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アーティスト、田沢千草さんによる生命の表現

岡山市庭瀬の小さな公園で、揚羽蝶のつがいと出会いました。

2頭の蝶は、激しく恋のダンスを舞っていて、夢のような幻影的な情景でした。
そのとき、カメラの眼と異なり、筆者の目には、2頭の蝶の熱情のみが見えました。

芸術家、清宮質文(せいみや・なおぶみ 1917-1991)は、油絵から版画に移行することで、技法上の制限によって、自分の表現したいものの核心を抽出しようとしました1)。そうして、自分の精神的世界をつくろうとします。

画像は、木版画「蝶」です。

清宮質文・作「蝶」版画 1963年 2)

藍色の空間に青い壜が置かれ、その上を2頭の蝶が浮遊しています。抽出された、かすかな光の印象が、清澄な、瑞々しい生命感を与えます。

次の2点の作品は、アーティスト田沢千草さんによる、蜜蝋を用いた表現です。

田沢千草・作「bring the light-灯す-1」2022年 筆者蔵
田沢千草・作「bring the light-灯す-2」2022年 筆者蔵

蜜蝋が絵の具をはじくことによって、線や塗りは作家の思い通りにはなりません。それによって未知なる力の存在を浮かび上がらせます。

作品に寄せて、田沢さんは次のように語っています。
(インスタグラム chigusatazawa 2022年8月)

5回の脱皮を繰り返す蝶。
脱皮の際には消化管や複雑に入り組んだ
気管の内側の皮膚も脱ぎ捨てるそうです。
トランスフォーム。

無意識下で動く肉体が
想像を超える力を宿しているのは
私たち人間も同じで
思考よりも身体に身を任せたら
空も飛べるかも、しれないです。



1)岡田隆彦:暮れ残る光、その無限の放射ー清宮質文の版画. in 清宮質文・著 青木康彦・矢田堀良子・編集:清宮質文作品集. 南天子画廊発行, 1986, P10-18
2)清宮質文・著 青木康彦・矢田堀良子・編集:清宮質文作品集. 南天子画廊発行, 1986, 1986, P26


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