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『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』感想

朝のアラームはiPhoneが鳴らす。分からないことはGoogleに聞く。ファッションセンスを磨きたかったらInstagramを覗く。電子書籍はKindleで買う。

我々はGAFAの犬であり、それを受け入れた。重要なのは、自らが犬であると分かっていて受け入れているということだ。抗う素振りなんて見せやしない。そしてそれはとかく都合がいい。

この本はわりかし前から読みたいと思っていた。良くも悪くも世間での影響力が高いこの4つの企業を知るとっかかりとして申し分ない。実際、読んでみると4社への理解がだいぶ深まった(気がする)。

Google。4社の中でも好感度と信頼の厚さは非常に高い。自分の下半身の好みを素直に見せられるのは、ネ友とGoogle検索くらいだろう。その広がりの強さ故に「ググる」という単語が広まった。
検索汚染を挙げて「Googleはもう役に立たない」と主張する人をたまに見かける。しかしどうだろう、結局のところ皆使っているのだ。わからないことがある時、まずGoogleを使って、ダメだったら他を当たる。私は本を使って学ぶことも多いが、本を探すときに使うのはGoogleとAmazonの検索欄だ。

まあ、自分も4社で一番好きな会社を挙げるならおそらくここになる。Googleの好感度の高さってよくできてるんだよね、ほんと。それでいてAppleのような熱狂的な信者は生み出さない、透明性・公共性を醸し出す感じがまあ上手いのなんの。

印象に残っていることがある。Googleがゼンリンとの契約を解消して、Google Mapsの質が落ちたことがあった。皆がTwitterで口を揃えて「Google Mapsはゼンリンありきだったんだな」と語った。でも、その後どうなったかは誰も語らない。
あの後、Googleはユーザーから集めたビッグデータを活用し、ものすごい勢いでマップを修正していった。ゼンリンと契約していた頃のマップと、今のマップを比較することはできないが、果たして使いやすさにどれだけの違いがあるのか。結局、今も地図アプリはGoogle Mapsの一人勝ち状態という現実を見れば、それは語るまでもない。ゼンリンの助けを借りるまでもないことを、Googleは数年で証明した。そしてそれを、おそらくGoogleは知っていたのだ。

Appleはとりわけ熱狂的な信者が多い。それは日本だろうとアメリカだろうと関係ないらしいのが読んでいて分かる。興味深いのは、GAFAの中で百年後に生き残っている可能性が最も高いのはAppleだと指摘されていることだ。Appleは携帯やPCを「高級ブランド品」として売り捌くことにより、圧倒的な利益率の高さと「イケてる感」を生み出した。なぜスタバでMacBookを開く人間がやたら多いのか、これを読めば理解できる。彼らは人前でApple製品を使うことで、自分が「他と違う人」なのを示し、イケてる異性を釣ってとセックスをするのだ。いや、決して私がそう思ってるんじゃなくて、本にそう書いてあるんです。あながち間違っていないと思うけど。

Facebook。君が社名をMetaに変えたせいでGAFAをなんて呼んだらいいか分からなくなったじゃないか。
それはともかく、日本では特に40代~50代に人気のあるFacebookに、若者から圧倒的な支持を集めるInstagramなど、多くの人気SNSを抱えるMeta。この4社の中では一番私と関わりが薄いのだが、今後はその潮流も変わってきそうな予感がしている。メタバースに力を入れるという決意の表れから社名を変更したわけだが、私たちはまだ、メタバースが浸透した世界を知らない。『どうぶつの森』も一種のメタバースと言えるが、おそらくMetaが目指しているのはもっと深い、もう一つの世界として実生活に関わるメタバースなのだろう。結局のところ人は人なので大きく変化しないかもしれないが、今後の動向から目が離せないのも事実。

対照的に、Amazonには長らくお世話になりっぱなしだ。Kindleもプライム・ビデオも便利だし、すぐに届く無料配送は画期的だ。ただ、世界一のマーケットだけに様々な問題も孕んでいる。特に、マーケットプレイスや規約違反の商品が、真っ当な商品と同じように並んでいるせいで、買う側はある程度の知識がないと騙されやすくなった。今でもAmazonはよく使うが、敷居が高くなったように思う。Amazonで買うよりヨドバシ・ドット・コムで買った方がより安全で確実だと思うことも増えた(しかもヨドバシも送料無料)。eコマースにおけるAmazonの時代がいつまで続くかは不透明だ。とはいえ、明日明後日にいきなり苦境に立たされることはないだろう。稼ぎ柱はAWSだし。

この本を4社がいかにして成功を収めたか分析する本だと思っている人は多そうだ。それは間違っていないのだが、実はそれだけではない。4社の後に続く可能性のある企業、4社のような成功を収める方法を我々に教えてくれるビジネス書でもあり、4社が世界を支配する中で我々がどう生きるべきかを指南する自己啓発本としての側面も持つ。結局のところ、我々はどうすりゃいいのか? そこが一番知りたいのは間違いない。

資本主義の問題点として挙げられやすい格差の拡大の象徴とも言える4社。彼らはインターネットをメインの事業に据えているのもあり、企業規模の割に従業員はかなり少ない。それも結構マズい。中間層は減り、富める者と貧しい者の差はさらに開いていく。そして、その流れをさらに進めているのもこの4社なのである。

ただ、悲観的になりすぎる必要もないと思う。その格差をなくすきっかけもインターネットにありそうな気がしている。今の時代、インターネットで無料で提供される情報の多さには圧倒される。それこそ、有料級の質の高い教育ですら、無料で開放されることがある。もちろん、それを知っているか知らないかで差が開いてしまうわけだが、これからの時代、格差を開いたのがインターネットビジネスなら、それを是正する鍵もインターネットにありそうに思う。

結論としては、これからさらに加速していく時代を生きる上で、一度は読んでおいて損のない本だろう。続編も出ているようなので、そちらもおいおい読んでいきたい。

どうでもいいけど、この本の作者は過去の経歴もあってニューヨーク・タイムズをやたら持ち上げるので、そこは一つのバイアスとして見といた方が良いかもしれない。

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