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フォロワー127万人「北欧、暮らしの道具店」のInstagram運用 9年間のあゆみ

2014年にスタートした「北欧、暮らしの道具店」のInstagramアカウント。9年間で何人ものスタッフが運用のバトンを繋ぎ、大切に育てた結果、2023年4月には、フォロワー数127万人を達成しました。

「北欧、暮らしの道具店」のInstagramアカウント

現在運用を担当しているのは、MDグループの5〜6名のスタッフたち。MDグループは、商品の仕入れから在庫管理まで、幅広くお店づくりを担うチームですが、実は、Instagram運用も担当しているのです。アカウントの開設から現在まで、どうやってアカウントを育ててきたのか、MDグループのバイヤーでInstagram担当の石谷(いしたに)に、これまでの変遷を聞いてみました。

Instagramを運用するMDグループのスタッフたち。写真右が石谷です

クラシコムのSNS運用体制

これまでの道のりを振り返る前に、なぜMDグループがInstagramの運用をおこなっているのか、ご説明したいと思います。実は、クラシコムにはSNS専任の運用チームがありません。

MDグループがInstagram、カスタマーサービスがTwitter、コンテンツ開発チームがYouTube…というように、各チームが業務のかたわらで運用を担当しています。

「北欧、暮らしの道具店」のトップページの更新を担当しているのも、MDグループ。日頃からお客さまの代わりに想像を巡らせて、商品がどんなふうに暮らしを変えてくれるのか、それが伝わる写真や文章はどんなものかを考える機会が多くあります。そうして磨かれた感性を、Instagramの投稿づくりに生かしているのです。

グロース会議で行われる共有と意思決定

このような運用体制のため、クラシコムでは、月1回の「グロース会議」で各部署が担当しているチャネル運用の知見を共有しています。

各チャネル担当者から定量数値の分析や施策を通じた気づきを報告しあい、みっちりと話し合う結果、会議が1時間半を超えることも。代表の青木も店長・佐藤も参加しているので、意思決定もすばやく、この場で新しい仮説が浮かんできたり、次の施策が決まることもあります。

基本姿勢は「小さくはじめてみる」

2018年、クラシコムに入社した石谷。SNS運用はまったくの未経験でしたが、入社まもなくしてInstagramの運用をまかされました。あーでもないこーでもないと、試行錯誤を重ねるうちに、担当をはじめて5年でフォロワー数は70万人から127万人へと、大きく成長しました。

「Instagramのアルゴリズムは、中に王さまがいるようなイメージなんです。ちょっと前は洋服が好きだったけど、今の気分はレシピかな...みたいに、王さまの気まぐれに振り回されてしまうことも、Instagramあるあるです(笑)。それでもめげずに、じゃあこっちはどうですか? こちらもありますよ、と新しい提案をどんどんしながら、ここまできました」(石谷)

リール映像の制作風景。2022年に都内の民家をリノベーションしたスタジオができました。

これまでnoteでご紹介してきた『青葉家のテーブル』の企画も、私たちの広報活動も、まずは小さくはじめるところからスタートしました。失敗したらすぐにやめよう。ただし、いける!となったら、アクセルを一気に踏み込む。

こうしたクラシコムらしい考え方で、Instagramも小さな工夫をこつこつと積み上げてきました。

Instagram 9年間のあゆみ

2014年 お客さまと小さな発見を共有するために、アカウントを開設

2014年2月、Instagramの日本語アカウントが開設され、少しずつ盛り上がりを見せはじめた頃。当店で買ってくださった商品の写真を「 #北欧暮らしの道具店 」のハッシュタグをつけて共有してくださるお客さまが、たくさんいらっしゃることを知りました。

暮らしの中でみつけた小さな発見や日常の風景をお客さまと共有できたら...という思いで、同年5月に「北欧、暮らしの道具店」の公式アカウントを開設。当時のInstagramは、ストーリーなどでリンクのURLを貼ることもできなかったので、私たちのアカウントを、お客さまがどのように楽しんでくださるのか、手探りの部分もありました。

手探りの状態から、スタートしました

それでもまずは試してみよう、と気軽にはじめてみるのが、クラシコムらしいところ。しばらく運用してみると、Instagramをきっかけに商品を購入してくださるお客さまが増えているとわかり、本格的な運用へと踏み切ることになりました。

2015年 画像投稿の制限を逆手にとった「4コマレシピ」でフォロワー増加

Instagramを本格的に運用しはじめた頃、大ヒットした工夫のひとつが「4コマレシピ」でした。当時のInstagramは、1枚しか写真を投稿できない仕様。1枚の画像の中で、どうしたらもっとお客さまに楽しんでいただけるだろうかと考え、試しに1枚の画像の中に4コママンガのように写真を並べて、レシピを紹介してみたのです。

2018年 IGTV時代 YouTubeで公開したオリジナル番組を流してみると...

