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カーコラム「全日本ラリー選手権栗駒山アルペンラリー'85 神岡Zとスタリオン軍団の衝撃」

 1985年、その年、全日本ラリー選手権は揺れていた。

 AE86の牙城であったCクラスに、日産Z31型フェアレディ300ZXターボと三菱A183A型スタリオンGSR-Ⅴが参戦、そのあり余るパワーでシリーズ戦を席捲しつつあったからだ。

 Zはワンカーエントリーながら、NISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)直系のワークスマシン。

 ドライバーは、かの "神岡ターン" でその名を轟かす神岡政夫であった。

神岡

 対するスタリオンはタスカ・エンジニアリングで製作されたアドバンカラーの3台がエントリー。

 ドライバーは、山内伸弥、大庭誠介、羽豆宏一のADVAN三羽ガラス。

 国内トップクラスのスポーティーカーの参戦に全国のラリーファンは狂喜し、ライバル達は恐怖におののいた。

 何しろ主力であったAE86に搭載された直列4気筒DOHC1.6リッターの4A-GEUエンジンの最高出力が130ps(グロス)、それに対しZ31型Zに搭載されたV型6気筒SOHC3リッターのVG30ETエンジンの最高出力は230ps(グロス)。A183A型スタリオンに搭載されたシリウスDASHI3×2エンジンは、2リッターSOHCながら吸気2、排気1の3バルブと日本初の可変バルブタイミング機構、電子制御可変過給圧ターボを採用などにより最高出力200ps(グロス)を搾り出す。

 スペックだけ比較してもAE86勢がの苦戦ぶりを窺い知ることが出来るだろう。特に動力性能がタイムに大きく影響する上りセクションでは全くと言って良いほど勝負、否、比較にもすらならなかった。

 岩手県栗駒山周辺の山岳路が戦いの舞台となった全日本ラリー選手権第9戦・栗駒山アルペンラリー'85。

 急勾配の上りロングSSにおいて、そのケタ違いの速さを目撃した。

 ゼッケン1番の神岡ZからスタートしたSS、くぐもったターボサウンドが麓から聞こえてきたかと思うと、その僅か数十秒後、目も眩むようなドライビングランプの光束が轟音を上げて通過、急勾配を一気に駆けあがると500メートルほど上方の左コーナーに矢のようなスピードで飛び込んで行った。

 その一分間隔でTD06タービンの唸り声とともに凄まじい土煙を上げながら山内、大庭、羽豆のスタリオン軍団が通過、神岡Zが消えた左コーナーへと矢のように吸い込まれていった。

 Z・スタリオン軍団の上位4台が通過した後、AE86勢トップの松本誠車が4AG-EUの快音を響かせてSSを駆け上がってきたが、その速さの違いは歴然だった。

 土煙の中、コーナー直前で一瞬鮮やかに煌めいたZとスタリオンのブレーキランプを今でも鮮明に憶えている。

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