見出し画像

3行日記 #174(LiSA、藤棚、着信)

四月二十日(土)、晴れ
穀雨、葭始生、あしはじめてしょうず、ヨシが芽吹き始める。
穀雨、越燕始翔、つばめかけはじむ、燕が飛び始めた。

午前、電車で。横並びに座っている大学生くらいの女性二人の前に、杖をついたお婆ちゃんが立った。座ってください。二人が席を立つ。あら、ありがとう、でもすぐ降りるからいいのよ。二人は引き下がらない。座ってください。いいのよ、次で降りるから、そのまま座ってて。そんなやりとりが三往復くらい続いたが、女性たちは折れず最後には、そーお、ありがとう、ほんなら、座らせてもらおうかな、とお婆ちゃんが席についた。どこ行くの。お婆ちゃんが訊いた。東京です。東京、そしたら新幹線やね、東京のどこ。武道館です、ライブに行くんです。もう今は聞けるようになってええね、一泊するの? 日帰りです。日帰り!?まだ若いからええねー。誰のライブなの。リサ。私は知らない。誰だろうと思っていると、お婆ちゃんが口を開いた。いま有名やね。知ってんの!

昼、公園でおにぎりと卵焼き。藤棚が見頃で、紫色の房状の花が揺れていた。

夜、たけのことスナップえんどうの味噌マヨホイル焼き、ゆで鶏、パイン、苺、ミスド。チャックの散歩、北へ、ぐるっと回って、南へ。細い踏み切りをわたって、商店街より南に回って帰宅。実家の前でおやつをあげていると、ポケットのスマホが震えている。着信だ。取り出してみると、すでに通話中になって、誰かの声がきこえる。もしもし。久しぶり。どなたでしょうか。相手は、二十年ぶりくらいに話す人だった。

#3行日記

この記事が参加している募集

3行日記

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?