マガジンのカバー画像

猫みたいに暮らしたいのだ

6
著 コジママサコ(演出)
運営しているクリエイター

記事一覧

5. REC/PLAY, プレイ

5. REC/PLAY, プレイ

途方にくれたわたしの心当たりは、そこへ布団を敷くことでした。

少し時を巻き戻して2013年8月半ば。
「おじいちゃんち」は取り壊しが始まっていましたが、家屋はそっくり残っていました。ただ、それは建物が残ってるというだけのことで、中に入ると、工具が積んであったり、土足の跡が付いていたり。そのふるまいの痕跡がここは「工事現場」だと言っていました。

8月16日、ワークショップを終えて餃子を食べ

もっとみる
4. そしてわたしは途方に暮れる

4. そしてわたしは途方に暮れる

わたしは、泣かなかった。

いけだは泣いたらしい。
取り壊されて、コンクリートの基礎だけになってしまった「おじいちゃんち」を見て、たまらなくなったと言っていた。

秋には、完全な更地になった。
やっぱり、わたしは泣かなかった。

平らにならされた赤い地面は、陽がまっすぐ差し込むせいで明るくて、きれいで、こないだ家が壊されたことなんて気にしてないみたいでした。それを見て、わたしもあっけらかんとし

もっとみる
3.家は捨てていい

3.家は捨てていい

思えば、わたしは心配性の子どもでした。
いろんなことを真剣に心配していましたが、中でも恐ろしかったのは衣食住のすべてを父一人の給料に頼っているということでした。

父に何かあったらどうするのか。

寝る前に想像しては、ケース毎にシュミレーションをして備えていました。
交通事故にあう、災害に巻き込まれて帰ってこれなくなる、実は他にも奥さんと子どもいた!などなど。一番怖かったのは、とくに理由はないけど

もっとみる
2.生活LOVE

2.生活LOVE

昨日、さんまを食べました。
もっと早く書きかったのですが、だめでした。
秋になってしまいました。
なんとか、夏の内に、と思っていたのですが。

前回の終わり、「家の外に人がいるって気づいたからです」って書きました。2015年の秋、APAF(アジア舞台芸術祭)とF/T(フェスティバルトーキョー)の期間に合わせて開催された「APAFアートキャンプ」に参加しました。東アジアを拠点に活動する、若手の演出家

もっとみる
1.猫みたいに暮らしたいのだ

1.猫みたいに暮らしたいのだ

夏になってしまいました。

この文章を、わたしは書いたり消したり、もう一ヶ月も悩んでいます。
お、今回はいけるぞ、と思っても終わり間際になると、これって嘘じゃない?書く意味なくない?となってしまうのです。
書かなきゃいけないことはわかっているのに、一行も進んでいないのです。
困ったことです。

タイトルをつけるとき、
おじいちゃんちの縁側で昼寝をしているちーちゃんの姿を思い出しました。
ちーちゃん

もっとみる
猫みたいに暮らしたいのだによせて

猫みたいに暮らしたいのだによせて

劇場以外の場所で演劇作品をつくって発表するようになって、何年か経ちます。わたしたちの求めてるものは、どうやら生活の中にあるらしいと気付いて、でもそれがどういうことなのか、説明できずにいました。自分たちでもよくわからないまま、小さな家を借りました。わからないなりになにか記録をつけようと思って、食べたご飯を写真に撮って公開することにしました。
”演劇じゃなくて、ご飯ばっかりつくってる”と言われたりもし

もっとみる