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アトランダム私小説「椿ライン伝説1981」

 ドラマは椿ライン第14コーナーでおきた。橘のPF60ZZ-RにピタッとつかれたTE71レビンは、プレッシャーに負けコーナーの進入速度を誤った。

 椿ライン第14コーナー、間口は広いが、コーナー中盤からRが変わる、いわゆる複合コーナーである。しかも、変則的なRは2段階で変わる。このコーナーを制するには、唯一存在する最速ラインを針の穴に糸を通すように正確にトレースする超精密なドライビングテクニックが要求される。

 突っ込み過ぎたTE71は強めのパニックブレーキにより前輪をロックさせた。タイヤから白いスモークが上がり、縦方向、つまり制動側のグリップが一気に抜けてアンダーステア状態なったTE71は、コーナーイン側から大きく外側に膨らんだ。

 橘はその瞬間を逃さなかった。にやりと不敵な笑みを浮かべガラ空きになったイン側にPF60ZZ-Rのノーズをねじ込んだ。

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