見出し画像

肉は肉屋で

今住んでいる場所(転勤先)に来て大きく変わったことに、食材そのものが美味しくなったということがあります。

前回2年住んでいた東京では、食材の買い出しはスーパーと商店街がメイン。あと生協でも少し届けていただいていました。それで不自由は感じていなかったし、独身の頃は有機野菜の宅配も利用していたので、こだわりたい部分は取り寄せれば問題ないという認識でした。

でもね、ここに住んで採れたての野菜の美味しさを知ってしまったら、もう、スーパーの野菜には戻れなくなりました。それに遠くから運んでいただく間にちょっぴり萎びた有機野菜より、採れたて瑞々しい直売所の野菜の方が美味しい。

そして最も美味しいのは、おじいちゃんおばあちゃんが畑で作っている、自分達で食べる用野菜のお裾分け。長年の経験からいとも簡単に育てているように見える野菜達は、本当に生き生きしていています。「自慢出来るのは農薬使ってないことだけ」「趣味だから」と謙遜するその野菜の美味しさは、もう異次元なんです。

そして今日書いておきたいのは、お肉のこと。
ここに住んで、肉屋さんというものを利用するようになりました。

昔から「肉屋さんの肉は美味しいんだろうな~」と思ってはいたものの、高いんじゃないだろうか?とか、さらりと注文するには初心者の私には何やらハードルが高そう・・に感じていて、入らず嫌いでした。

だけどここでは皆さん「肉は○○さんとこで買う」「一度も冷凍してない肉だから美味しい」「牛は○○さん、鶏肉は○○さんが一番」「ステーキは○○さんでしか買わない」と肉屋さん推しが凄い!養豚場の豚肉屋さんまであります。躊躇いより興味の方が上回ったある日、夫と二人で肉屋さんのドアを開けました。


「初めてなんですが、どんなお肉がおすすめですか?」

今思えばなんてざっくり、いや「そもそも何が欲しいんや!」と苦笑いしたくなるような私の言葉に、

「作りたいものとかあれば言ってください。豚カツとか、野菜と炒めたいとか!」と笑顔で返してくれたのは、想像していたよりずっと若い、スリムなご主人でした。

お値段は心配していたほどではなくて、むしろスーパーより安い!もちろん、良いお肉は高い値がついていますけど、全てが相応の値段です。何より美味しいので、すっかり虜になってしまいました。
スーパーの肉との違いが最も大きいのは、挽き肉でしょうか。麻婆豆腐なんて挽き肉を炒めてる時点で、香りでご飯イケちゃいそうにクラクラする。。同じ調理法なのに、「今まで食べた麻婆豆腐の中で一番美味い!」と自画自賛の味になりました。餃子も肉肉しい美味しさです。



今ではすっかり常連で、その日に必要な分だけ買いに行くようになりました。冷凍すると味が落ちることも舌で理解できたのと、冷凍する手間もいらないので、自然とその習慣に。感覚としては、ちょっと離れた場所にお肉専用の冷蔵庫があって、プロが毎日完璧な状態に管理までしてくれていて、そこからお肉を出してきて料理する感じ。

家から10分弱の道のりを、歩いて行くのも好きです。狭い路地、並ぶ古民家、玄関先で腰掛けているおじいちゃんとの一言二言の挨拶、どこからか漂ってくる煮物の匂い、包丁のトントンという音。流行りとは別世界で、私にとっては満たされる散歩道。

三代続くお肉屋さんは、昔懐かしい職住一体のつくりです。お店の奥に一段高くなった部屋が続いていて、ダイニングテーブルや食器棚が見えています。幼い頃身近にあった商店を思い出す、大好きな景色。お昼時には家族皆で食卓を囲んでいらっしゃるのも、いいなぁと温かい気持ちになります。

それに、後を継いでいる息子さんは、仕事が好きで誇りをもって店に立っているのが伝わってくるんです。ご家族も同様に。それも通いたくなる理由の一つです。

あと、行くまで気が付かなかった利点があって、それはゴミが減ること!
紙(防水)で包み、紐で結んでくれるので、トレーゴミが出ません。安い小間切れ肉などはビニール袋に入れて口をクルッと結んでくれます。プロだなぁと唸ってしまうのが、紐でもビニール袋でも、ほどけてしまわない絶妙な加減で優しく結ばれていて、指で引くとスッとほどけてくれるんです。肉を出すのにノーストレスで、紙やビニール袋はゴミとして嵩張らない。その楽さは意外な喜びでした。

ハードルを感じていた注文も、いまではすっかり慣れています。
「今日は牛ミンチ100gお願いします!」
「トンテキ作りたいので、良い感じの厚さで三枚ください。」
筋を切ってくれたり、唐揚げ用なら適当な大きさにカットしてくれたり、そんなところも嬉しい。あと、他のお店はわかりませんが、カットしたお肉はあまり並んでいなくて、注文を聞いて塊から切り出してくれることも多いです。豚バラ薄めでとか。
必要な時に必要な分だけ切るからこそ、より美味しいのかも。
揚げ物も作り置きはしておらず、注文後にカットして豚カツやチキンカツ等揚げてくれます。揚げたては家に帰ってもまだアツアツで美味しい。今日は楽したいから買っちゃおうというより、○○さんとこの揚げ物食べよう!という楽しみで買うようになりました。


そんな今、美味しい食材が日常にあることに豊かさを感じます。
独身の頃、接待で有名店に連れて行ってもらったり、高級弁当を喜んでいた日々より、
地味な手料理でも三食美味しい!という満足の、日々の積み重ね。その差は私にとって大きいと感じるようになりました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?