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【J2第17節 vs京都 レビュー】新境地

大宮 3-1(2-1/1-0) 京都 得点者:奥抜、河面、フアンマ

勝った・・・!!それも快勝!!いや~めちゃくちゃ嬉しかったです。勝利というのはただでさえ気持ちいいのに、それに内容が伴うという最高のものでした。今シーズン暫定ベストゲームだったと言ってもいいと思います。
それとノブヒロの挨拶の時にコールとチャントが自然発生したのも嬉しかったです。じ~んときました。なんにせよ最高の週末でしたね。

両チームのスカッド

〈大宮〉
・完全非公開練習を経て望んだ試合。フォーメーションを3-4-2-1からアンカー制の3-5-2に変更。
・選手の変更点は3点。GKに塩田。DHに石川。CFに奥抜。
・加藤が初のメンバー入り。
・そして笠原がメンバー外。後日判明した事だが、全治2ヶ月の骨折をしてしまった。
・62分奥抜⇋大前、66分フアンマ⇋シモヴィッチ、79分吉永⇋小島。
・小島投入後は三門がWBの位置へ。

〈京都〉
・ここ6試合負け無しと好調の様子。前節は東京V相手に4-1と快勝。
・前節からのメンバー変更はなし。
・53分石櫃⇋庄司、66分黒木⇋闘莉王、86分宮吉⇋大野。
・闘莉王投入後は3-4-2-1に変更。


京都の狙い―守備編―

大宮の4-1-5で行うビルドアップの形に対して、京都は4-3-3をベースに可変的に4-4-2にしてくるという形をとってきました。

下図は大宮から見て右サイド寄りのポジションで菊地がボールを持った時の様子です。

まず1トップの一美がパスコースを限定してサイドへと追いやっていきます。
次にインサイド―ハーフ(以下IH)の選手がボールの方へと寄せていきます。
それに応じてアンカー(以下DH)とIHの選手がスライドをして、2ボランチの様な形をとります。(ここの部分を指して可変的に4-4-2と言いました)
ボールの取り所としては図の赤い丸①のところで取れれば上出来で、基本的には赤い丸②のところで取るといった感じでした。

京都の狙い―攻撃編―

京都のサッカーはポゼッション率でリーグ上位に入る程のポゼッションサッカーが特徴です。

下図は京都のビルドアップの様子です。

基本的には最終ラインの4人(黄色の実線で結んだ4人)+DHでビルドアップをしてきました。
たまにGKもビルドアップに参加してパスの出し手を増やしたりもしていました。
大宮の最終ラインへのプレスのかかりが弱まってしまうと、DF陣が自らドリブルで持ち運ぶこともありました。
DHの自由がきかない時には中盤の枚数が足りなくなってしまうので、IHが落ちてボールを触りにきました。
京都のWGはビルドアップがサイドに追いやられた時の逃げ道として、ボールを受けに落ちてくることが多々ありました。
CFの一美は中央で構えたりサイドに流れたりと流動的なポストプレーを試みていましたが、最終ラインでの数的優位は常に大宮が保っていたので、一美の勝率は低めでした。

大宮の狙い―守備編―

完全非公開で臨んだ大宮ですが、今までとは守備の形を大きく変更してきました。今までの守備はざっくり言うと、5-2-3の形でプレスをかけつつ、攻め込まれたら5-4-1のラインを形成して、中央でボールを保持させないようにしていました。奪われたら即刻奪回するというよりは、中盤で奪取するか攻撃を遅らせることを狙いとしていました。(詳しくは過去記事や他の方の記事を参照してください。)


それで今節の大宮はどうだったのかというところですが、まずは下図をご覧ください。

まずは5-3-2のラインを形成します。
5-3-2の形にすることで、中盤で数的同数を作り京都の攻撃の要であるDHへのチェックをしやすいようにしました。
京都DHをCFとDH(この場合はフアンマと奥抜と石川)で徹底的に仕事をさせないようにしていました。
高い位置をとってくる京都のIHにはHVが対応し、ドリブルで進入を試みる京都のSBにはIHが対応していました。
そしてそのプレッシングが上手くいき、大宮が中央をガッツリ締めることが出来ていたので、京都はボールを大宮のブロックの外で回す時間が多くなりました。
主な取り方としては京都のWGにいれたところをWBがかっ攫うといった感じでした。ちなみにですが、1点目のシーンはこの狙いがガッチリハマって産まれたゴールでした。

