蛇足(ゲイ小説)


いつものグループがある。人数は5人だ。

今日はみんなで新宿2丁目に飲みに来た。立ち飲みの店で、5人で一角を陣取り、出入りする客を値踏みする。
男は集団で群れたがるものだ。みんなと居れば上から目線で他の男に評価をつけられるくらい、傲慢になれる。
少し過激にも思えるような下世話な話をしながら、僕はグループの一人を目で追いかけた。

この5人の中で、一番男前なのが彼だ。
短髪で、眉は太く、程よく鍛えていて性格は男っぽい。喋り過ぎず、かといって無愛想じゃない。たまに可愛いところもみせてくる。大体のゲイは彼に会うと目が離せなくなってしまう、そんなタイプ。
もちろん、僕もその一人で、友だちに紹介されて彼に初めて会った時、一目でいいなと思った。そこから、このグループに入れてもらうことになり、5人で集まるようになってもう7年は経つだろう。

このグループに特別な思い入れがあるとかは、正直ない。
というか、彼に近付きたいから、このグループが存在している。これは口に出さなくても、他の4人もわかっていることだろう。その証拠に彼なしで個別に遊んだことは一度もない。グループLINEだって、彼が話し始めないとまったく進まない。

そんな僕らのグループは、彼のご機嫌取りのような様相を呈している。まるで王様と、その周辺に群がる家来だ。
こんな環境に居れば人は残酷なもので、彼からは当初の素朴さは消え失せ、どこか人を蔑むような目をするようになった。人の好意を当然のものとして捉えているからだろう。でも、仕方がない。男前にはみんな媚を売るから勘違いだってする。
そして、家来だって鬱憤が溜まる。彼がトイレで席を外した時、「あいつ、最近調子に乗ってるよな」なんてやり取りがされることもあった。それは、取り巻きを自覚している僕らの、せめてもの自尊心を満たすため。
彼が戻れば、またいつも通りにご機嫌取りをする。

5人で一緒に居たところで、僕たちはお互いのことをまったく気にかけていない。
これが僕の友だちだ。


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