D進の際に気を付けておくといいと思うこと

D進の前に見とくべき場所

以前の「博士後期課程とは?」
の最後で言っていたD進するにあたって気を付けたほうがいいことについて自分が進学して思うことを長々と書いていこうかと思います(笑)

“・研究室の雰囲気
・指導教員との関係性/指導教員の人格
・研究することの好き嫌い
・孤独と戦う覚悟
・金銭的なお話”

https://note.com/embed/notes/n203d1fea7a9e

とりあえず、前回紹介した5つのものから「なぜ?」を自分の経験や人から聞いた体験談などを交えて書いていこうと思います。

研究室の雰囲気

研究室の雰囲気はD進する以前にそもそも研究室を選ぶ際にも重要な要素の一つだと思っています。
コロナの時だったので多少はしょうがないかなと思うのですが、感染対策のために、個人の机ごとに透明ではない仕切りで完全に仕切られてしまっていて、河合塾とかの自習室を彷彿させるような周りと隔離されてしまっているような研究室も見かけたことがあります。
そう言う研究室では、所属している学生もみんな覇気のない目で静かに作業しているところを見たときに、率直に楽しくなさそうって感じました。

もちろん、そういう雰囲気が好きな方もいらっしゃると思います。
ただ、自分としては研究はいくら一人で考えても進まない時があると思います。そういう時こそ周りと話し合ってみたり、ささいな雑談を交えることで気分転換を図ったりなど研究室の雰囲気が重要となるタイミングも多いです。
そのため,なるべく研究室内がわいわいと活動している方が気分的に楽な状態で研究に臨めると思います。

指導教員との関係性/指導教員の人格

研究室選びの最も重要と言ってもいいであろう「指導教員との相性」
正直、めちゃくちゃ大きな研究室であっても、研究室の雰囲気が最高であっても指導教員との相性が悪ければそれは一瞬で自分にとって最悪な研究室に成り下がります。

自分は運良く先生がかなりの人格者だったため、あまり指導教員との相性で苦労することなく、今まで研究生活を送ってこれたのですが、大学の学部や博士前期課程の時代の知り合いに色々聞くと、やはり指導教員との相性で苦労した人も多くいました。これまで聞いたことのある相性が悪い例だと

  • 放任主義で何も教えてもらえない

  • ブラックすぎて、深夜にも関わらず作業してる

  • セクハラがひどい

  • 自分の研究にしか興味がない

  • 必ず提案を否定されてしまう

  • etc.

などが挙げられます。もちろん、これだけではなく、もっと色々な理由や相性が悪く思えてしまう場合もあるでしょう。
そのため、研究室選びにおける指導教員との相性はかなり重要な要素の一つなのです!それがD進ならば尚更!

ただ、ここで勘違いしてはいけないのは、相性が100%の指導教員がいると思ってしまうことです。
自分の持論にはなってしまうのですが、人間関係において相性100%は存在しないと思っています。彼氏/彼女、親友、友達、家族、知り合いなど人間関係には様々な種類が存在していますが、「その誰かのやることなすことの全てに同意でき、かつ相手からも自分の言動全てに対して同意されると胸を張って言えるか?」と聞かれたら、自分は絶対にできません。
さらに、大学における指導教員はほぼ100%の確率でどこかしら変わっています。そりゃ日本のアカデミアという世界で「教授」の肩書きを持てるのはごく僅かであり、既にその肩書きを持ち合わせているということは頭のネジが1本や2本飛んでないと無理だからです。
そのため、研究室における指導教員との相性はどこまで自分が譲歩できるかによって決めるべきです!

実際自分の研究室も比較的ブラックと呼ばれてもしょうがないような場所です。遅い時は夜の22時から先生とミーティングを行ったり、研究室に土日に行っても人がいたりなど、時間数だけで見ればとんでもなかったりします。
ただ、そのような研究室でも実は自分の大学ではかなり人気な研究室になります。それは、指導教員の先生がとても人格者だからです。学生のことを第一とまではいかなくても、しっかりと学生の出した成果は論文として学生を主著者として投稿していますし、学生をしっかり卒業させようとしてくれますし、内部や外部からの競争的資金をいろいろと獲得しながら研究に不自由ない環境を学生に提供してくれています。
「そんなことあたりまえじゃないの?」と思うかもしれませんが、実は当り前ではないんです。上述しましたが、日本のアカデミアにおける准教授や教授などはエリート中のエリートの競争を勝ち抜いてきてる人です。そのためはっきり言ってしまうと変人が多いです。それなので、ものすごく研究に対してプライドが高かったり、反対に研究以外の優先事項が著しく低く考えている人もいます。
そのため、研究室選びやD進をする際には当たり前のことを当たり前と思ってくれる環境づくりをしてくれる指導教員選びが重要になってきます。

研究することへの好き嫌い

研究することへの好き嫌いはD進において、研究のどこまでを「楽しい」「好き」と感じれるかによって向き・不向きがあると思います。ただ、これは研究の定義が人によって違うと思うからです。自分が思う研究とは

