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vol.215 個展作品 モデル:じきまる。さん

緋色展の展示作品モデルさん5人目はじきまる。さん。

じきまる。さんは自分が個展をやろうと考えた時に直ぐに展示したいモデルとして名前が思い浮かんだ三名のモデルさんの内の一人です。

じきまる。さんとの出会い

じきまる。さんとの出会いはポートレート撮影を始めた2020年の6月7日に名古屋の撮影会で撮影したことがきっかけです。

ファインダーを通してこちらを見るじきまる。さんの凄さを肌で感じ、モデルさんとしてこんなすごい人がいるんだという衝撃は今でも忘れられません。そんなじきまる。さんは撮影の移動中に気さくにお話ししてくださりその時の会話で来年(2021年)は就職で愛知に来られること、フィルムカメラのCONTAXariaが欲しいと言っていたことなどを今も覚えています。

名古屋で有名になったモデルさんが学生なら就職などで大阪や東京に行かれることも多く、じきまる。さんのように大阪から愛知県に来られる有名モデルさんは自分がポートレートを撮らせてもらった中でじきまる。さんが最初だったので愛知県に来られ、撮影を再開するまでがとても楽しみでした。

撮影会の立ち上げ

そして年が明け、4月になり。
梅雨が過ぎて夏に来てもじきまる。さんが撮影会に顔を出すことはありませんでした。仕事が忙しいのかなとか被写体は就職を機に辞めてしまったのかなと思い始めた頃にmer撮影会を立ち上げると発表されました。

意欲のある人は自分で道を作って進んでいくんだなと感じ、SNSを通してじきまる。さんを応援していましたし、2回か3回ほどmer撮影会に顔を出させていただきました。

個展への撮影依頼

じきまる。さんに声を掛けたのが昨年のるりか展の時になります。
個展をやること、そこにじきまる。さんの作品を展示したいことを伝えました。すぐにじきまる。さんから自分で良ければとおっしゃってくれた事で声をかけて良かったと安堵したことを覚えています。

そして23年の8月に個展をやると公開してから実際にお会いするカメラマンさんに一番言われたのが「どうやってじきまる。さんに依頼したのか?」ということです。

いや、普通に撮影依頼しただけなんですけどね。
「今度個展やろうと思ってまして、じきまる。さんに撮影を依頼したいのですが〜」的なことを言ったと思います。

何も特別な手段は使ってませんからねw

そんなじきまる。さんの作品イメージは早くからありました。
じきまる。さんが代表を務めているmer撮影会のtop画面にある海のイメージから作品タイトルをBelle mer(美しい海)にしようと決め、そこから最初の撮影の際に話が出ていたフィルムカメラ(CONTAX aria)が出てくる内容を書き上げたのが下記のキャプションになります。

「 Belle mer 」
Model:じきまる。さん

昔、貴女が欲しいと言っていた小さなフィルムカメラを買った。
駅前の家電量販店で色褪せたパッケージのフィルムを買い、カメラをカバンに詰め込んで季節外れの海に二人で出掛ける。

初めてのフィルムカメラ、慣れない手つきでフィルムを入れる。
「どうして今さらフィルムカメラなの?」
そう不思議がる貴女に僕はただ笑って返す。
(100年先まで残るフィルムで、今の君を撮りたかったんだ。)
言葉にするのが恥ずかしい想いをうまく言葉にできない僕だけど、そんな僕の代わりに36枚のフィルムに誰よりも綺麗な貴女が100年という時を超えていく夢を託した。

浜辺に立つ貴女にゆっくりとピントを合わせてシャッターを切る。
寄せては返す漣の音の中でカシャリと小気味良いシャッター音が耳に届く。
それは今の貴女と100年先の貴女を繋ぐ「時」の音、貴女を写す僕と100年先に貴女が写っているフィルムを見るであろう名前も顔も分からない誰かを繋ぐ「糸」の音。

たった36回のシャッター。
波打ち際で、砂地で、時に流木を手に無邪気にはしゃぐ貴女を撮る。
西の空に太陽が傾き始めた頃、フィルムカメラを持っている姿を撮ってほしいと言った貴女にカメラを手渡す。

僕は初めて買った小さなデジタルカメラを取り出し、ギュッと左目を瞑ってカメラを構える貴女に向かってシャッターを押す。
カシャリ。小さく耳に届く「時」の音。
「撮っちゃった」と無邪気に笑う貴女の声。
最後のフィルムに焼きついたのは貴女の記憶。僕を撮ったカメラマンは楽しそうに笑う。
撮られた僕は、液晶画面に映し出された無邪気な笑顔に文句も出ない。
またフィルムを買って貴女とどこかに出かけよう。そう考え始めた僕の側に来た貴女が静かに呟く。
「貴方も100年先まで一緒に連れてってあげる」

そう言って僕を置いて歩き始めた彼女。その後ろ姿にカメラを向ける。
ふと足を止めて振り向いた彼女は煌めく海のように美しかった。

展示作品

海岸での撮影は思った以上に周りの風景や人の写り込みが気になるので知り合いのカメラマンさんに良いロケーションを教えてもらい自分で一度ロケハンに行って決め、そしてじきまる。さんというとても素敵なモデルさんの魅力を最大限に引き出すためには組み写真では無いという直感に従い一枚展示で出すことにしました。

光の綺麗な海で、一番再撮影したかったモデルであるじきまる。さんを自分の世界観の中で撮影できたことは今年一番幸せな時間でした。

そしてここからは展示作品以外の写真になります。
どれも良い写真なので皆さんに見てもらいたいと言う気持ちです。

写真集に載せたらカメラの広告みたいと評判だった1枚


どうしてもじきまる。さんを再度撮影したかった理由ですが三年前の撮影の際にはじきまる。さんの魅力を撮りきれなかった自分がいました。あれだけ綺麗なモデルさんの魅力を引き出せなかった悔しい思いがあり、いつか必ずもう一度じきまる。さんを綺麗に、彼女の持つ透明感すら切り撮ることを一つの目標にしてきました。

今回、3年間で得た写真の技術、思いを全て投入して撮影に臨みました。
でも誤算もありました。
それは自分が写真の腕を上げるよりも、じきまる。さんがモデルとしてのじきまる。を磨き上げるスピードのほうが早かったと言うことです。

この撮影も正直、機材に助けられた気がしています。
さらに腕を磨き、写真の技術や光を読む眼、作品として昇華できる写真を自信を持って撮ったと言えるまでまたじきまる。さんと撮影がしたいと思います。

※ここから3枚はフィルムで撮影したデータになります。

フォトブックの表紙に選んだお気に入りの一枚。


それでも今回の撮影で三年前よりも綺麗になったじきまる。さんの透明感や魅力を伝えられる一枚が撮れたと自分では思います。個展で作品として自分が満足できる一枚を撮れたことはあの日からずっと写真を撮り続けてきて良かったと、何かが報われた気がしています。

この記事内の写真、記事は無断転用、転載は禁止です。
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では、また。


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