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京都銀閣寺前の喫茶ゴスペルで名器パラゴンを聴く

京都銀閣寺前の喫茶店、ゴスペルGOSPELは、神戸の異人館に憧れた元オーナーによる、こだわりの個人邸宅でした。1)

ゴスペル(京都市左京区)

現在は、親族の方が邸宅の2階に喫茶ゴスペルを開業し、元オーナーが遺した夢の遺産を公開しています。

ゴスペルの喫茶スペースは、板張りの床のゆったりとした広い空間で、英国製のアンティーク家具が設えられています。元オーナーが数千枚に及ぶレコードコレクションを聴き入っていたヴィンテージスピーカー、パラゴンもそのまま置かれています。

店内のレコードコレクションと、フロアに置かれたパラゴン

パラゴンは、米国のJBLが製造したホーン形式の左右一体型のスピーカーで、高度な技をもつ木工職人によって一台一台手作りされました。最終的に1000台しか製造されなかったので、世界的に稀少な存在です。そんな名器がここにあって、常時聴くことができるのです。

入店してさっそくパラゴンの正面にあるテーブル席を確保します。洋梨のタルトと珈琲セットをオーダーし、リスニング態勢を整えます。

洋梨のタルトとコーヒーセット

かかっていたのは、ジャズのピアノ曲でした。再生音は、想像していた壮大な音響空間ではなくて、ロウソクの明かりのような、やわらかなグラデーションのある、小さな世界を浮かび上がらせています。

CDプレーヤーによる再生音は、里山の風情です。小川のせせらぎが耳から入って後頭部から抜け、いっしょに山から初秋の風も運んでくる感じです。

音源をレコードに換えてもらうと、ストリームは、山の谷間の源流になります。森の養分を含んだ石清水が上半身を潤してくれる感じです。ルイス・C・ティファニーによるステンドグラス、「鹿の谷」が思い出されました。

そして何よりも感激だったのは、筆者がゴスペルの空間を満喫するのを、お店のマダムがとても喜んでくれたことです。それは、最上のおもてなしでした。

心身共に潤って、お店を出て、残暑が残る京都の町を、白川通へ向かいました。

文献
1)川口葉子・著:京都・大阪・神戸の喫茶店. 実業の日本社, 2015, P36-39

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