見出し画像

かりんのかんづめ 〜目指したい大人か否か〜




 北海道の中でもど田舎で育った私は、いつの日かドラマの中に出て来る、大学というものにほのかな憧れを抱いていた。
 学生たちがオシャレな姿で佇むあの、平面ではなく階段型のように席が並ぶ講義室。

 これぞ大学LIFE!!

 大学入学が出来て、憧れの階段型の広すぎるほどに広いあの中で、授業を受けた時には
「これ、これ!お父さんお母さんありがとう!」と感動を覚えた。 

 教職をとるための講義をたくさん受けており、講義「教育学概論」などは確か学校祭実行委員でお世話になっていた仲の良いT教授が教えてくれたのを覚えている。
 T教授は学生思いで、人柄も良く、卒業後も教え子の結婚式によく呼ばれている人だった。


 三回生くらいの頃、前期、後期と単位をもらうためのテストとレポートを乗り越えるのは辛く、大変だった。前期の全てのテスト・レポート提出を終え、心も体も疲れMAXでやっと解放され、いつもの日常を取り戻したかな・・という時期に、その事件は起こった。

 確か、家庭科教員免許をとるための講義で成績を決めるのはレポート提出となっていた。

 その担当教授に、なぜか呼び出しを受けた。
女性教員だったかと思う。もうすでに、白髪が見えはじめてお婆様への階段を登るか抗うかの年代だったのではないかと思う。(大学生の時代に感じたものなので、実際はもっと若かったのかも知れない)
 呼び出される理由が、何一つ浮かばなかったので、のほほんとした気持ちで教授の部屋をノックした。 

 ここで、私は一生忘れる事のない出来事に出くわす。 

「ああ、かりんさんね。あなた、今回のレポートについてなのだけど」
 令和の大学生は、どのようにレポート提出するのか分からないけど、私の時代はパソコンで打ったものを印刷して提出する人がほとんどだった。
 この時も自分のノートパソコンで書き終わらせ、USBに保存したものを大学のパソコンに繋いで印刷し、提出した。

 先生は言った。
「レポートで、最近の方はインターネットに出ている文章をコピーして、貼り付けしたものを出す方がいると聞いています」
 私は先生の言いたい事を、すぐには要領を得なかった。

 あぁ、そう言う方法もあるよなぁ。
でも、それだと、自分の思った言葉じゃないし、書きたい事と違いが出るだろうし、何より自分の書いたものじゃないから、納得出来なくて提出する気にならないよな。

と思いながら話を聞いていた。

 すると、その教授は・・・いやその女性は少し含み笑いをしてこちらを見た。
「あなたのこの文章は、あなたが書いたものですか?」

 え?

「ネットから持ってきたものではないですか?だって、ここの右顧左眄、付和雷同なんて言葉はあなたが思い浮かんで書いたものではないですよね?」

 はい?

 つまり、その方はあなたのようにおつむの
弱い学生がこんな言葉を使えるわけないと思います。ネットから引用して貼り付けてますよね?
 と言っていた。

 耳を疑った。この先生と話をした事など、ほとんどないのに。
 何より、その程度の四文字熟語は、高校生の頃に覚えたものなのに。純粋に自分の努力で書いた学生のレポートを疑ってくるなんて。
 いやいや、学生を信用しないのも酷いけど、証拠がどこにもないのに、憶測だけで言われるなんて。

 この頃の純粋な20歳のわたしには、そんな風に考える余地はなかった。
『そんな事が出来るずるい人間じゃないのに。この先生は、私の事をそんな風に見ていたなんて』
 とショック過ぎて、何も言えなかった。
それはまるで痴漢に遭い、声が出せないかのように体が震え、心に大きく傷がついた状態で。

「もういいわ。成績はつけますけど、今後はこんな事しないように」

 そう言われ、目の前が真っ暗なまま、何も言い返せずに先生の部屋を出ていた。
 びっくりして、ショックで誰にも言えなかった。今思うと、どうして友人に言わなかったんだろう、仲の良い教授にチクれば良かったのに(笑)

 今なら、「先生、右顧左眄や付和雷同はそこまで難しい言葉ですか?」って言い返すのに。
そんでそんで、「この程度のもの、漢字検定受けてたら高校時代に学びますよ。先生にはこれが難しいと感じたんですか?また、学生の権利として事務局か学長に証拠もないのに憶測で決めつけられて心に傷を負ったと訴えても良いですか?」
 って早口で言い返すのになぁ。

最後に
「あなたのような先生は、目指したくありません」
 って言うのに!!

 今日、ここに書いた事で、この長年の心の中のもやもやは成仏させられます!!
 聞いてくれてありがとーーーう!(アリーナに向かって言うくらい感謝)


 ちなみに、今、目指している人は、所さんと徹子さんを足して2で割ったような素敵自由人!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?