「喫煙者の入社お断り」について考える

タバコ絡みの意見を表明しても、不毛なだけだと思うので、正直全然表明したくはないんだけれど。
流石に看過できない話題があるので少しだけ書かせてください。

看過できない記事っていうのは一昨日話題になっていたこの記事です。

誤解のないように言っておくと、会社として実質的にこういう意思決定をすること自体は自由だと思います。この会社は相当な議論して、バランスを取って制度を作っているなぁと思います。

問題視しているのは「「喫煙者だから採用しない」と表明し、それを推奨する行為そのもの」です。これは喫煙者に対する迫害であり、ヘイトスピーチなのでやめてほしい、と言いたいだけなのです。
喫煙行為を規制するのはどんどんやればいいと思いますが、「喫煙者」を制限するのは…それは差別でしょう。

先の記事では、下記の理由から喫煙者の不採用を決めた、と書かれていました。
・健康面のリスク
−本人及び周囲の人間への健康被害
・生産性の低下
−煙草休憩、吸っていない時間の生産性
−非喫煙者からの不満
・周囲への影響
−身だしなみ、特に身だしなみの面での悪影響

それぞれの問題については特に異論はないです。
でもこれらのことって煙草に限ったことですかね?
煙草についてこのような属性による制限を許すなら、他の嗜好品、思想、属性についても規制がまかり通ることになりませんか?

個々の問題点についての指摘

上に挙げられている個々の問題について、一個ずつ見ていきたいと思います

健康面のリスクについて

健康面では、肺がんのリスクが5倍になります。本人だけではなく受動喫煙者もリスクが高まります。

喫煙者の中には「健康被害なんてものはない!」と反論する人もいるみたいですが、さすがにそんなことは言いません。(そういうことを言うから規制されても仕方ないって思われるんだよ)

喫煙の他にある健康面のリスクで言えば、ストレス、飲酒、暴食あたりも問題かと思いますが、例えば、アルコールについて言えば、本人と周囲への健康リスクを考えて、大酒飲みで飲み会好きは不採用、はまかり通りますか?
ストレスについても、ストレス耐性の低い人は耐えられないからお断り、人に対して当たりが強い人も周囲に負荷を与えるからお断り、なんて表明しますか?
太っている人も、健康リスク高いのでお断り、なんてこともできてしまうことになりませんか?

「煙草は一段と被害が多いから規制されても仕方ないでしょ」という反論が来ると思いますし、まぁ確かに喫煙者からしても、だからといって完全に自由にするのはちょっと違うよなと思っています。
別に私は「俺が喫煙者で、自分が不利益を被るからそういう規制を止めろ!!」と言いたいわけではないのです。
周囲への被害の多寡で差別をしていいかどうかが決めることがまかり通ってしまうと、リスクを煽ってしまえばどんな属性でも規制できる、差別的なルールを作れる事になってしまいます。それは全く許容できないです。

生産性の低下について

先の記事では、生産性の低下について下記のように述べられています。

喫煙は生産性の観点だと次のような悪影響があります。
・ニコチン血中濃度低下によってイライラして集中力が下がること
・煙草休憩の時間が必要になること

また下記のように、他の人間の生産性まで下げているとも述べています。

特に煙草休憩は、非喫煙者からの不満になりやすいです。

喫煙所の撤去は別にどんどんやればいいです。設備を充実させるのも費用かかるし、会社にあっても貧弱な換気性能で喫煙者が心苦しい思いをするだけなので。
煙草休憩は不公平、というなら煙草休憩も禁じて、勤務時間中の喫煙行為自体を禁止すればいいでしょう。

さて、上記2点の規制が万全に達成されたとして、さらに入社段階で喫煙者を拒む必要がありますか?もしこの条件でも喫煙者に入社してほしくないって言うならそれは感情からくる差別意識があるとしか私には思えません…。

余談ですが、煙草休憩についてはもう一つ別の考え方もあると思っています。
そもそも人間の集中力などいくらも続くものではないのだから、非喫煙者も同じだけ休めばいいんですよ。コーヒーなり、仮眠なり。
そのような話はまかり通らない、とても休憩など取れる雰囲気ではないというなら、攻撃するべきは喫煙者ではなく会社、経営者、管理職じゃないかと思います。

