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赤ちゃんの「協力者」としての振る舞い

NPO法人Collalble(コラブル)のくりのです。
Collableはインクルーシブデザインをキーワードに活動しています。

【 インクルーシブデザイン 】障害のある人や高齢者、小さなこどもなど、これまでデザインのメインターゲットにされてこなかった人々を、積極的にデザインプロセスに巻き込む手法です。

小学校で出張授業をしたり、企業の商品開発をご一緒したり、毎月19日はミートアップイベントを通じて、インクルーシブデザインの普及活動をしています。

そんなことをしていると「多様性」というキーワードが出てきます。
では「多様性」と言われたとき、あなたが最初に思い浮かべるのはどんなことですか?LGBT? 女性の地位向上? 障害者福祉?そんなキーワードでしょうか。

“多様性は大事”

社会的に「多様性」が求められてきていることはわかっている。わかってはいるけど、「自分と違いすぎる人」を理解すると言われてもどうしたらいいのかわからない。それにそんな人と接する機会もないし....

ということで、「自分と違いすぎる人」を理解するためのイベントを開きました!

今回スポットを当てたのは赤ちゃんです。何を言っているかわからないし、完全に理解することも難しいですよね。「自分と違いすぎる」けど、身近な存在である赤ちゃん。

そんな赤ちゃんと他者理解について、ワークショップデザイナーの臼井さんと一緒に考えてみました!

臼井隆志(うすい・たかし)ワークショップデザイナー。 1987年東京都生まれ。2011年慶應義塾大学総合政策学部卒業。 質的調査、ワークショップデザインの手法を用い、子ども・親子向け教育サービスの開発を行っている。

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今回のイベントは臼井さんのワークショップの事例を参考に、赤ちゃんとの関わりの特徴や、赤ちゃんの観察がなぜ面白いのか、そして赤ちゃんとの関わりは社会にどんな価値をもたらすのか…などなど、その赤ちゃんとの関わりの魅力について、幅広く探ってみました。

赤ちゃんを理解するうえで、キーワードになっていたのが「協力者」という言葉。

「主人公にとって壁となる人や物事とかがあって、それを乗り越えるために協力してくれる人が現れるっていう物語の構造があったとしたとき、その三者(主人公・壁・協力者)が交差することで物語が進んでいくというメタファー」だそうです。

「ぬいぐるみを触りたい」「机の上のペットボトルをとりたい」
赤ちゃんがなにかしらの目的を持って行動を起こしているとき、「協力者」として私たちはどんなことをすればよいのでしょうか。

臼井さんは「協力者になるための三つのポイント」を教えてくれました。

1. 赤ちゃんのまなざしをみる

赤ちゃんがいると「遊んであげる」というスタンスで関わる人もいると思います。このスタンスが苦手だからこそ「こどもとの接し方がわからない」という人もいます。

臼井さんは大人が「協力者として状況をつくること」を楽しむということが大切だと言います。

赤ちゃんの後ろに大人がいて、赤ちゃんが触りたいものがあったときに、大人が「それが触りたいんだな」って見てる。赤ちゃんがそういう目的を持っているということをわかりつつ、赤ちゃんが目的に向かっていける状況自体を自分が作る、ということ自体をこの人自体が楽しむと、すごい幸せな関係になるのかなと思っています。


ここで観察者は以下のような流れでステップアップしていきます。
・赤ちゃんを観察する
・赤ちゃんの体の中を想像すること
・このあと起きることを予測する

まずは赤ちゃんを観察して、「こんなことが好きなんだな」とその子の特性を掴みます。そのあとに「体をうまく動かせないな」「足に力が入っているな」など、赤ちゃんの体の中でなにが起きているかということを想像します。そして、この後起きることを予測します。

このまま探索を続けていくと危ないなとか、落っこちるから横にソファを置いておこうかなとか、予測してそれを避けたりしつつ、程よくポジティブに注目する。「ダメよ」とかではなく、「あ、今こういうことに興味があるんだね」と注目していく。

そういう人がそばにいると赤ちゃんは注目を期待するので、「見てる?」「見てるよ」みたいな関係性を作ると良い協力者になれるのではと考えています。

で、想像しながら、観察者って俯瞰できるので、予測することもできるんですよ。次こういうふうになるかもしれないとか。そんなふうにこの人の次の行動を作ってあげることもできちゃうという。

想像しながら、俯瞰しつつ、赤ちゃんの次の行動を予測する。そのために、まずはじっくり赤ちゃんの様子を観察して見ることが大切です。


2. 赤ちゃんの共感を得る

赤ちゃんを観察したあとは「赤ちゃんに観察される側」になってみます。

ここで赤ちゃんは以下のような流れでステップアップしていきます。
・「探索する自分(協力者)」や「完璧じゃない自分(協力者)」を見る
・赤ちゃんが協力者の目的を想像する
・赤ちゃんが協力者を助けようとする

赤ちゃんは完璧を求めているわけじゃなくて、「この人色々やろうとしているけど、まだできていないんだな」ってこともわかっていて、「(赤ちゃんが協力者を)ちょっと手伝ってあげようかな」って。

先ほど私たちが赤ちゃんを観察したときのように、今度は赤ちゃんが私たちの目的を想像するということが起きてきます。そのときに赤ちゃんは「完璧にその目的を達成すること」は求めてなく、「今はできていないんだな」ということもわかるそうです。そこで、うまく達成できていないと赤ちゃんが思ったとき、協力者を助けようとするということが起きてきます。

赤ちゃんをサポートするだけではなくて、自分自身も楽しみながら、自分が遊んでいるっていう状況をいかに背中で語るかという状況をうまく作れるといいなと思う。

「完璧な自分」を見せるのではなく、試行錯誤しながら遊んでいる姿を赤ちゃんに見せると思えれば、観察者自身も楽しめそうです。


3. 対立した時の立場

赤ちゃんが何人かいると物を取り合ったり、遊びを邪魔したりと、対立が起きます。

そんなとき協力者は以下のことができます。
・対立者の目的を把握する
・赤ちゃんに対立者の目的を伝える

赤ちゃんに対立者が現れたとき「あっち(対立者)はああいう目的を持っているらしいよ」って伝えることを続けるみたいな。「そうなんだ」がわかるのは3歳以上なんですけど、それを続けるみたいな。そのコンフリクトがなくなるまでじわじわやる。 対立する人はどんな目的を持っているのかということを言葉にしてシェアする。わかるというより、言っているということが大事。なんとなくはわかるんじゃないかなみたいな。

言葉の意味がわかるかどうかではなく、伝え続け、他の人との関係性をどう構築していくかを見守って見てください。

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今回は臼井さんから「協力者」としての接し方を教えてもらいました。
赤ちゃんとどう関わればよいのかわからない、赤ちゃんをどう観察すればよいのかわからない。そんな人はぜひ3つのポイントを実践してみてくださいね!

今回の記事の参考資料はこちら!↓


#インクルーシブデザイン #多様性 #NPO #赤ちゃん

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