見出し画像

島崎鶏二・作「花束」」との出会い〜かがみの近代美術館にて〜

かがみの近代美術館は、岡山県北部、鳥取県との県境に位置する鏡野町に2018年に開設された私設美術館です。

開設者である館長の辻本髙廣さんは、奈良県在住の、いわゆる、サラリーマン・コレクターで、給与をやりくりしながらアート・コレクションをされていました。ですから果敢に収集に挑むも、資金力がないために、オークションではことごとく敗れ去っていたとのことでした。
そんな経験のなかで、辻本館長は、競争がない独自の分野、生態学的な概念でいえば「ニッチ」を求めて、夭折の画家の作品収集に邁進されてきました。

そのユニークなコレクションを一般に公開するために、築100年を越える養蚕農家の母屋を再生して「かがみの近代美術館」をオープンされました。

辻本館長によれば、競争の少ない分野で収集を続けていると、よく不思議な出会いを経験するそうです。作品の方からやって来たり、出会いを待っていてくれるのだとか。

辻本館長は、とても話好きでオープンなお人柄の方で、館内の撮影は自由です。
画像は、島崎鶏二よる小品「花束」の展示風景です。

島崎鶏二「花束」

紙にインクで描かれた小作品で、力まず、集中して描かれた、清らかで愛らしい素描です。辻本館長が発見したときは、廉価で売りに出ていたのだそうです。

島崎鶏二(1907~1944)は、文豪、島崎藤村の二男に産まれ、画業を志しフランスに留学し、二科会を中心に活躍し、将来を嘱望されていました。しかし、戦時下に軍に招集され、インドネシアのボルネオ島で殉職します。搭乗していた飛行艇が着水に失敗し、他の搭乗員は生存したのですが、荷物を下ろそう立ち上がっていた鶏二は、不運にも亡くなってしまいました。

そんな惜しまれる人材の形見が、ここに安住していて、筆者は、辻本館長が遭遇した不思議な出会いのご相伴に与ることができました。人生の「朱印」をひとつ得た心持ちです。

旭川の河口を岡山後楽園へと渡る鶴見橋のたもとにあるカフェモヤウ(cafe moyau)は、漁師の道具置き場であった倉庫を再生してオープンしたカフェです。

お店のオープンキッチンでは、若いスタッフが、岡山地産の食材にこだわり、いつも誠実な仕事をしています。ですから夏の短い期間だけ、それも運よく良質な白桃が入荷したときだけ、岡山特産の白桃のパフェをいただくことができます。

2022年7月31日、筆者がたまたま立ち寄ったときに、運良く白桃のパフェに巡り会えました。

白桃とミルクティーパンナコッタのパフェ
すももジャムと、すもものしゃりしゃりアイスが入って、洗練された色彩となっている。
(2022年7月31日)

食材の方が出会いを待っていてくれていたかのようで、その季節感にあふれた、瑞々しいチャーミングな彩りの逸品は、筆者にとっての「花束」との出会いでした。お味は、いわずもがなです。

追伸
今年の花束です!今年は特に暑いので、花束は色彩が涼しげにアレンジされています。

2023年7月22日


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?