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【エッセイ】 宇宙のいきもの

 土間の片隅に、ザトウムシを見つける。

 平べったい豆のような胴体に、その十倍以上はあろうかというほど、とても長く細い足。

 一体、この虫は何を思ってこんな形になったのか、何に便利な体なのか、足なのか、人の想像を超えた姿なれば、ワレワレは太陽系の外から来たのダと、そう言われたほうが納得できるものである。

 足が長過ぎ、細すぎるため、移動のときはぷるぷると、震える様子も奇妙なら、何をどうやって食べるのか、目は何処に付いているのか(あるいは目などという器官が備わっているのか)、よく見かける割には謎の多い同居人である。

 しかし、もし、この同居人が本当に宇宙から来たのなら、できればその宇宙へと──太陽系の外、人の到達できぬ地へと帰って欲しいと願うのは、何もその姿が薄気味悪いというだけでなく、恐らく地球に適合できないザトウムシ、いつもその足の二、三本を失って、ほかのすべても失ったなら、どうなってしまうのだろうという想像が、あまりに酷すぎるからなのだった。

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