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タイム・トリッパー

幸せな日常の中で、ふとした瞬間、思考が過去へと遡る事がある。

あの日の忌まわしい記憶がアタマの中を駆け巡り、恐怖や絶望を追体験し、その時僕は今を生きていない。

時間は常に歩みを止めることなく、先へ先へと僕の体を運んでいる筈なのに、思考だけが体を抜け出し、僕は過去へとタイムトリップしている。

僕が僕であると自己認識する事ができているのは、本当にこの体がある故なのだろうか。

だとしたら、この体から離れていき、思考だけが過去へと逆行しているこの感覚はいったい何だって云うのだろう。

辛かったあの日々、いつも時間が早送りする事を願っていた。その時、僕は未来へとタイムトリップする事で恐怖から逃れる事ができた。そういえば、あの時だって今を生きていなかった。

いつか、時計の針と同じスピードで、この瞬間を生きる事ができる日は来るのだろうか。もしかしたらそれは、僕が僕では無くなっている時なのかもしれない。

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