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3行日記 #117 (なまじ、尨、みんゴル)

一月十日(水)、晴れ時々雨

朝、なまじいいやつやから……。紅茶の茶葉をまぜたホットケーキを食べながら妻が言った。勤め先の先輩に贈った結婚祝いのお返しにもらった茶葉だった。なまじの漢字を調べたら「憖」で犬が入っている。むくもかわいいよな、犬に毛が生えてるみたいで。引いてみるとこんな漢字だった。「尨」。たしかに、かわいい。犬をふくんだ漢字を集めてみるのはどうだろうか。

夕方、書店でレジをすませて帰ろうとすると、床に黒い正ちゃん帽が落ちていた。拾ってレジの男性に渡そうと腰を捻り、落とし物ですと口を開こうとした瞬間、あ、それわたしのです、とうしろからお爺ちゃんの声がする。ふいをつかれて一瞬混乱したが、すぐに状況をつかめた。ああ、良かったです。お爺ちゃんに帽子を渡した。

診察。左肩に筋肉注射を打った。採血で血管に針を刺すときとちがい、こちらのほうは打つほうも気楽にぷすりと刺すようにみえる。打たれるほうも、見ていなければわからないほど、まったく痛くない。

夜、昨日のスープの残り、すずきの刺し身、大根おろし、ずんだおはぎ。久しぶりに大根おろしをご飯に乗せて食べたら、めちゃめちゃうまかった。チャックの散歩、北へあがり、南へ戻ってきたとき、マンホールの蓋を開けて、内視鏡のようなカメラを垂らしていた。チャックが近くでビッと足に力をいれて踏ん張り動かない。工事現場の作業着を着た人たちが五、六人いたが、何かを待っているところなのか、手持ち無沙汰な感じだったので、チャックのほうに視線が集まった。動かへんね。ガハハと豪快な笑い声が聞こえる。作業着の人のなかにひとり、小柄なおばあちゃんが混じっていた。七十歳くらいに見えるが、夜中に工事現場で働いているのだろうか。帰宅。妻の実家はみなきょうもゴホゴホやっている。おばあちゃんは昨日よりも具合が悪いそうだ。お大事に。早くよくなりますように。

卓球の球くらいの小さな蜜柑を人差し指で弾いてコロコロ転がし、その先にある皮のコースターを目指す、新しいゲームを考えた。その名も「みんゴル」。

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