各人の運動量と判断(特に中盤)が肝となる形態でしたが、選手たちは各々のタスクをほぼ完璧にこなせていたと思います。本当に素晴らしかったです。

大宮の狙い―攻撃編―

では攻撃の方はどうだったかというと、狙いとしては大きく2つに分けられます。

①ハイプレスからのショートカウンター
②最終ラインで奪ったときは丁寧なビルドアップから攻撃

この2点を見ればお分かりになるでしょうが、攻撃で狙っていたことはいつもと変わりありません。今節が今までの試合と少し違っていたところは、これまでにやってきたことをベースに、よりショートカウンターの発動をしやすくしたという点です。

ここからは得点のシーンを例として、それぞれの攻撃の形について触れていきたいと思います。

1点目―①ハイプレスからのショートカウンター

まずはプレスからです。下図をご覧ください。

先程も紹介した通り、京都DHへのパスコースは2トップとアンカーで切りつつ、京都のボールをサイドの方へと誘導していきます。
HV(畑尾)が京都IH(重廣)を見つつ、大宮IH(茨田)が京都IH(重廣)へのパスコースを切ることで、京都のパスの出しどころをSB(黒木)のみにします。
こうなるとSB(黒木)はパスの出し所が同一レーン上の小屋松のみとなってしまいます。
ここまで来ると大宮としては7割方プレスを成功させたも同然で、WB(奥井)がWG(小屋松)に1vs1で剥がされなければ、高い確率でボール奪取することが出来ます。

こうして大宮は狙った形でのボール奪取に成功します。

次にショートカウンターです。下図をご覧ください。

奥井はボールを奪った流れからそのままボールをフアンマに渡します。
フアンマは中央の突破を図りますが、中を締めるのが速く、サイドへと流れます。
パスコースが無くなってしまったかのように思われましたが、茨田が重廣-黒木間のギャップに顔を出すことで、ハーフスペース付近でボールを持つ事に成功します。
それを受けて奥抜は福岡-本多間のギャップに顔を出すためのニアゾーンへのダイアゴナルラン(※1)を開始。
すかさず茨田はそこに正確なパスを通します。
最後は奥抜が冷静にゴール左隅へと流し込んで先制点を挙げます。難しい角度でしたがよく決めきったと思います。

かくして大宮は前半の早い時間のうちに先制しました。

茨田と奥抜のムービングが素晴らしかったのは言わずもがなですが、石川と三門の攻撃参加によりマークが分散したという事も忘れてはいけません。彼らが攻撃参加をしなければ京都守備陣は奥抜を徹底マークすればよかっただけになってしまいますからね。

(※1)ダイアゴナルラン・・・斜め前方に向かって走ること。マークの引き渡しが難しいので、相手ディフェンスラインのかく乱に有効。


2点目―②ビルドアップからの攻撃

YouTubeのハイライトには奥井がアーリークロスをあげるシーンからしか載っていませんが、その前のビルドアップにも着目して分析していきます。実際のシーンが気になる方はDAZNで確認してみてください。

それではビルドアップのシーンです。下図をご覧下さい。

基本フォーメーションは3-5-2で、守備時は5-3-2のラインを形成するなど、いつもとは少し違う形をとった大宮でしたが、ビルドアップの時は4-1-5といつもと変わらない形をとりました。
基本的には三門が左SBのような位置に入って最終ラインの数を4に合わせる事が多かったように思います。

