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西脇一弘さんのイラスト〜Please Smile, Because you get a smile.~に魅せられて

2022年6月8日~6月30日まで、岡山市北区天神町のカフェ、城下公会堂において、西脇一弘 イラスト展「一緒に何処かへ」が開催されています。

筆者は、お店の展示コーナーで意味深長な一枚のイラストに出会い、惹きつけられました。

西脇一弘・作 2022年 筆者蔵

それは、遊興パーティに出席しているであろう装いの女性が、硬い表情で鏡を見て、頬を赤らめて、ハッとしています。鏡には、にっこり笑っている女性が映っています。イラストには、「 Please Smile, Because you get a smile. 」とメッセージが添えられています。

この奥深いメッセージを秘めたイラストの解読には、英語の基本動詞を「力と方向」で分類している西村喜久1)の説を参考にしてみました。

私たちは学校で、get の意味を「得る」と習いました。
英語の「得る」の世界は、力と方向によって細分化されています。get は「他から与えられて得る」という意味になります。例えば、手紙は、相手が差し出してくれないと受け取れないので、「手紙を受け取る」は、get a letter になります。ですから、get a smile とは、「(他者から微笑みを受け取って)にっこり笑う」というニュアンスになるでしょうか。

西村によれば、have は既に得ている世界なので、have a smile とは、既に微笑んでいる世界です。しかし、新たに他者から微笑みが加わらない寂しい世界でもあります。

take は、「能動的に動いて主語の方に加える」という意味なので、take a chance とは、「(努力して積極的に)チャンスをものにする」という意味になります。もしも、take a smile という言葉があったなら、「微笑みを獲りに行く」、というニュアンスになるので、獲るのが「爆笑」ならあり得ますが、微笑みのような繊細な心情には、ちょっと合わない感じです。

make は「ゼロから準備して新しいものや状況を作る」という意味です。したがって、make a smile とは、「微笑みを湛えられる状況になるように、じっくりと準備して取り組む」というニュアンスになります(あるいは、意図的に口角を上げる世界でしょうか)。微笑みのように、薄いシルクのベールのような優美な感情には、makeの世界は少し強すぎる感じです。

やはり、smile には、get の世界が一番合っています。smile とは、あなたが微笑むと私も微笑み、私が微笑むとあなたも微笑む、その逆にもなってしまう、あなたと私が響き合う世界なんですね。あなたというのは、目の前の他者だけでなく、私の中で対話するもう一人の私も含まれます。西脇さんは、そんな、自分だけではどうにもできない、複雑かつ微妙な気持ちのやりとりの世界をこのイラストで表現しているのではないか、と感心しました。

文献
1)西村喜久・著:英会話のための7つの動詞の発想法. ベレ出版. 2001. P20-136


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