アルバム発売に合わせて調整されていた出演を辞退する形となった「Venue101」の出演が無事実現された。
今回は、特設セットの前での「摩擦係数」のパフォーマンスとなったが、前日の「ミュージックステーション」に続く形になったことで、どうしても比べる形で鑑賞することになる。
どちらも甲乙付けがたい仕上がりであり、それぞれに魅力を放っている。
このレベルになると、善し悪しではなく、好き嫌いの違いでしかなくなることから、どちらがより素晴らしいとは言いにくい。

思い返せば、「摩擦係数」のMVが解禁された時、そのレベルアップ具合に衝撃を受けたものだが、音楽番組での楽曲披露を経て、さらなる進化に最早慣れてきている自分がいる。
どんなに衝撃的なことも、繰り返し体験することで、その刺激に慣れてしまうのは、世の常である。
そういった意味では、異なったパフォーマンスをしていくことが求められる「表現者アーティスト」の皆さんは、過酷な環境に身を置いていると言えるだろう。
櫻坂46の皆さんも、アーティストである限りは、この宿命から逃れることはできない。

「摩擦係数」のMVに衝撃を受けた自分も、すっかりパフォーマンスのインパクトに慣れていることに気づかされる。
結果、より優れたパフォーマンスを求めることとなり、それに応えなくてはいけない彼女たちには、相当な苦労を強いる形となるだろう。
歌手の世界では、生涯で「国民的」と呼べるレベルのものが一つでも世に出すことができれば、一生食うに困らないと言われているが、好みが多様化している現代においては、なかなか実現が難しくなってきている。
最近、特集が組まれることが多い「昭和歌謡」も、娯楽の中心がテレビやラジオであった頃に爆発的なヒットとなったものばかりである。
もちろん、歌唱力が高く、楽曲のレベルも今から見ても名曲ばかりであるため、その魅力は全く色褪せていないことも、その背景にある。
これらの楽曲に比肩するようなものを、これから出していけるかが、グループの将来を決めることになることは間違いない。
幸い、欅坂46時代には、その時代を象徴するような楽曲を世に出すことが出来た。
「サイレントマジョリティー」や「二人セゾン」、「不協和音」などは、今でも多くの人々に愛されている。

櫻坂46となってからは、そこまでの楽曲はまだ出せていないが、「摩擦係数」のパフォーマンスを観ていると、大いに期待せざるを得ない。
秋元グループの楽曲の中で、世界的なヒット曲といえば、「恋するフォーチュンクッキー」などがあげられるが、楽曲と時流が合えば、この曲のように長く世界で愛される楽曲が生まれることは夢ではないだろう。

このような名曲を自分たちに引きつけるコツは、兎にも角にも、真摯に楽曲に向き合い、その持てる魅力とメッセージを、どれだけ世間に伝えていくかを追求することでしか、実現することはできない。
櫻坂46は、そのライブやパフォーマンスはもちろん、制作期間の中でみせる情熱と迫力に定評がある。
これは、欅坂46時代に培われ、今なお、しっかりと継承され、日を追うごとに進化している部分である。
「表現する者」という自覚を全員が持ち、決して妥協しない彼女たちに触れることで、持てる力を十二分に発揮してくださるクリエイターの方々は後を絶たない。
「KEYAKIイズム」と言える、この姿勢が無くならない限り、彼女たちが必ずや世界を相手にパフォーマンスをするようになっていくことも、決して絵空事とは言えないだろう。

そのような未来の試金石とも言える今度の全国アリーナツアー。
それはもう、楽しみでしかない。