まず前提条件としてですが、大宮から見て左サイドの方で展開があったので敵味方共に左サイドに寄っています。
左サイドの方にパスコースが無いので、河面は右にいた菊地へパス。
パスを受けた菊地はドリブルで持ち上がります。それに応じて大宮のラインも上がっていきます。
ある程度ドリブルで持ち上げていったタイミングで京都の中盤のスライドが大方完了したので(詳しくは前述の「京都の狙い―守備編―」をチェック!)、重廣がプレッシャーをかけに来ました。
そこで菊地は右サイドの畑尾へパス。
すかさず京都の左WGに入っていた仙頭が畑尾にプレスをかけに来ますが、畑尾は簡単に同一レーン上の奥井へパス。
奥井は後ろから黒木のプレスを受けていたため、DH脇(※2)(この場合はIH裏が正しいかも)に走り込んでいた茨田にダイレクトで落とします。
茨田は前を向いて攻撃を開始しようとしますが、重廣と仙頭の挟み撃ちに遭ったので、1度後ろの畑尾に戻します。

(次の図へ続く)

(続き)

畑尾にボールを戻した時、筆者は「また最初から構築のやり直しか。」と思っていました。
しかしそうではなく、畑尾は非常に気の利いた縦パスを茨田に通します。
これは得点に繋がる重要なポイントでした。このパスを通せたことで茨田が一時的とはいえフリーでボールを保持できた上に、大宮から見て右サイドに寄せていた京都の隙をついてもう1度右サイドから崩せる=左サイドに大きなスペースを空けることが出来たからです。
茨田は少ないタッチ数で奥抜へと繋ぎ、奥抜も少ないタッチ数で奥井へと繋ぎます。
奥井はこの狭い場所で重廣・仙頭・黒木の3人に囲まれますが、寄せが甘かったおかげでアーリークロスをあげる事が出来ました。
本当は大外から走り込んできた吉永に合わせてゴールというのが理想だったのでしょうが、クロスの精度が低く、吉永はフアンマに落とします。
フアンマは三門に落とし、三門は河面に落として、最後は河面がスーペルゴラッソを叩き込みました。

赤い丸が図上の吉永・三門・河面についているのがお分かり頂けるでしょうか。これは、相手がマークに付きにくい動きをしたという印です。
映像で見ると、より明確に殆どフリーの状態で3人がプレーしているのが確認出来ると思います。

(※2)DH脇[アンカー脇]・・・アンカー制の中盤を使うチームにおいて、アンカーの所が手薄になっているため守備時の弱点となりやすい。攻撃側としてはここを上手く利用するのが定石であり、守備側としてはここをしっかりケアするのが至上命題である。
余談だが、試合観戦中に「攻撃時にアンカー脇をもっと使いたいですね。」とかスラッと言えるとめっちゃカッコいい。ぜひ使っていこう。


ちょっとだけ考察

mexicoさんが上の記事内で仰っているように、高木大宮は"守破離"で言うところの"破"の部分にあるのだと思います。今節は高木監督が自分のチームをこうしたいのだという意思が汲み取れるような試合だったのではないでしょうか。
そして、その事を鑑みると大宮はこれからもう一歩先のステージに進んでいく様な気がします。
しかし、これから新たな大宮の武器となりうるであろう3センターや2トップ制にもまだまだ課題はあります。
失点のシーンなんかはその課題が顕著に表れたシーンでした。
2トップがどっちも下がってしまい、挙句ボールを奪われたり、IHが1vs1の勝負で剥がされた時のカバーリングのやり方等が挙げられます。
この夏はそこを徐々にオーガナイズしていきつつ、勝ち点を如何に積み上げていけるかの戦いになっていくのかなと思います。

最後に

多少の課題を残したとはいえ、大宮にとってかなり良い戦いが出来たのは間違いないと思います。
このような戦いを次節の岐阜戦でも出来て、新オレアルMCの松村 澪ちゃんに「大宮はこんなにもいいチームなんだぞ」と誇れるような試合にしたいところですね。という訳で次節も勝ちましょう!!!

最後の最後になりますが、同じ大宮vs京都の試合について京都サポ目線で書かれたものを貼っておきます。
同じ試合でも視点が変わると全然違う印象を受けます。とても良く纏まっていますので、是非ご一読ください。


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