備忘録:ミュージカル 『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』9月30日マチネ

 公演回数が少ないためか、私が観劇した回は毎公演が千秋楽のようなテンションでした。演者も観客も。
 千秋楽公演は、演者のテンションが上がり切っていて、コップ一杯の水が表面張力でギリギリ溢れずにいるような緊張感があります。29日ソワレがちょっとそんな感じで、ヒヤリとする場面もあって、(そんな中で平常心の方もいらして、流石)本当の千秋楽はどうなってしまうのか? ちょっぴり心配していました。
 蓋を開けてみたら、充実していながら浮き足だったところのない素晴らしい東京千秋楽でした。
 
 そして私は、すっかり再演版のファンになりました。(ウサは復活して欲しいけど!)
 今回、一番大きな変更はレイのキャラクター造形。
 初演の兄貴感溢れるレイが好きだったので、最初はケンシロウと同年代で、なんなら幼なじみ感のあるレイに少し違和感がありました。でも演者の個性ともあいまって、別のレイとして有りだなと思うように。
 初演のレイが、ケンシロウに後を託しながらも、自分の死で苦しんで欲しくないという包容力の固まりの笑顔(特に上原レイが!)で死んでいくのに対して、三浦レイはケンシロウの前で生への執着を隠さずもがきます。マミヤとの別れは、初演レイが妹以上恋人未満で、自分の苦痛や死を絶対にマミヤの負担にさせたくない男だったところを、三浦レイは恋愛感情は薄目でした。種もみパーティーでも感じたけれど、今回のレイとマミヤは年齢差があまりなくて、恋愛未満でなく仲間、友人という感じなのかな。新しく生まれたレイと追いはぎのシーンも、泥をすすって生きる感じが今回のレイの設定には合っていて、必要なのだと思うようになりました。私、たぶん兄貴レイに夢見ているんですね。
 
 さて私は黒王号&拳王ダンサーズのファンなのですが、今回も輝いていましたね! 初演配信の際のコメンタリーで、当初は黒馬号が出る予定ではなかったと聞きましたが、そんな世界は想像できません。黒王号の存在感よ。ラオウと相思相愛感が出ているのが、また良いのです。
 拳王ダンサーズの中でシンが踊ると、ラオウも含め周囲の衣装(甲冑)が黒なので、白い服で赤いマントの彼は、バックダンサーを従えたアイドルで、人の目を奪います。植原、上田両氏のファンの目にはシン&背景に観えているんだろうなあ。あそこ、ラオウが気を抜くとシンに食われる危険性もあるけれど、そんなことはもちろんなく、拳王様は今宵も歌で世界を制していました。
 
 千秋楽のユリアはMay'nさんでした。二人のユリアはそれぞれの良さがあるけれど、最後のシーンは、二人で手をつないで去っていく時に、ケンシロウの腕にぽんっと手を添えるところが私は大好きです! 小さいところだけど大注目。
 ユリアと言えば、再演ではラオウとユリアの関係が深まったいたように感じます。トウとの歌や、「氷と炎」、病のこと、などが積み重なって、ラオウとユリアの間にはケンシロウとは全く違った形の絆があったと伝わってきました。ナイス改定!(ウサは諦めきれないけれど……)
 
 も一つ、すごく小さいけれど、今回「おお、そうか!」と思ったのが、(虎じゃなく)寅との闘いで、リュウケンがラオウに「虎はお前の前で、ただ恐怖した」と言うシーン。初演は「ただ」がなかったような記憶です。ここは「ただ」が効いていますね。
 
 カーテンコールも胸熱の素晴らしい東京千秋楽でした。
 28日の公演はマチソワ配信で楽しみます。ダブルキャストの見比べとカメラワークの比較も楽しい配信。でも「死兆星の下で」の上手、マミヤとレイを見守るトキのアップはありませんでした。(←とりあえず、そこだけ確認した人)
 
 
 今日の席は8列目サイドブロック。舞台からは一番近かったけれど、視界は一番残念でした。前(すぐ前ではなくて数列先の)の方の頭で、演者の膝から下が全く見えません。その方たちのせいではなく、劇場の作りがそうなっているのだと思います。
 コンサートや、演劇でも普通の作品だと、膝より下、舞台に横たわるシーンはそこまで多くないので、見えない部分はわずかなのかもしれません。でも、この作品は……ミスミも、トヨも、ジュウザもトキも、散り際が全く見えませんでした。特にトキは、ラオウとの別れのシーンがラオウしか見えないという悲しみ。
 私は複数回感激しているので脳内補完できたけれど、私が誘った初見の友人は……申し訳なくなりながら「配信見てね!」と薦めておきました。


#フィスト・オブ・ノーススター ~北斗の拳~

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