石谷が運用を引き継いだのはこの頃。フォロワーが70万人から伸び悩んでいる時期でした。あれこれ試してみるものの、なかなか思うように結果が出ない日々が続きました。そんな中、クラシコムでは初のドラマ『青葉家のテーブル』を制作。YouTubeだけでなく、試しに登場したばかりの長尺動画投稿機能「IGTV」で15分ほどの本編を流してみたところ、フォロワーがみるみるうちに増えていきました。

 そのあとも、オリジナルドキュメンタリー番組『うんともすんとも日和』や『Morning Routine わたしの朝習慣』など、YouTubeで公開した動画を、続々と流してみました。この頃、レジェンド級の大ヒットとなった動画が、2020年冬に投稿したタサン志麻さんのグラタンレシピ。1投稿で、フォロワー獲得1000人超えに......!

今は動画だ!とわかり、企業のマーケティング支援を行っているBRAND SOLUTIONのお取り組みで制作した動画も流してみたところ、オリジナル番組と同様にたくさんのお客さまにご覧いただく結果となりました。このあとも、次々と動画を流してみると、同様の結果を得られることがわかり、BRAND SOLUTIONと動画やInstagramの相性がとてもよいことを実感していきました。

 2019年 投稿数爆上げ時代 1日4回→8回に増やしてみたら意外な結果に


この頃まで、1日4回の通常投稿をしていましたが、グロース会議で8回に増やしてみることになりました。商品をご紹介する機会が増えた分、売上は伸びましたが、1日あたりの「フォロワー離脱数」も増えてしまい、このままお客さまが離れてしまうのではないか...と不安になった石谷。

そこで、代表・青木に、かくかくしかじかで不安があると相談してみたところ「みんなが全ての投稿を見ようとしているわけじゃないから、まずは試してみよう。ダメなら戻せばいいよ」と返ってきました。青木や佐藤のちょっとした一言が、スタッフの背中をぽんっと押すのも、クラシコムあるあるです。

青木の一言に「あぁそっか!」と、気持ちが軽くなった石谷。Instagramのタイムラインは、時系列ではないし、続けて投稿をしたところで、ずらーっと表示されるわけではありません。投稿数が理由でフォローをやめる人の数は意外と多くはないのかも...と仮説を立てました。

そうして1日8投稿を続けてみたところ、1カ月での「フォロワー獲得数」は前月の2倍に増加。投稿数を増やすことで、より多くのお客さまに「北欧、暮らしの道具店」のアカウントに気づいていただけるとわかり、現在も1日6〜8の投稿を続けています。

2020年 レシピ投稿時代 お客さまが今必要とされていることに応える

2020年のはじめは、コロナの流行とリモートワークが増えたことにより、Instagramの注目度もぐっと高まりました。スタッフ間でも「毎日昼ごはんのレシピを考えるのが大変になってきたよね...」なんて料理にまつわる悩みを話す機会が増えました。

そしてついに、緊急事態宣言が発令。それまでも、商品以外のコンテンツを投稿してきましたが、今こそレシピが必要なはずだ! と考え、この期間は毎日レシピを投稿してみることを決断しました。すると、これまでのお客さまはもちろん「北欧、暮らしの道具店」を知らなかった、新しいお客さまからも、たくさんの反響をいただきました。

さらに毎日投稿を続けてみると、投稿のタイミングが重要だと気がつきました。たとえば、平日の夜にごちそう料理をご紹介しても「今からつくるのは無理だよ〜」と諦めてしまいますが、おつまみのレシピなら「わかっているなぁ」と嬉しくなります。お客さまが今求めていることに応え続けた結果、フォロワー数もぐんぐん伸びていきました。

2020年 リール動画時代 バイヤーの声でリアルな商品解説をお届けしてみる

はじめの頃、Instagramのリール動画は『青葉家のテーブル』の予告編など既にある動画素材を流していました。たくさんの方が見てくださったので、今度はMD内でリール用の動画をつくれないかと試しに撮ってみましたが、なかなか満足いくクオリティにはならず...。

そうしてあれこれ試しているうちに、TikTokはリアルな声や解説、Instagramのリールはきれいな世界観...のように、それぞれのプラットフォームの違いが、少しずつ見えてくるようになりました。

「そういう違いがあったとしても、やっぱり私は、きれいな写真だけじゃなくて、商品の使い心地などリアルな声も知りたい。商品を仕入れるかどうかを検討するときの会話のように、バイヤー同士の普段のおしゃべりをそのまま動画にすれば、商品の魅力をもっとリアルな形で伝えられるんじゃないか?」石谷はそう考えました。