周囲への悪影響について

周囲への悪影響については下記のように述べられていますね。

喫煙は次のような周囲への悪影響があります。
・受動喫煙で他人の健康を害すること
・洋服、口臭が臭く仲間やお客さんの気分を害すること
・タールで歯が黄ばんで清潔感がないこと
・マナーを守らない人が道に吸い殻を捨てること

歯が黄ばんでいることが悪い、臭いで気分が害される、という問題があることはまぁわかります。
繰り返しになりますが、それなら行為自体を制限すればいいのではないでしょうか。喫煙者そのものを排除する理由がわかりません。
仮に上記のような理由で、人を嗜好や属性で一括りにして明示的に断ってもいいのであればそれこそ「オタクは臭いから入社お断り」なんてことが可能になりますが。

お風呂に入ってなくて体臭が臭う人がいれば、厳しく注意を受けるはずです。清潔感は社会人の基本的なマナーのはずなのに、タバコの臭いだけがなぜか「仕方ないもの」としてまかり通ってる気がします。

確かにまかり通っている気がします。そう思うならまかり通らないように指導したり、規則を作って徹底すればいいんじゃないでしょうか。
入社お断り、という方法は不適切でしょう…。

じゃあどうしたらいいの?

既に何度も述べていますが、喫煙行為だけを制限するべきなんじゃないかと思います。例えば

・喫煙所の撤去
・勤務時間内の喫煙禁止
もし勤務時間内の喫煙を制限しないのであれば、
・ファブリーズと歯磨きを徹底させる
・守らない人間は厳しく指導する

というような規則を作って、徹底的に運用するようなイメージです。
難しいし面倒だとは思いますが、人の行動を制限するというのはそんなに簡単な話ではないので、そのコストは正しく支払う必要があると思います。

で、入社前の段階で、このような規制をしていることを明確に伝えておけば、納得できない人は自発的に辞退するでしょうし、その規制下でも働きたい、という方は喫煙者でも入社すると思います。

それでもどうしても喫煙者の存在が認められないなら

明示せずに、こっそりそういうルールで選考をすればいいと思います

まぁどこの会社も、いろいろな理由をつけて、学歴やら容姿やら、その他の属性色々、社内の基準でフィルタリングしているとは思いますので、喫煙者も同じようにフィルタリングしてください。

まぁ自分の会社が隠してこんな基準で選考やってたら、普通に告発しますけど…そのリスクを織り込んで、非公表でやってください。

最後に

最後に2つだけ。

そもそもの文句は国に言ってくれ

喫煙者は法律で認められる範囲内で、煙草を購入して、マナーや各種条例に従って定められた場所で煙草を吸っています。それがダメだ!というのであれば大元の国やら煙草メーカーに働きかければいいと思います。

そもそもこんなに問題になるんだったら、紙巻きたばこ自体規制すれば良くないですか?喫煙者だって、売ってなくて違法だったら流石に吸いませんよ。
懲罰的に値上げをしたり、貧弱な喫煙エリアを作ったりするよりよほどマシだと個人的には思います。そうなったら悲しいですけど仕方ない。

喫煙者だけ?従業員だけ?本当に?

この会社は、人を属性で判断する会社なんだな、と思ってしまいました。

提供しているサービスそのものは、プログラミングをやってる身としてはちょっと興味があったのですが、「顧客も喫煙者かどうかで判断されているのかな、なんか不利益を受けかねないな…」という印象が拭えません。一生使うことはないでしょう。実際のところはそんなことはないと思いますが。

また、そもそも喫煙者なので転職の選択肢にはならない会社でありますが、仮に禁煙したり、そもそも吸っていなかったとしても、「この会社は、他のレッテルや属性によって、社員にいろんな制限を掛ける可能性のある企業なんだな」と思って、受けようとは思わなかったでしょう。
「喫煙者だから入社お断り」というのは、上記のように判断されても仕方ないくらい、乱暴で不当な制限の掛け方だと思います。

・本を買います。読んだ本はnoteの記事になります。 ・ゴリゴリ文を書くために左右分離式キーボードを買います