れた時の温度が違う、酸化焼成と還元焼成、青い炎と赤い炎。夢の話は言葉にするとうまくいかないです。


夢日記をつけることは危ないと、言われることもあるけれど、それは特に夢のリアル感を持っていない人が誰かにすすめられたりしてする場合だと思います。そうすると、夢は顕在意識ではない”潜在意識、無意識”というかもっと奥の”集合意識”とか”源”の方にストンと行けてしまうので、そちらで起きたことをそっちのこととしないで目覚めている方に持ち帰ってくる。わざわざ。必要ないのに。そうするとそちらの方が重いので引っぱられてしまい不具合が生じるのだと思います。

自分にとって必要のないことはしない方が安全ですね。

無意識の概念を持ちだして言葉にして体系化したのは、フロイトだと言われています。そしてユング。日本では河合隼雄さん!

その名著と言われる

河合隼雄 「明恵 夢を生きる」 京都松柏社 1987

河合さんは言わずと知れた心理学者で、学術書などは超むずかしくて読めないけれど一般向きの著作も多く、すごい人ほど簡易な表現もすばらしくわかりやすくひきこまれて何冊も読みました。明恵上人のお名前が時に出てきて読んでみたく調べたりしたのだけれどその都度断念したのは、時期尚早だったのだと思います。明恵上人を全く知らないので、そちらを先に読んで知ってからと思ったまま年月が過ぎてしまい今日まで。

生涯にわたり自分の夢を記録しつづけた名僧、明恵の『夢記』をもとに夢と自己実現の関係が書かれているそう。夢分析の大家が実証的に説く
<人間の真相に迫る名著>

との説明を何十年かぶりに目にしたら、やっぱりたまらなく読みたくなったので、むずかしくてわからなくてもいいやと今、ポチっとお買い物しました。

河合隼雄さんも大好きな方で、ファンですね。

友だちが、コンサートに行って熱を上げているのをうらやましく思っていたけれど、そして私も誰かの熱烈ファンになりたいなーと思ったりもするけれど(彼女、彼らがとてもいきいきとして楽しそうなので)私にも熱烈ファンがたくさんいることに今気がつきました。

良かったぁ












横尾忠則「私の夢日記」角川書店 1988

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