そこで店長・佐藤に相談してみることに。「北欧、暮らしの道具店」の世界観とはちょっと違うかも...なんて不安もありましたが、佐藤の返事は「おもしろそうだね!やってみようよ」と、やっぱり背中を押してくれる一言でした。2022年8月、クラシコムの新スタジオでMDグループだけで撮影から編集まで行い、さっそく投稿してみました。こうしてできたシリーズが「バイヤーズセレクション」です。

 動画の再生数は、通常1動画あたり15〜20万再生のところ、33万再生まで伸び、石谷と同じようにリアルな声を知りたいお客さまがたくさんいらっしゃることに気がつく結果となりました。

それから何回か投稿を続けてみると、リールでご紹介する商品にも相性があることがわかりました。生活雑貨がお客さまの購入に繋がりやすいという結果を受け、BRAND SOLUTIONの「エマール」のお取り組みでリール用の動画を新たに作成し、3回投稿してみたところ、1動画あたり30万再生を超える好反応を得ることができました。

2023年 Live時代 リアルタイムでお客さまの疑問を解消するための工夫を模索中


2018年、まだ登場したばかりのInstagram Liveを試してみたところ、フォロワーがどんどん減ってしまう悲しいできごとがありました。その頃と比べると、見てくださるお客さまが増えているかも...と考え、2023年1月に、20分ほどの配信を試しに行ったところ、仮説どおりたくさんの方にご視聴いただき、ご紹介した商品の売上もぐんと伸びました。

過去の4回の配信でわかったことは、お客さまは購入を検討している商品の気になるポイントを知りたくて見てくださっているということ。

「Instagram Liveで洋服のような高価格帯の商品がたくさん売れるのは、じっくりと時間をかけてご説明ができるし、お客さまの疑問にリアルタイムでお応えできるからかもしれません。私たちも、Liveを通して、お客さまってこういうところに疑問を持っていたんだ、 こういうところをお伝えすれば喜んでくださるのか! ということが分かって嬉しかったです」と石谷は話します。

わざわざご質問をいただかなくても、配信の中で気になるポイントにお答えできるよう、見せ方も工夫するようになりました。

たとえば、1回目の配信で、登場したスタッフの身長や着用サイズに関する質問が多くよせられたので、2回目以降の配信では、壁に身長とサイズを大きく掲示するようにしました。 Liveでのお客さまとの会話を通じて、どういうかたちで商品をご紹介するのがベストだろう?お客さまにもっと楽しんでもらうにはどうしたらいいのだろう? そんなことを考えながら、今もこつこつと小さく試しているところです。

ぱっと見で分かるよう、壁にモデルのスタッフの身長と服のサイズを掲示

Instagram運用で大切にしていること

最後に、Instagramを運用する上で大切にしていることについて、石谷に聞いてみました。

「まずは、限られた時間のなかで一番効果が出る方法は何か、総合的に判断すること。たとえば、3年前に比べると写真投稿のリーチ数が伸びづらくなってきたので、最近よく見かける文字入りの写真を投稿してみることにしました。結果、たくさんのお客さまに届いたのですが、編集に時間がかかるようになってしまったのです。こういうとき、同じ時間をかけるなら、通常の写真を4回投稿するほうがいいよね と総合的に判断するのが大事かな、と思っています」

文字入り投稿にトライした例

「それから、小さくはじめるけれども、結果がわかるまでは、強い気持ちで続けること。今までのどの取り組みも、まずは私やまわりのスタッフで小さくはじめてみて、結果が見えてきたら本格的に運用するようにしてきました。

たとえば、1日の投稿数を8回に増やしたときも、スタッフをいきなり増やすことはしませんでした。中途半端にやめてしまったら結果がわからないままなので、まずは結果が見えるところまで絶対に続けるぞ!という、強い気持ちで続けてみたのです。小さな挑戦の先に何を知りたいのか、仮説を立てた上で続けてみる。成功したら大きく広げるのが、Instagramの運用全体を通じて大切なことかもしれません」

ドキュメンタリー番組『北欧、暮らしの道具店をつくる人』石谷の仕事に密着した回
「北欧、暮らしの道具店」のスタッフをご紹介するYouTubeのドキュメンタリーシリーズが公開されました。動画では、Instagramの運用を含めて、石谷の普段の仕事の様子をご覧いただけます。

MDグループのInstagram運用担当の仕事に密着した記事はこちら。ここでは紹介しきれなかった仕事の裏側についても話しています。また、今回Instagramの運用についてお話してくれた石谷の所属するMDグループマネージャーの竹内、MD担当スタッフの山根、店長・佐藤による鼎談記事が公開されました。こちらでは、バイヤーとしてのお仕事について、詳しくご紹介しています。ぜひ、ご興味のある方はご覧いただけますと嬉しいです。 記事はこちら

また、クラシコムの「BRAND SOLUTION」では、リールをはじめ動画コンテンツによるソリューションもご提案しています。ご興味のある方は、こちらのページをご覧ください。


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