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さよならシャボン(29) only oneよりnumber one

Story : Espresso
Illustration : Yuki Kurosawa


『これは素晴らしいものだ!』

『これを知らない人は人生損してる!』

『これが最高で他は屑!』

『自分の好きなものが世界で一番尊く美しい至高の存在!』

成る程、そう考えること自体は全く悪いことではないだろうと思う。

自分の趣味に自信を持つことにデメリットはないだろう、然し、それは自分の中に留めておくべきだ。

『この素晴らしいものを知っている自分もまた素晴らしい人間』

自信を持つ程度ならばいいが、ここまで来ると少し話が変わってくる。

自分の趣味の高尚さを説きながら、他者の趣味は見下す、そんなことになっている可能性はないだろうか?

第一に、本人はただそれに触れているだけで自分自身には何の変化もない。

それは後ろ盾でもなんでもないが、それを勘違いしてしまう。

趣味の話ひとつとっても、人間は他者にマウントを取りたい生き物なのだ。

『number oneにならなくてもいいonly one』

であればいいなんてのは綺麗事。

今のご時世、誰もが『number one』になりたくて仕方がないのだ。

現代はあまりに人が見えすぎる。

自分より幸福に見える人が目に映る。

結果、他人より自分が優れていることで、悦に浸ろうとしてしまう。

然し、個人で見たときに自分が他人より優れているということを自分で認めるのは容易ではない。

自分で自分を褒めるには慣れがいる。

だからこそ、自分が羨む人物と自分を重ねたところで、敵わないのが分かっているから個人ではなく、その相手の中から『趣味』を摘み上げ、己の『高尚な趣味』と競わせる。

もはや自分の趣味がなんであろうと意味はなく、自分の価値を底上げするもの、として趣味を選んでいるのだ。

どうしてこれが好きなんだっけ?

もう一度自分に問い掛けてみて。


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•さよならシャボンチームからのお知らせ
 えすぷれっそさんが活動再開したということで、また不定期に連載を再開することとなりました。それに伴って、メインビジュアル等のリニューアルも行っております。
 次の目標としては、今までの作品をまとめた文庫本を作って自分たちだけで遊ぼうと思います。本年もよろしくお願いいたします。


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