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ショートエッセー 「ヘンリーアフリカ」

 六本木のバー "ヘンリーアフリカ "、1970年代から80年代、冷戦からデタント(緊張緩和)にかけて、ここはまさ日本を拠点に活動する東西スパイの社交場であった。

 赤坂 (アメリカ大使館)、狸穴(ソビエト大使館)、麻布(フランス大使館)、広尾(西ドイツ大使館)の各国大使館付武官の肩書きを持った諜報員達が各々腹に一物秘めながら、表面上は飽くまでも和やかに酒を酌み交わす光景は、スパイ天国 日本を象徴する光景だった。

 フレデリック•フォーサイスに触発され、複雑に国益が絡み合う国際関係の小説を執筆すべくヘンリーアフリカに通い詰めたのは大学生だった1978年頃。様々な人との出会いがあった。

 そこで学んだこと、それはこの世は正義と悪という単純な二元論で成り立っているわけではないということ。昨日の敵は今日の友、今日の友は明日の敵、清濁合わせ呑む柔軟性こそが諜報員にとって最も重要な資質であり、適応できない者は命を落とすか自らが崩壊するか、そのいずれかの末路が待っている。

 この世に真実など存在しない、あるのは解釈だけ。

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