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純ジャパな従姉妹とグローバル人材とアサーティブ・コミュニケーション【元外交官のグローバルキャリア】

日本の人は自己主張が苦手とされる。出る杭は打たれる。長いものには巻かれろ。空気を読め。奥ゆかしく謙虚たれ。それが日本人らしい日本人だ。

かたやアサーティブ コミュニケーションassertive communicationは注目される自己主張手法だ。相手の立場を推しはかり、こちらの意思を伝えて物事を動かすスキルで、グローバル人材育成には欠かせない。日本ではまだ新しい概念とされている。

交渉ごとやアサーションassertionを得意とする私は、太平洋を跨いでの転校や転勤を多く経験している。アサーティブコミュニケーションが得意なのは、グローバル人材だからなのだろうか。



日本生まれ女子校育ち

自分とは対象的な生立ちのアラフォーの従姉妹がいる。生まれも育ちも東京で、両親共に地元出身というサラブレッドの東京出身の純ジャパだ。小学校から大学まで、女子大学附属の一貫教育を受けている。海外留学経験はない。転職活動することもなく、新卒で入社した会社にずっと勤めている。

その一回り以上年下の従姉妹に先日奢ってもらった。なぜなら彼女はアサーションを使って、瓢箪から駒の如く課長職に昇進したからだ。

エクセルの魔術師

従姉妹は会社でオフィスツールを駆使し、すでに10年前から「エクセルの魔術師」を名乗っていた。フォトショップもパワポもお手のもので、どんどん仕事の範囲を広げている。会社のECサイトも立ち上げて管理し、部門間の調整もするオールマイティ社員だった。

自己犠牲を厭わない、精一杯周りの期待に応える献身的な日本女性を想像して欲しい。

それとは真逆だ。

この、普通に綺麗なお姉さんは、とんがっているわけでも変わり者でもない。押しが特に強くもなく、ひたすら要領が良い普通の日本人だ。

Z世代でもないのに、社内で会社での滞在時間最短を達成したらしい。遅刻も早退もなしに、誰よりも遅く出社して最も早く帰ったデータが出てきたそうだ。日本の会社員は周りを気にして早く出社したり、皆に合わせて遅く帰宅するのではなかったのか。

人事部に申し立て

アサーションという言葉を彼女が知っているかは知らない。

従姉妹は、アラ還の課長が仕事を覚えようとしないのにしびれを切らして人事部に対処を求めた。相談した人事の担当の「仕事をしない人なんて社内にいくらでもいる」と言われ憤慨してアサーションを発揮した。人事の部門長にレベルを上げて、改めて問題提起したそうだ。

会社側のガバナンス

その課長の文句はしばらく前から一緒にご飯を食べながら聞いていた。従姉妹が上司である部長になだめてもらいながら、彼の仕事を引き受け、課長に仕事を教えていることも。教えても教えても覚える気がないことも。
「課長に厳しくて部長に甘くないか?」茶々を入れながらこちらもただ話を聞いていた。
「課長の処遇の問題提起して何か得なことあるの?自分が昇進目指す方が建設的じゃない?代わりに課長やれば?」くらいは、カウンターに並んで言った気がする。

そう思ったのは私だけでなく、従姉妹が勤務するオーナー会社も同じだった。人事の調査と面談を経て、課長は降格になり、従姉妹が課長になった。「ちょっと気まずい」と言っていたが、覆水盆に返らず。前進あるのみだ。

グローバル人材なんのその

従姉妹の昇進の話は、「生産性が低い日本のホワイトカラー」、「昇進を望まない女性社員」、「旧態依然とした年功序列の日本の会社」のどれにもあてはまらない。
その会社は歩数管理による健康維持活動、テレワーク導入、生産性を上げた取組を申請すると金一封進呈、リスキリング、とグッドプラクティスだらけの勤め先だ。誰もが知っている大会社ではない、先進気鋭で取り上げられることもない、普通の日本の会社だ。

従姉妹の働き方や、勤め先のあり方を聞いていると、報道から知り得ない、私の知らないグローバルでない世界を学ぶ。社員のエンゲージメントが充実しているうまく回っている普通の会社である。カタカナ用語を使ってグローバル人材に答えを求めるばかりじゃなく新卒入社の生え抜きが変化を起こした。

ひょっとして私が彼女の行動に何ら影響を与えたのかしらん、と思いきや従姉妹が見習ったのは後輩の姿だった。おかしい事をおかしいと主張した若い社員の申し入れが元で支店長が交代したそうだ。誰がどこで誰にアサーティブな影響を与えているかわからない。

リスキリングで英語を学習中

今従姉妹はリスキリングの一貫で英語も学んでいる。英語を学ぶ事は大切だ。でもその前に目の前の仕事をオフィスツールで業務効率化を図り、組織の問題をアサーションで変えたことを頼もしく思う。英語や留学だけに答えはない。性格と言ったらそれまでだが、今度どうしてそういう働き方をする様になったかを従姉妹に改めて聞いてみたい。

従姉妹から「自分の事がいつ出てくるか楽しみにしている。」と言われて筆を取った。事実誤認があろうと解釈の通りに書いて良い、という承諾を得ている。したがって、詳細は事実と違うかもしれない。

これで課長な従姉妹にまた奢ってもらう理由が出来た。

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