自分が思いついた仮説を実験や解析などを通して検証すること

だと思っています。学部・修士(博士前期)まで行っている研究はその仮説の立証・棄却は正直修了要件にあまり影響を与えません。実際仮説が立証された際も、棄却された際も新たな知見であることに代わりはないので。
しかし、博士後期課程ではその仮説によってジャーナルが書けるかが修了要件に大きく関わってきます。
なぜなら、多くのジャーナル誌では未だ仮説が棄却されたようなネガティヴな結果だと採択されないからです。
(具体的には以下のTED talkやその下のURLをご覧いただければと思うのですが、なぜか今のアカデミアの世界では否定的な結果は論文になりにくい傾向があります。)

https://www.ted.com/talks/ben_goldacre_what_doctors_don_t_know_about_the_drugs_they_prescribe/transcript

となると、研究の好き嫌いだけでは済まない問題が出てきます。それは研究者自身のモチベーションです。誰だろうと何回もの挑戦の結果が全敗だとやる気に多少なりとの影響が出ます。自分も一時期は試す仮説が全部否定的な結果どころか、博士後期課程の研究内容そのものを揺るがしてしまうような結果が出たときはさすがに参りました。(後ほど別手法を試すことによって何とか、研究内容の変更をせずに済みましたが...(笑))
ただ、実際それで参ってしまうのはどんな人間だろうとあり得ます。
そこで、「研究」が好きなだけでは挫折してしまう人も多いと思います。(単純に研究者自身の鈍感さ故かもしれませんが(笑))
反対に「研究」を楽しいと思える人はそこからの回復も早いイメージがあります。そのため、単純に「研究」が好きだからD進したいは一瞬立ち止まって考えてみてもいいかもしれません。

孤独と戦う覚悟

D進で自分が一番わかっててもつらいと思うのが「孤独感」です。
博士後期課程に進学する人は決して多くありません。文科省が出している資料によれば平成30年時点で修士課程(博士前期課程)修了者のうちたったの9.3%しか博士後期課程に進学しません
この数字は同じ研究室に10人の同級生がいたとしても、一人しか進学しないということです。それなのに、同じ研究室に10人もの同級生が所属することはほとんどありません。そのため、博士後期課程に進学するということはほとんどの場合一つの研究室につき一人の形となってしまい、同級生という人がいなくなってしまいます。

文科省が出している分野別の博士後期課程進学率(https://www.mext.go.jp/content/1423020_012.pdf)

大体の研究室は基本気を遣わずに話をできる相手というのが修士課程(博士前期課程)まではいます。ただ、博士後期課程になると、気を遣うか、気を遣われるかしかほとんどの場合ありません。学外での知り合いなどは学会などを通して手に入れられても、なかなか学内で博士後期課程に進学してから気を遣わないレベルまで仲良くなれるような知り合いを見つけるのは難しいです。
食事やちょっとした休憩時間に気を遣わずに話せる相手がいない状況というのは最初は大丈夫でも、ずっと続くと案外寂しさだったり孤独感というのを強く突き付けられます
しかし、これに関しては対策したり、避けることはほぼできません。そのため、D進する場合は常に寂しさだったり孤独感と戦う覚悟を決めておきましょう(笑)。

金銭的なお話

D進といったら絶対に付きまとうのが金銭的事情。学費や生活費といったものをどうやって工面するのか?
博士後期課程の学生の金銭的事情にはおおまかに2種類存在します。

  • 外部からの博士支援事業などからファンドを受ける場合

    • 民間貸与奨学金

    • 民間給付奨学金

    • RA、TA、研究員などの雇用

    • 日本学術振興会特別研究員(DC1,DC2)

    • 国際卓越研究大学

    • JST次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)

    • 科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業

    • etc.

  • 親族から協力を受ける場合

自分がD進する際にいろいろ調べたものもありますが、「D進すると苦しい生活を強いられる」や「D進はDC取れなきゃ意味がない」などといった情報は昔の話になってきています。
現在、多くの民間財団や国側の政策として博士後期課程の学生の支援事業を行ってくれています。
自分が当時の特任助教に教えてもらった以下のツイートではメジャーな博士の支援事業の詳細についてまとめられています。

https://twitter.com/kn1cht/status/1492731918126772231?s=12
https://kn1cht.github.io/doctor-funding-calendar/

これらは主に国立機関や全国的な募集を行っている大きな財団などでまとめられていますが、意外と県や地方単位で募集をかけている財団もあったりするので、それらは自分の所属している大学の学生掲示板や奨学金の情報を見逃さずに、そこから調べてみると案外博士支援事業があったりします。
これらのファンドや支援を受けることで、多くの博士学生は金銭を工面しています。

現在、自分はありがたいことにJSTの次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)に採択いただいており、かつ企業と大学の研究員を兼任することで新卒社会人のボーナスなしくらいのお金をいただいて生活していますが、この詳細についてはまた今度書いてみたいと思います。

まとめ

D進や研究室選びの際に気を付けておくべきことや決めておいたほうがいい覚悟などを自分なりに紹介してみました。
ただ、正直かなり自分の感想も入っているので、これだけの情報を頼りにはせずにあくまで一つの意見として見ていただければ幸いです。

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