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ごめんなさい... 実はそれ程好きじゃないんです...

もう長い間そんな風に生きてきたので、今更言えることでもないかも知れないが、実はそれ程好きではない…

何の話かって?...
いやいや、人間関係の話ではないんですよ。
食べ物の話です。

若い頃は海外に貧乏旅行したり、仕事も海外ドキュメンタリー取材とかも多かったので、大概のものは食べられる。
生きたアリの蜂蜜漬け... 丸焼き羊の目玉... 海腸と呼ばれる海洋性のミミズ... 生のワニ肉... 芋虫の乾煎り... 猿の... ま、この辺でやめておこう。

なので、嫌いで食べられれないものはほぼない。

こういったものは現地では結構ご馳走だったり、歓迎...いや大歓迎を意味していたりする。
明らかに「うわあ、ご馳走〜!」とか「おお...美味しそうだね〜ありがとう!」という反応を期待されている時には、「いや、僕はちょっとそれは苦手なんで...」とはその場の雰囲気から、なかなか言い出せない。

実は、私の場合、普段の日本の生活でも少なくない。
もちろん、家族は皆承知しているが、敢えて少し挙げてみる...


まずは『月見』... いや、蕎麦は大好きなんです。
かなり苦手なのは生卵の白身...
あのヌルヌル・スベスベ・トロトロとした食感が肌に合わないのだ。

学生の頃、友人が良かれと思って即席ラーメンの上に落としてくれた生卵...
仕事の先輩が立ち食い蕎麦屋で「ほら、若いんだから力つけとけ」と有無も言わさず、目の前のカゴに入った生卵を断るヒマもなく落としてくれる...

黄味が柔らかいのは平気だが、白身は食べられはするものの、何とも調子悪い。
温泉卵については、意味がわからない。

熱々のご飯の上に高級卵を落とされて「この卵美味しいのよ〜、そのまま食べてみて〜」とか言われると、『ひゃ〜、せめてよくかき混ぜてからかけたかったなあ〜』と心で泣いている。
そして...
「ほんとだ!普通の卵と全然違いますね〜」
「そうでしょう...ふふふ...」
みたいな流れになるのだ。

なので「月見にしてあげようか?」と言われると、今でもドキッとしてしまう...


次は『カキ』... 牡蠣です。
カキフライは全く問題はない。
焼き牡蠣も好んでは食べないが、大丈夫。
牡蠣鍋は...まあ、話は合わせられる。
生牡蠣... 食べられるが、出来れば避けたい。

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これには多分私のトラウマが関係している。
小さな頃、牡蠣は結構好物だった。

ある日、近所の夜店の金魚すくいで元気そうな黒い出目金を二匹ゲットしてきた。
金魚鉢を出してもらい、餌をあげて暫く飼っていた...
が、そこはズボラな子供のこと、すっかり飽きてしまって、何日かほっぽらかしてしまったのだ。
ある日、金魚鉢を見ると...黒い出目金は二匹とも既に死んで水面に浮かんでおり、体色も腐敗して少し灰色化し始めていた。
その後ろめたさと、悲惨な亡骸の様子を牡蠣を見ると思い出してしまうのだ。
以来、暫くの間、牡蠣は全く食べられなくなってしまった。

ということで、大人になってから大分克服はしたものの、実はそれ程ご馳走とは思えないのだ。
『牡蠣=ご馳走』の場面は実に多い。
冬の牡蠣鍋パーティー、夏の高級岩牡蠣...
ボストンやアカプルコでは山のように生牡蠣をご馳走になったこともあるし、
先日のパリ旅行で招待されたパーティーのオードブルも生牡蠣だった。
久しぶりに集まった昔の仲間、その席が牡蠣専門店だったこともある。

パーティー

そんな時には、とてもじゃないが「僕はちょっと牡蠣はそれ程好きじゃないんで...」とは言えない...


次は... 『魚の刺身』...
いや、決して嫌いなわけではない。
美味しい刺身の意味も分かる。
マグロ、ヒラメ、タイ、ハマチ... 新鮮で繊細に下ごしらえされた切り身を少し頂くのは嬉しいし、美味しい。寿司も大好きだ。
ただ、魚の刺身を沢山食べる意味がよく分からないのだ。

刺身

ちなみに貝類や軟体類の刺身であれば、全く問題ない。
だから魚の刺身はそれ程好きではないのかも知れない...

家内の実家は九州... 九州は格別に魚が美味しい。
たまに訪れると、義母が夕食の席に美味しそうな刺身を沢山揃えてくれる。
いや、有難い...
「クニハルさん、これ、美味しかけん、遠慮せんでもっと食べなっせ」
「ええ...はい... 」

別に遠慮しているわけではない。
ちょっと摘ませていただいたら、もうそれで充分なのだ...

数年前だったか、流石にこれは伝えておいた方がいいだろうと決心し、
「あの、僕、それ程お刺身って好きじゃないんですよね...」
と、伝えたが...
運悪く、その頃には義母は少し認知症が始まっており、以降何度言っても、すっかり忘れられ、訪問する度に相変わらず大量のお刺身が用意され、それは今も続いている...


さて、最後のテーマは... 『イカ』。
新鮮なイカ刺しは、全く問題ない。好きです。
お寿司のイカも大好き。
お祭りの焼きイカも大丈夫。

ただ、イカを煮た時のイカ臭さが...ちょっとねえ...

いか焚き物


いかめし... イカ好きの方は好きですが、私は敢えて近づかない感じ...
イカワタの風味... これがよく分からない...
イカスミ... 食べられるけど、周囲が言うほど美味しいとは思えない...口の中が黒くなるし...
イカの..塩辛... 全く理解できない... 頑張れば食べられる程度...

母は無類のイカ好きだったし、兄も父も大好きだった。
だから、ずっと話を合わせて育ってきた...
長く生きていると、イカづくしの席に導かれることもある。
そんな時はやっぱり...「イカはあんまり...」とは言えないですよね〜


他にもあるかもしれない...
でも、今は思いつきません。

ちなみに、絶対に食べられないものはただ1つ!
『このわた』です。
ナマコの内臓の塩辛...
もちろん何度か食べたことはありますが、全く理解出来ませんでした...


『え?そうだったの?』と思わせてしまった方々へ...

ごめんなさい... 実はそれ程好きじゃないんです...


おいしいエッセイにはイラストレーターのTAIZO Condovic氏のイラストを使用させて頂いています。
Profile 作品紹介は...
https://i.fileweb.jp/taizodelasmith/






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