大草原の小さな家感想録 ~シーズン2 22話 「竜巻き」~

大草原の小さな家 をDVDで観返しており、その感想の備忘録です。内容についてのネタバレ大いにあり。

シーズン2、最終話です。
またも脚本、マイケル・ランドン。この人には何か人を惹きつける能力でもあるのだろうか。
(いい話とて聞きませんが、作品と人となりは別もの、ってことで)

突然の竜巻が襲来し、作物と家畜全てと家の一部をインガルス一家は失うことになりました。
シーズン2はほんとうに、金銭的な逆境がこの家族になんどもなんども降り注ぎ(思えば1話目からそうでした)、そのたびに奮起してなんとかぎりぎりのところでやってきたのですが。

とどめを刺されます。
チャールズは心を折られ、故郷のウィスコンシンに帰る決意を固め、土地建物を売り払う算段を固めます。

この決定から、インガルス一家と彼らを取り囲む人たちの人間模様が、突然動き出します。
一番惹きつけられたのは、エドワーズ家の長男ジョンと、インガルス家長女メアリーとの、淡い淡いラブロマンス。
うんわーーーーー。
ういういしい。
小メロや。耳すまや。カントリーロードやーーーー!

私は私自身のとある経験から、こういう子供の淡ーい恋物語にすごく弱いです。
それも、賢い感じの女の子と、たらしぎみのいけめんな男の子とのそれに弱い。メアリー可愛い。結婚しろよ。まじで。

そこへ。
インガルス家が売り出した土地を買いたいという老夫婦が現れます。
この老夫婦が、インガルス家を見守る目線が、とても柔らかくて温かいのです。

また。
本作では、まだ第1話の段階ではやんちゃで幼かっただけの「ローラ」の、人間的な成長も見過ごせません。
ローラが神父さんに、父親の傷心のことでお話を聞いて貰いに行った時の会話。これもまた印象的でした。
ローラが、父の内面を、「神様に対して怒っている」と表現したのは、成長というか、かなりの知性を感じます。
神に対する怒りと絶望は、それを信仰する者にとって一度は通る道であろうからです。信仰そのものを疑う気持ちは、人間の弱さと不可分であり、神への冒涜はそのまま、自分自身の心の腐敗であります。
ただ。
そう頭では分かっていても、インガルス家にとっては、今度の試練はあまりにも大きすぎるものではありました。
さて。それに対し、神父の、
「どんないい人でも災難には遭う。その代わりに、逆境を乗り越える力をくださるんだ」
という説明も、実に過不足のない答えだと思います。
そういえば、このような信仰のお話は、シーズン1の「ローラの祈り」にもありました。
あの時は「奇跡」でした。
死んだ者を生き返らせるような奇跡は起こらないが、生きている者たちの不断の努力によって、ちいさな時の運が連なって大きな奇跡になることはある。
あれはそんなお話でした。

老夫婦は、熟考の末、自分たちにとっても思い出の土地である、ウォールナットグローブのインガルス家の土地を、買わないという選択をします。
それも、チャールズがもう一度だけこの地でやり直したいと決意する、その直後のタイミングで。
これも一種の奇跡であり、シーズン1の「ローラの祈り」では、神の役割を担ったジョナサンは神とも取れるし人間とも取れる、彼の起こしたのは奇跡とも取れるし偶然とも取れる、という描き方でありましたが。
今回の老夫婦は、神の使いなどではなく、等身大の人間として描かれているのが面白い。
老夫婦が奇跡を起こすための神の使いでないことは、老夫婦自身が、ウォルナットグローブの土地を
「手に入れたいけど、手に入れたとしても少しも嬉しくないんだ」
という言葉として表されることで、視聴者にも伝わります。
彼らは神の使いとしてインガルス家を救う目的で来たわけではなく、ただただインガルス家の行く末を案じた末、自分たちの欲求を取り下げるという「優しきただの人間」でありました。
それだけに、彼らの慈愛に満ちた目と温かな判断に、我々は等身大の敬意と愛情を感じることができるわけです。
そして。
本作では、「ローラの祈り」とは違い。神は老夫婦の背後、その遙か遠くに、しかし確かな存在感を示しておられる。そのように受け取りました。

最後に。
老夫婦のうち、夫がローラに対して言った一言が好きだったので、それを書いて終わりたいと思います。

「神様は、いろんな人の願いを聞いて下さる。叶える叶えないは別として、その願いを聞いて怒る、ということはない。
ただ、その願いが、本心を隠し、自分の欲求をさも人への救済であるかのような顔をして発されるならば、神様はお怒りになられるだろう」

台詞自体はすっかり忘れてしまいましたが、意味はだいたい、そんなかんじです。

この、熟慮を要する、難しい老人の一言は。
ローラ自身の信仰心に、きっと今後良い影響を与えるだろう。
そんな予感がいたします。

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