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大学の取組みアップデート

色々と思うところがある記事が立て続けに日経新聞に出ていて、これまでに大学についての記事は色々と書いてきたので、アップデートも兼ねて書きたいと思う。

私の興味を引き付けた発端となった記事はこの記事です。

書き出しはこうだ。
日本の大学で生まれる発明が収益につながっていない。特許1件あたりのライセンス収入は米国の22分の1にとどまる。企業から大学への投資も海外に比べて小規模だ。学術活動やその成果を経済的に適正に評価・活用できなければ人材が流出し、研究の土壌が痩せ細る悪循環も懸念される。
(五艘志織)

結局のところ金の話になるのだが、記事はこう続ける。

「大学の研究がビジネスで十分に活用されていない」。内閣府の担当者は危機感を募らせる。日米で比較可能な2017年度のデータによると、
日本で大学発の特許が収入につながったのは約6千件で計50億円ほど。
米国は2万件を超え、計3360億円に達する。大学の数の違いの影響を受けない1件あたりの額でみると、米国は日本の22倍にもなる。

これってかなーり前から言われていることで新しいトピックなどでは全くないものの、このデータが取られた3年前から変化はないように感じる。

そしてその大学の研究のビジネスでの活用の難しい点を浮き彫りにしたのがこ本庶氏VS小野薬品の戦いです。

本庶氏らが見いだしたような広く新薬の土台になりうる研究成果は「大化け」する可能性がある。今回の訴訟は相互不信の極度の高まりという事情もあるが、初期の契約を丁寧に結ばないと同様の問題は再び起きうる。

契約の部分で1%か40%かと言う問題もあるようで、これは今後明らかになるとしても、双方の言い分はおそらく平行線を辿るのだろうなと予想しています。こればかりは今後の経過を見守りたいと思います。

 ご存じかもしれませんが、製薬企業はかなりリスクをとって医薬品開発をしています。リスク(医薬品開発の中止)があるなかで莫大な資金を先行投資して、承認に漕ぎ付けたら、次の疾患の治験も進めながらも、医師に対してしっかりと医薬品の知識を伝えたり、販促活動したり、情報したりとさまざまな活動を通して、売上を最大化を目指し、その利益や借入で新しい会社を買収したり、製品を導入したり、他社と提携したりと物凄い数の人員のエネルギーをぶち込んでいます。何が言いたいかというと、医薬品そのものが良いものであっても、この地道な活動がなければ、大きく花開くことは無いと言うこと。
 そもそも稼がなくては次の医薬品開発もできませんし、日本だと放っておくと毎年「自然に」薬価が下げられますし、小野薬品のオプジーボなんて75%以上も超法規的に薬価を切り下げられ、そんなことをする国で医薬品を開発したり、販売する意欲を削いだと思います。。。

また、一方で大学が研究者に渡す運営交付金は10年前より4割も減少し、競争的資金(科研費とか)を使った研究にシフトしており研究費枯渇による基礎研究の多様性や裾野の広さが担保できない状況が現実として起きていて、これについて本庶氏の焦燥感も半端ないのは想像に硬くありません。

そして人口問題と同様で、一度低下した研究力と言うのはすぐには戻らないので、今できることをやるしか無いと言うのも現実です。

研究費に関して最近個人による研究への寄付がニュースとなりました。ファーストリテイリング(ユニクロ)の柳井が100億円を個人として寄付をし、研究を加速させる可能性も見えています。(このレベルを個人でできる人はそんなにいません。。。)先の記事にもあるようにクラウドファンディングによる草の根で研究を支援する取り組みもなされています。

ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は24日、個人として京都大学に100億円を寄付すると発表。京都大で本庶佑氏、山中伸弥氏と共に会見を行い、両氏への寄付を決めた理由などを説明した。


さて、以前に書いた記事では、
大学と企業の両方の課題について書いています。

<製薬企業>
・体力のない日本企業は、まったく新しい発明に賭けることに慎重
・外資系の製薬大手は日本の優れた研究成果を応用
   ⬇︎
日本企業には、有望な研究をいち早く見いだす目利き力が必要
<大学>
・発明を特許化し活用する技術移転の支援組織の実績にはばらつき
・工学系などに比べ、生命科学系は人材不足が目立つ
   ⬇︎
国内外の優れた技術移転ができる人材を迎え入れる試みも必要

今後はこうした互いの切磋琢磨というか、それぞれがしっかりと大人になるための階段をしっかりと登っていかないことには、解決しない難しさがあると私は思っています。

さて大学もいまや稼ぐための道を結構前から突き進んでいます。
この記事は約2年前に書いた記事ですが、もうそんな前からこうした議論はやはりあるんです。もちろんアメリカがかなり先行していいます。。。

これは止むに止まれぬ流れの中で出てきているような印象が残念ですが、
今までには研究室単位での運営が主だったわけですから、これを大学として対応していくというのは本当に大切なポイントです。
私の古い印象としては(理系の)、大学の研究室ごとが一つの城みたいになっていて、各城に大将がいるイメージ。

そして更なる一手として、各大学がVCを立ち上げています。

大阪大学や東北大学(東京大学、慶応義塾、京都大学)などが投資ファンドを新設する大学が相次ぐ。投資先はバイオなど研究成果の事業化を目指す研究開発型スタートアップだ。研究開発型は収入が限られる企業が多く、新型コロナウイルスで資金調達が難しくなり、経営環境が悪化している。阪大などは国から投資資金を得ているため、景気に左右されにくい。大学で生まれたイノベーションの芽を資金面で支援する。

まるで以下の国内VCの投資額が3割減っていることを埋めるかのような大学のVC設立。資金力がある・ないの差がくっきりとでますし、そもそもこの技が使えるのはほぼ理系学部・研究科を持つ大学に限られると思います

本当に日本の大学は岐路に立っているのかもしれないなぁと外から見て感じます。私には大学で研究をしている方々を知っていますが、大変そうです。

まあ、楽な仕事は無いとは言え、研究、教育(講義とか)。研究費獲得、学内業務、学生の確保などなど研究室を主宰するとこんなことを一人でやるなんてこともざらみたいです。
お互い頑張ろうな、としか言いようがないですが。

今後大学の研究成果がどのように企業で使われるのか、使われるとしたらどのような使用料が妥当なのかなどまだまだ手探りだと思います。大学と一緒にやるよりもベンチャーと会社同士としてやるほうがいいよねと言うそもそも論ももっと出て来て欲しい。そしてビジネスの話をするのであれば、やはり対等な立場での議論ができるといいですよね。

みんな必死なんですよ。企業も大学も。
これを両者が忘れないことが本当に大切なのだと思う。


#大学の研究 #COMEMOHUB #COMEMO #大学の取り組み #産学連携

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