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根を張って生きる

 橙の木の、それは接ぎ木苗であったのが、台木のほうが成長し、接がれたほうは滅んでしまう。

 そもそも接ぎ木苗というやつは、病害虫に強い台木の上に、病害虫には弱いが、食味が良かったり、実のよく成る木を接いだもので、するとその木は台木と接ぎ木の特性を併せ持つ、人間に都合の良いものとなり、重宝されるものである。

 人間で言えば、病弱な天才の首から上をちょん切って、アスリートの頑強な肉体に接いだというようなものか。

 しかし、これが上手く行くと思いきや、アスリートの細胞が首から上を再生しようと、どんどん増えて、結局、天才の頭は腐り落ち、元のアスリートに戻ってしまったという話である。

 それで、橙だったものは実の成らない、ただのトゲトゲの木となったのだが、接ぎ木と台木ということならば、地に根を張った台木の方が強いのだ。台木からの栄養を当てにして、接がれた苗は弱いのだ。

 それは人にも当てはまるだろう、浮世ごとばかり口にして、何の経験も伴わぬ、そんな人ばかりの世の中なれば、あたりは裸の王様だらけ、暴かれぬのを良いことにやりたい放題、いずれその大きなツケは、未来が払うことになるというのに。

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