研究者のもやもや 

転職してよかったことの一つは,別の視点が加わることで自分の課題(もやもや)がより明確になることです(言語化)。自分が悩んでいることが何か,言語化してみようと思います。

それ研究じゃないよね問題

私が関わってきた分野は,素粒子実験と加速器ですが,この「研究」と切っても切り離せない問題が「設計」だと思います。

まず,素粒子実験と加速器開発の場合ですが,

これらの装置は電気回路の塊です。が,かなりの場合で最先端技術を使っていません。理由は簡単で実験の目指す測定精度や出力を得ることが目的であって電気回路を極めることではないからです。macbookやプレステの基板のほうが速度も速いし,集積度も高い場合が殆どではないでしょうか。

しかし,用途に合うように「設計」しなければなりませんし,メーカーの設計部門に丸投げできるようなお金はありません。結果的にかなりの研究者が,研究開発という名の「設計」に励むことになります。幸いなことに,「○○実験のための読み出し回路の開発」などという名目で学会発表や論文執筆は可能です。

これの何がモヤモヤするかというと,少し俯瞰した立場の人から言わせると「研究でない」とみなされるからです。

例えば,前の職場(加速器研究)では,ビーム出力増強と高精度化のための電力変換器(パワエレ機器)をやっていましたが,その職場にあったすべてのパワエレ機器のうちで,ネットワーク経由で制御が変更できるのは,メーカー製も含めて私が制御(ソフト&ハード)設計をした機器だけでした。

だけど「そんなものは設計すればできるでしょ?」と言われてしまう。「いや,できないから今までなかったんだろ」「お前やってみろよ」となります。

パワエレ研究 お前もか

転職後パワエレ研究をやるようになると,パワエレ分野でも同じ問題を抱えているように思えていました。

私は加速器の電源では,汎用のPWMコンバータ・インバータを使っていました。それを「設計だろ」といわれるのは仕方がないと思います。実際,メーカーでも研究開発部門の力を借りることは少ないでしょう。

パワエレ専門になると,DCDCコンバータをなるべくソフトスイッチングでやるみたいな設計が出てきますが,これが意外と難しく研究開発よりの仕事になりがちです。実際,奥が深くて面白いです。

したがって,パワエレ専門職の求人は結構あります。簡単に設計できないですから。一方で「これから何が大事か?」というテクノロジーを俯瞰した議論になかなかパワエレは挙がってきません。「課題はパワエレではない」という人もいますし。

図星だという意味も含めて「イラっ」としてしまいます。


つまり

つまり,私のもやもやは,現在過去において,

「業界において重要な仕事をこなしている。しかし,表舞台からはいつも外れている。」

ということにつきます。

確かに重要なことをやっているというのは,周囲からは理解されます。したがって,組織の評価はむしろ高いのです。

でも,なんだかなー。

私は,純粋に研究者を目指してきたというよりは,芸能人やスポーツ選手になれそうにないと思ったのと,勉強ができたので,消去法的に研究の道に来ましたからね。

もう少し活躍したいですね。これから。

そこでどうするか

転職した先の分野でも同じ問題を抱えているってことは,これって僕だけの悩みではないってことだと思います。

まだ,ここまで。


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