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⑦はじめての説明会はカルチャーショックまつり/その2

自己PRタイムで、近くにいた女子学生がカバンからおもむろに取り出したのは、歴史絵巻などに出てきそうな巻物。

無言で勢いよく広げられたその紙は、何かの書道の大会ですごい賞を受賞した作品とのことだった。
まず、そこに戸惑った私。

…わざわざ家からここまで持ってきたわけ?大変だっただろうに。
ていうか、そうやって持っていると、裁判の「勝訴・敗訴」みたいだよ!?

さらに、別の女子学生のカバンからは手品グッズが取り出され、手にしたハンカチの中から出てきたのはカラフルな造花。

…生きた鳩じゃなくて本当によかった。

半開きの口のまま彼ら彼女らに心の中でツッコミを入れつつ、ここまでしないと採用は勝ち取れないのだろうかと弱気になっていたその時、同じグループの男子学生がPRする番になり、迫力ある巻き舌で外国語のオペラを歌い始めたのだった。

もうだめだ私。
こんな中でPRすることなんてないよ…。何しに来たんだろう。
もし採用されても、こういう人達と仕事するの無理じゃね!?

太く通った優雅な声が響き渡る中、私は逃げ出したい気持ちすら湧いてきた。

そして別の男子学生は、空手の型か何かを披露していた。

もはやこのスペースは説明会や選考の会場ではなく、ちょっとした祭りの場と化しておりカオスであった。

他の学生達の「わたくしはっ!」「頑張りますっ!」「リーダーですっ!」「潤滑油ですっ!」などの初々しい意欲と過剰とも言えそうな熱意、自己顕示欲とは違うけど何かそういったものに近い熱風をもろに浴びたうえ、自己PRのクセの強さに圧倒されすぎて、心に勝手に大ダメージを受けてこの日は終わった。

もちろん自分がどのようなPRをしたのかは一切記憶になく、次の面接に呼ばれることは予想通りなかった。
そりゃそうだよなと思うだけだった。

先述の「祭り」を盛り上げた学生達は、その後どうなったのだろう。
1人くらいはこの会社に採用されたのだろうか。

正解や模範となるものは分からなかったが、自己PRとは何かということをものすごく考えさせられる機会となった。

そして、就職活動は色々な意味で大変なのだとこの時に改めて痛感させられたのだった。

こんな世界に飛び込むなんてムリ!ムリムリ!と思っても、後戻りはもうできない。

何はともあれ、就活は「準備や自己分析・見せ方伝え方が大事」なのだということを身をもって知ったのだった。


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